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職業【錬金術師】過去を思い出す、ロングソードを握る

 レッカは思い出していた。それは第四階層ボスを倒した当日の夜だ。


「サリアさんとは、どういう仲なの?」

「え」


 カリナと目が合う。奇襲に備えて準備をしていたレッカはその問答に息をつまらせた。

 なぜそれを聞くのか、なぜ今まで聞いていなかったのか、頭の中が一瞬にしてぐちゃぐちゃになる。


「ほら、この前会った人……教えてくれない?」

「えっと、その……」


 彼女は自分に問いかけていた。

 それを伝えていいのか、伝えると認めたことにならないか、これからそれを背負っていけるのかと。


「言いたくないならいいよ。でも、僕にも教えてほしい」

「でも……」


 レッカは決断ができなかった。

 おそらくこの壁を超えることは容易だ。しかし引き返せない。

 この壁は超えなくちゃいけない。しかし乗り越えなくていいのであれば、その道を選びたい。


「……」


 無言の時間が続いた。

 自然と二人は準備をする手を止めていた。

 なにか言わなくてはならない。サリアに関することを伝えるか、否か。

 それは分かっているのに、肝心の答えが声に出せない。

 しかし、ほっといてほしいとも言えない。

 それを伝えてしまえば、また友達を失ってしまうかもしれない。


「わ、私……」


 恐怖が心を埋める。

 逃げ出したい。カリナに迷惑を掛けたくない。このまま時間が止まってほしい。

 増幅する不安を抑えるために息を吸う。


「レッカ」


 名前を呼ばれた。そう思い目線を上げると、カリナは小さく微笑んでいた。

 その笑みは、フラムの人を馬鹿にするような笑いでも、アントの自信に満ちたような笑顔ではなかった。

 その表情を見て、心臓が熱くなる。


「なにか、悩んでるんだよね」


 レッカは黙って頷いていた。

 そしてそれを理解したように話し始める。


「レッカは、平和主義者なんだと思う。喧嘩はしたくないし、でも問題をないがしろにしたくない」

「……」

「だから、アントに銃を奪われた時、僕を頼ってくれた」


 レッカは思い出す。

 クエストを受諾して、武器を作成したにもかかわらず、黙ってそれを奪われてしまった時のこと。

 今と同じであった。

 頭の中が真っ白になり、その直後に黒く塗りつぶされるような感覚。


「そういえば、僕に【鍛冶屋】とも言ってたよね。怖かったんだよね、友達を失う可能性を自分で作るのが」


 カリナの表情はまるで物語を語っているような、目を瞑って自然と声が漏れているような感じだ。

 レッカはそう思い、自然と心が凪いでいく感覚に浸った。


「悩んでるときは他人を頼ってもいいんだよ。それこそ僕みたいな、脳天気なやつにね」


 気づけば、レッカは口を開いていた。

 流れに任せて、体を委ねる。


「サリアは私と同じ中学の同級生」

「うん」

「私は中学で一人だった。それが怖くて、友達を作ろうと必死になって、クラスの女子のグループに話しかけるようになった」


 レッカは昨日起きた出来事のように話す。

 彼女の中で渦巻いていた糸を一本の線にするように口に出す。


「そしたら、その人達はサリアのこと、どうにも気に入らなかったみたいでね。サリアはなにもしてない、ただ性格が自分と合わないからって。そしたらそれがどんどん大きくなっていった。私は友達を失いたくなくて、そのままそのグループと一緒にいたんだ」

「そうなんだ」

「そしたらね、サリア、学校に来なくなって」


 レッカは口を塞いだ。

 上手く言葉をまとめきれない。話すべきことが何重にも重なって、言いたいことと、言わなくていいことがごっちゃになる。

 しかし、カリナは虚空を見つめて言い放つ。


「いじめだね」


 レッカは信じたくなかった。

 自分が、自分の居場所を作るためだけに一人の人格を否定してしまっていたことに。

 それを理解したくなくて数年間目をそらし続けた。しかし臭いものに蓋をしたところで、問題は解決していなかった。

 サリアは覚えていた、グループの中でも影の薄い自分の存在を。


「猫又! そんなもんなの? こっちから仕掛けちゃうよ!」


 目線の先には猫又。

 レッカは走り出す。

 ニーナの握るロングソードへと目線を合わせた。


「スキルは奪わせないよ!!」


 スタッフをロングソードへと叩きつけると、金属音が響く。

 複製を行いニーナの背後へ自分を召喚すると、主人格を変える。


「生産職なら分かるだろ。武器は簡単に壊れん、これはゲームだぞ」


 ニーナは余裕の表情で振り返ると、剣を振りかぶった。

 しかしレッカの狙いは武器を壊すことではない。振り下ろされた剣を手のひらで握る。


「っ!?」

「【複製】!」


 直後、空中に浮かんだのは複製されたロングソードだ。

『複製』は武器やアイテムの数を増やす代わりに、効果を減らすことが出来る。

 剣はレッカと『念動』を使ったカリナが拾う。


「ははは! 【複製】をデバフに使うとはな、賢いやつだ!!」


 レッカはにやりと笑うとロングソードを強く握る。

 なれない剣を扱うのは嫌だ、しかし彼女には信念が生まれ始めていた。


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