最強の敵 ヴィント王国戦! 1
「隊列を乱すなよ。多少スピードが遅くなろうが構わん!」
軍列の最後方、大将のリネアのすぐ前の位置からブリッツ軍隊長のヒジリの指示が飛ぶ。
「いやぁ、ヒジリ君のことだから、もっと滅茶苦茶な作戦出すかと思ったけど…案外まともな作戦だったね。」
ヒジリの少し前の位置を進むジョシュアが一人呟きながら、作戦会議を思い出していた。
※※※※
「今回の作戦は――正面突破で行く」
大将のリネアをはじめ、ダン、ジョシュア、セシル等部隊の主要メンバーで行われる作戦会議で、ヒジリが対ヴィント戦の作戦を宣言した。
「正面突破…つまり、今回実質作戦はなしってことかい?」
ジョシュアがヒジリの意見に真っ先に反応する。
正面突破――全軍で敵軍に進撃し、正面から真っ向勝負を挑む作戦。
聞こえは良いが、ジョシュアの言うとおり“実質作戦なしで各自突撃”と大差ない。
「奇策もいろいろと考えたが、ヴィントの戦い方を聞いた限りほとんど効果が見込めん」
代理戦争制度が施工されてから無敗を続ける最強大国・ヴィント王国。
彼らの戦い方はどの国を相手にしても一貫していた。
「『延頸挙踵』じゃな…」
今まで静かに話しを聞いていたダンが反応する。
『延頸挙踵』――優れた敵が来ることを心から願いながら、ただひたすらに自陣で待ち構えるという戦法である。
これは守備を固めているわけではなく、『強者たる者敵に合わせて戦い方を変えるべからず。ただ、悠然と余裕を持って敵を迎え撃つべし』というヴィント王国に伝わる国訓の下行なわれている作戦である。
「でも、相手が攻めてこないなら、こっちもじっと待ってれば少なくとも負けはないのでは?」
代理戦争に対して、普段あまり関心がないセシルが尤もな疑問を口にする。
「いえ、残念ながらそれは無意味です…。ヴィントが『延頸挙踵』という消極的な戦法をとっているのに勝ち続けているのは理由があるんです…」
セシルの疑問に対して、リネアが沈んだ表情で答える。
「実は今までにもセシルが言った戦法をとった国はいくつかあります。――しかし、結果は同じでした。」
「どういうことですか?」
「相手が攻めてこない場合、ヴィントは代理戦争の残り時間数分で攻めに転じるんです。」
まだ、納得していない様子のセシルにヒジリが説明を引き継ぐ、
「ヴィントは残り数分になると、決まって一人兵を出し、敵の大将を討ち取っている。そして、その一人っていうのが――光が丘瞬だ。」
ヴィントの作戦はシンプルなものである。
基本は全員敵が攻め込んでくるまで待機。そして、最後まで敵が攻め込んでこなければヴィルド最強と呼ばれる男を向かわせ、敵を討ち取る。
つまり、ヴィント王国を相手にする国は自ら攻め込まなくとも、最後には圧倒的な個の力で叩きつぶされるのだ。
「まぁ、最初はこっちもじっと待って、光が丘が攻め込んでくるタイミングでこっちも一気に攻勢に出て、スピード勝負に持っていこうかとも思ったんだがギャンブル性が強い上に勝算がかなり低い。」
「まぁ、光が丘君とヒジリ君が互角とはいえ、他がヴィントに負けてるからね。それに――」
ジョシュアがヒジリの説明に補足し、リネアに視線を移す。
ヒジリは言葉に出さなかったが、ヴィントと同じ作戦をとらない一番の理由がリネアであることはジョシュアも承知していた。
最後、攻勢に出るとすればブリッツ最強であるヒジリが行かないわけにはいかない。
だが、そうすると敵の光が丘からリネアを守る兵が手薄になる。
リネアを一緒に連れていくという策もないことはないが、光が丘以外にも強敵が何人かいる状況でリネアを守りながら戦うことはリスクが高い。
「戦力で負けてる時点で攻撃と守備に隊を分けるのは却下だ。どっちもギャンブルには変わりないが、今回は全員で正面から攻める!」
自分達より強い国に対して正面突破する…ヒジリとて、それがどれほど無謀なことで勝算の低いことかは自覚している。
しかし、今はこれに懸けるしかない。
「悪いが今回は本当に命懸けだ。お前らにも無理強いするつもりはない。」
ヒジリは覚悟に満ちた目で他のメンバーに訴える。
その目は例え自分一人でもリネアを守るという強い意志が籠っているように感じられた、
そして、そんなヒジリの目を見たメンバーの答えは一つだった。
※※※※
「やれやれ、あんな顔されて断れる奴なんていないよ。」
ジョシュアは呟きながら苦笑する。
「おい、ジョシュア!何か言ったか?」
「やれやれ…こういう時だけ無駄に地獄耳なんだから。」
お互い会話できる距離ではないものの、なぜか独り言を聞きとったヒジリにジョシュアが苦笑する。
そして、今度は隣にいる妹のセシルを促し、会話できる距離まで近づいていく。
「どうした?」
「いやいや、急に近くで君の顔が見たくなってね。」
「気持ち悪ぃよ…」
いつものように冗談を言い合うジョシュアとヒジリ。
「ワタシはできることならずっとヒジリ様の顔を見ていたいですわ!リネアさんなんかよりワタシの側で戦ってほしいくらいです!」
「そ、そうか…次回までに考えておこう…」
セシルはリネアを一睨みしながら、上目遣いでヒジリに迫る。
「…考えるんですね…」
ヒジリの返答にジト目で嫌味を漏らすリネア。
こちらもいつも通りの光景である。
「はははっ、相変わらず君達は面白いよ!」
「面白くねぇよ!」
そんな風にふざけていたジョシュアがだが、すぐに真面目な表情に変わる。
「ヒジリ君。今回の戦いで僕もセシルも恐らくかなり苦戦するはずだ。だけど、君は最後まで自分の戦いだけに専念してほしい。」
「どういうことだ?」
「要するに、どれだけ僕らが苦戦していても、絶対に助けになんて来ちゃいけないってことさ。」
「そんなこと――」
「ヒジリ様、ワタシからもお願いします!」
ジョシュアに続き、セシルまでも真剣な眼差しで頭を下げる。
「ワタシはあらゆる手を使って作戦を完遂します。」
「だが、それでも無理な場合は――」
「信じてください!ワタシ達は絶対に負けません!」
セシルの目には強い意志が籠っていた。
「ヒジリ君。分かってるとは思うけど、今回ばかりは君一人の力じゃ勝てない。――だから、何が起ころうと僕達仲間のことを信じて、最後まで任せてほしい。」
「…分かった…」
『自分達の命が危険だと思っても見殺しにしろ。』
二人の言いたいことを知った上で…二人の気迫のこもった目を前に、ヒジリは首を縦に振った。
「おい、敵陣が見えたぞ!」
そんな中、軍の先頭を進んでいた兵士の声が響き渡った。
「隊長!敵陣は予想通りの陣形をとっています!」
先程の兵士が大声でヒジリに状況報告を行う。
「いよいよか…」
ゴクリと唾を飲み込み、ヒジリが呟く。
「ヒジリさん…お願いですから、無理なさらないでくださいね…」
普段とは違うヒジリの様子を見ていたリネアが心配そうな表情で訴える。
「…善処するよ。」
そう笑顔で短く返すと、ヒジリは大きく息を吸い込み、大声で叫ぶ。
「全員作戦通りだ!散れっ!!」
「貴様らはこっちだ!行くぞ!!」
「「「おおっ!!」」」
ヒジリの号令続き、ダンが指示を出すと、兵士の多くはダンの後に続いていく。
「僕達も行こうか。――僕達の敵のところに。」
「そうね、ヒジリ様のご期待に応えなくちゃ!」
続いて、ジョシュアとセシルも別の場所に向かう。
ヴィント王国相手に正面突破を決めたブリッツだが、さすがに単純な正面突破は無意味に兵を減らすだけだと考え、却下していた。
ブリッツの作戦は…各個撃破である。
敵の主力は、ヒジリが光が丘瞬。
そして、ジョシュアとセシルの二人でハウアーを受け持つ。
残りの兵士達はダンとハーメルンの副官を務めるネビルの指揮の下、主力以外の敵を受け持つ。
「いやぁ、敵も思い切った作戦考えるな。」
「陛下、こんなもの作戦とは呼べません。ただ無闇に犠牲者を増やしているだけです。」
ヒジリ達の背後に二人の男が現れる。
「そっちから来てくれるとはありがてぇ。探す手間が省けたぜ。」
ヒジリがニヤリと笑って振り返る。
「たまたま歩いていたら貴様が現れただけだ。勘違いするな、霧崎ヒジリ。」
近づいてきた敵の一人、現在ヴィルド最強と呼ばれている男・光が丘瞬は言葉とは裏腹にまっすぐヒジリを睨みつけている。
「いやぁ、すまん。瞬がどうしても君のところに行くって聞かなくって。」
「陛下、さすがに怒りますよ。俺はただ、戦闘力的に俺がここへ来るべきだって言っただけですよ。」
「またまたぁ。『霧崎ヒジリを倒せるのは俺しかいない』なんて言ってたくせに。」
もう一人近づいてきた男、ヴィント王国国王・グレコ=ヴィントにいじられ徐々にイラついていく瞬。そして…
「おい、いい加減にしないとお前から殺すぞ!」
遂に自分の主に殺気を放つ。
「いやいや、怖い怖い…。そんなわけで瞬の奴かなり君のこと意識してるみたいだけど…せいぜい死なないように気をつけてね。」
グレコはそんな瞬の殺気を軽く流し、今度は不敵に笑ってヒジリを挑発する。
だが…
「悪いな。最後聞いてなかったわ。あんたらの漫才も聞き飽きてきたし、遠慮なく先手とらせてもらうぜ!」
グレコが良い終わる前に、既にヒジリは動き出していた。
一気に勝負を決めようと、敵大将グレコに渾身の右ストレートを繰り出すヒジリ。
しかし…
「…やるじゃねぇか…」
「これくらいウォーミングアップにもならない。」
咄嗟にグレコの前に回り込み、ヒジリの拳をガードする瞬。
ザッ
初撃を防がれたヒジリは冷静に距離をとる。
しかし…
「瞬間移動」
ザッ
「愚かな…そんなことしても無駄だ。」
「!?」
ヒジリの目の前から瞬の姿が消えると、次の瞬間には背後から声が聞こえた。
ドカッ
「ぐあっ!」
すぐさま振り返り、反応しようとするヒジリだが間に合うはずもなく、今度は瞬の右拳を顔面に喰らい吹き飛ばされる。
「ヒジリさん!」
リネアの悲鳴にも似た叫び声が響く。
すると…
「…心配すんな、リネア。今のは様子見だ。」
すぐにヒジリが立ちあがり、唾と一緒に血を吐き捨てる。
「強がりだな。認めろ、貴様は弱くなったんだ。」
そんなヒジリを見下すように瞬は言い放つ。
「思い出したよ…お前、風上瞬だろ…?」
瞬間、瞬の表情が微かに歪む。
「かざかみ…ですか?」
リネアがヒジリに聞き返す。
「ああ、元の世界でのこいつの名前だ。ったく…誰かと思ったら、日本軍にいた時にやたらと俺に絡んできた後輩の風上だったとはな…。」
ヒジリはニヤリと不敵に笑い、瞬を挑発する。
「その名は既に捨てた名だ。もうあの頃の俺じゃない。」
「どうだかな。」
「霧崎ヒジリ…確かに貴様はかつての世界で最強の男だった。だが、お前は弱くなった。――今の最強はこの俺、光が丘瞬だ!」
瞬はキッと鋭い目付きでヒジリを睨みつける。
「確かに、あの頃に比べたら少しは強くなったみたいだが…ちょっと調子に乗り過ぎなんじゃねぇの?」
「どうやら自覚できてないようだな…それなら俺が教えてやろう。お前がどれだけ弱くなっているかを!」
ザッ
そう言って瞬は地面を強く蹴った。
「へっ、挑発に乗りやすいところは変わってねぇな!」
正面から突っ込んでくる瞬に構えるヒジリ。
「瞬間移動」
ヒジリの数メートル手前で再び瞬の能力瞬間移動が発動する。
刹那、瞬はヒジリの背後に出現し、今度は蹴りを繰り出す。
しかし、ヒジリはニヤリと笑い、振り向きざまに呟く。
「重力」
「グッ…」
繰り出した蹴りの威力がそのまま重力に変換され、足が地面に叩きつけられる。
「運動」
バランスを崩して倒れている瞬に運動エネルギーが増強された拳が振り下ろされる。
「!瞬間移動!」
ドカンッ!
辺り一帯に何かが地面に追突したかのような轟音が鳴り響き、その周辺から激しい土煙が舞い上がった。
「よく躱したじゃねぇか。昔ならこの一撃で終了だったのに。」
「一体何年前の話しをしているんだ?相変わらず不便極まりない古臭い技しか使えない分際で。」
「…なんだと?」
「だってそうだろう?何か別のエネルギーがないと自分から攻撃することもできない欠陥能力なんだからな!だから、折角俺を仕留めるチャンスが来ても、材料となるエネルギーを探すのに時間がかかって結局今見たいに取り逃がす羽目になる。――そんな低レベルな能力でよく俺の相手が務まると思ったな。」
ヒジリの能力には明らかな欠点がある。
それは瞬の言うとおり、変換するべきエネルギーがなければ自ら攻撃することができない、という点である。
したがって、必然的にヒジリの攻撃は、敵の繰り出す攻撃を逆利用したカウンター攻撃が主な手段となる。
このことは言われるまでもなく、能力者本人であるヒジリも把握している。
(あいつ、能力の発動スピードがかなり速くなってやがる…。『電気』を使えば仕留められるだろうが…相手の手の内が完全に分からんうちに使うのはリスキー過ぎる…)
ある程度覚悟はしていたが、この世界にやってきてから始めての苦戦にヒジリの頬を汗が流れる。
決してヒジリの判断が遅いわけではない。
ヒジリはその多様な能力性故に選択の幅が広い。
それに対し、良くも悪くも瞬は瞬間移動しか選択肢がない。
そのため判断がスムーズでわずかながら能力の発動スピードでヒジリを上回っているのである。
「なるほど。よく俺のこと調べてくれてるじゃねぇか。――だけど、お前も最初の不意打ちしか俺に攻撃喰らわしてないぜ?」
瞬の挑発に対し、今度はヒジリが言い返す。
「フン、安い挑発だ。まぁ、でも敢えてその挑発に乗って俺の本気を見せてやる。」
「…何企んでやがる?」
「別に何も企んでない。ただ、貴様と1対1で戦っていられるのも時間の問題だからな。」
瞬はそう言って、周囲に目を向ける。
ヒジリも瞬の視線を追う。
すると…
「おい、陛下!こいつら全然相手にならねぇ!俺もそっち手伝いに行っていいか?」
紫色の短髪男はこちらと目が合うと、頭をガシガシ掻きながら、こちらに向かってつまらなさそうに問う。
「…も、申し訳…ありません、ヒジリ様…」
「…いやいや、さすがは大国家ヴィント王国のナンバー2だ…。ヒジリ君、申し訳ないけどちょっと巻きでお願いしても良いかな…?」
そして、紫の短髪男――ハウアーの前方にはボロボロで立っているのもやっとという様子のジョシュアとセシルが息を切らしながらヒジリに言葉を投げかける。
「セシル…ジョシュア…」
予定の半分程度の時間しか経っていないが、既に勝敗は決している。
このままではおそらく、持って後5分程度だろう。
しかし、二人の目にはまだ闘志が籠っており、死んでいない。
「ジョシュアさん…セシルちゃん…」
リネアも心配そうに二人に視線を送る。
その表情に、ここに来る直前、二人が自分に言ってきたことを思い出す。
『信じてください!ワタシ達は絶対に負けません!』
『だから、何が起ころうと僕達仲間のことを信じて、最後まで任せてほしい。』
「まぁ、約束だしな…。ジョシュア、セシル!絶対ぇに死ぬなよ!!」
ヒジリは二人に叫ぶ。
「…はい!もう少々お待ち下さい…」
「それでいいんだよ…」
二人はよろけながらも再び戦闘態勢に入る。
「おいおい、お前ら本当に死ぬぞ?何回やっても同じだっつーのに…」
ハウアーは呆れた表情で溜息を洩らす。
「貴様、それでもあいつらの仲間か?手負いの仲間を見捨てるとは…まさか力だけじゃなく精神力まで衰えているとはな…」
瞬も失望したと言わんばかりに溜息交じりに怪訝な表情を向ける。
「違ぇよ。見捨てるんじゃねぇ。信じて任せるんだよ!」
「何を都合にいいことを…結局は同じだろ。」
「まぁ、お前には分からんかもな。」
ヒジリはまっすぐ自分の敵・光が丘瞬だけを見据える。
「まぁ、でもさすがに時間に余裕はねぇみたいだ…。だから俺も本気でやってやるよ!」
そう言って、ヒジリは右手を自分の額にかざす。
「ひ、ヒジリさん!それは――」
その仕草を見て、リネアが必死に止めようとする。
「リネア、悪いな。もう後先考えてる場合じゃなくなっちまった…。あいつらのあんな姿見せられて、俺だけ何もしないわけにはいかねぇよ!――お前との約束…今回だけ破らせてもらうわ…」
ヒジリは自分が何をしようとしているのか分かった上で止めようとしているリネアに困ったような笑顔を向けて、先に謝罪する。
そして…呟く。
「電気」
同時に、バチバチっと音とともにヒジリ自身に大きな電流が生じる。
「電気…確か貴様の切り札だったな。そんな捨て身の技、時代遅れも甚だしい。」
「いくら憧れの先輩の必殺技見られたからって興奮するなよ。」
「誰が興奮なんて――」
「悪いな。せっかくだがお前にゆっくり見せてやれる時間はなさそうだ。――本気で活かせてもらうぞ。――運動!」
刹那、ヒジリの高速移動により十メートル程度あった二人の距離が一気に縮まる。
「高速移動がお前だけの専売特許だと思うなよ?」
死角に回り込んだヒジリから右ストレートが繰り出される。
「瞬間移動」
躱せないと感じるや否や瞬はすぐに瞬間移動で距離をとる。
しかし…
「運動――運動」
ヒジリはすぐに高速移動で再び距離を詰めると、自分の重力を運動エネルギーに変換した渾身の拳を振るった。
「ぐはっ!」
顔面に拳を叩きこまれた瞬は数十メートル血を吐きながら吹き飛ばされも、すぐに立ち上がる。
しかし、
「悪いが反撃の時間はなしだ。――運動!」
再び高速移動で瞬に迫ったヒジリは追い打ちをかけるように再び拳を振り下ろす。
「…仕方がない。俺も本気を出すか。――連続瞬間移動!」
瞬は瞬間移動でヒジリの攻撃を回避する。
「無駄だ!」
そしてやはりヒジリは当然のように高速移動→右ストレートのコンビネーションを繰り出す。
しかし、次の瞬間…
「!?」
「何が無駄なんだ?」
ヒジリの拳は空振りに終わり、背後には瞬の姿が…
そして、瞬の拳が繰り出される
ドカッ
「――重力」
「くっ!?」
繰り出された拳は命中する直前、ヒジリの能力により、重力エネルギーに変換された。
そして、瞬の拳は急激に角度を変え、吸い込まれるように地面に叩きこまれた。
「おいおい、敵の前で土下座なんて…もう降参か?」
地面を無理矢理殴らされ、膝をつき、頭を垂れるような格好となった瞬を見くださウヒジリ。
だが…
「一体誰に話しかけている?」
「!?――運動!!」
目の前で頭を垂れている瞬の声が後方から聞こえ、ヒジリは咄嗟に高速移動で距離をとった。
そして、目の前に映る光景に自らの目を疑った。
「風上が、二人…だと…?」




