助っ人加入!プランチェ兄妹 2
「それでは、僕達はこれからプランチェ王国に一時帰国しようと思います。」
ブリッツ王国の代理戦争部隊に助っ人として加入することとなったアレンとクリスティーナは自国への一時帰国を申し出た。
「は?いきなり訪ねてきたと思ったら今度は帰るだと?さすがに自由奔放すぎるんじゃねぇの?」
ヒジリがふくれっ面で不機嫌そうに言う。
「馬鹿者!これはアレン殿の我儘などではない!」
「そうだよ。助っ人とはいえ、彼らはブリッツ王国の兵士として代理戦争に参戦するんだ。一応自分の国に筋を通さないと。そこら辺の一般兵ならまだしも彼らは次期国王候補なんだからね。」
ダンとジョシュアが不機嫌そうな顔で皮肉を言うヒジリを宥める。
(まぁ、あくまでこいつらはプランチェ王国の人間。しかも国の重鎮だからな。自分の国の国王陛下に報告しておくのは当然か)
ヒジリは黙ったままだが、渋々納得する。
「それじゃあ、リネアちゃん、また来るよ」
アレンは妹のクリスティーナの手を引き、歩きだす。
すると、
「ま、待ってください!」
幼さの残る声に呼び止められ、二人は歩みを止め、振り返る。
「どうしたんだい?」
「お二人は私の呼びかけに応じて我がブリッツ王国にお力をお貸しくださるのです。国王陛下である私もプランチェ王国国王陛下にご挨拶に伺う必要があると思うのです。」
「いやいや、そんなに木を使わなくても大丈夫だよ。元々僕達が勝手に圧しかけてきたんだし。」
「そうだよ。何でイチイチお前が挨拶何ぞする必要があるんだよ。」
リネアの申し出に、アレンはやんわりと断り、ヒジリははっきりと反対する。
「しかし、国の中心、しかも次期国王候補のお二人をお借りするわけですから、私が何もしないというわけにもいきません。」
「しかし陛下、道中は危険が多くあります。ただでさえ前回のようなことがあったのに……」
「そうです!誘拐されて、またヒジリ様にご迷惑をお掛けになるおつもり?」
珍しく反対されても引き下がらないリネアにダンとセシルも加わり制止を図る。
そんな中、一人の男がニヤリと口の端を釣り上げて、この言い争いに加勢する。
「まぁまぁ。リネアちゃんの言うことも尤もだし、誰かが護衛で付いていけ問題ないんじゃない?できれば強い人で…。」
ジョシュアはチラチラとわざとらしくヒジリに視線を向けながらリネアの意見を肯定する。
「わ、私もヒジリさんが護衛で付いてきて下されば助かるんですが……」
顔を赤らめ、もじもじしながらチラチラと上目遣いで遠慮気味に提案するリネア。
どうやらリネアもジョシュアの意見には肯定的のようだ。
「うんうん!確かにヒジリ君なら安心だね。いいんじゃない?」
「ほ、本当ですか!?」
「うん。ついでに暇だし、僕も一緒に行こうかな。セシルも行くだろ?」
「当然ですわ!!」
「おい、だからお前ら勝手に決めるなよ……」
ジョシュアはニヤニヤしながらちゃっかり自分達の同行も取り付けている。
そして、やはりヒジリに決定権はなく、アレンにクリスティーナ、リネア、ヒジリ、ジョシュアの5人のプランチェ王国行きが決定された。
****
「おい、プランチェってのはまだ着かねぇのか?」
馬にだらしなく乗りながら、ヒジリが愚痴をこぼす。
「すみません、ブリッツ王国とプランチェ王国は隣国とはいえ、決して近いというわけではありませんから。」
「まだ先は遠い。」
出発してから既に半日以上経ち、疲れきっているヒジリ対し、まだまだピンピンしているプランチェ兄妹の二人は笑顔で応対する。
「ヒジリさん、お水をどうぞ。」
「ヒジリ様、こちらのお水の方がおいしいですわよ?」
「おー、サンキュ」
すぐ隣のリネアが気を利かせて水を差し出す。
それに負けじとセシルが自分の水を差しだし割って入り、睨みを利かせる。
しかし、残念ながらすでに疲れてだらけているヒジリに、二人の仲裁をしている気力はないようだ。
「やれやれ、だらしないなぁ。プランチェ王国まではまだ半日以上かかるよ。」
「マジかよ…うおっ!?」
ジョシュアの一言に溜息をつくヒジリが前を歩くアレンにぶつかりそうになり、慌てて止まる。
「おいおい、急に止まるなよ。」
「すみません、ですが――」
「――敵か?」
馬を止め、脇道の茂みを警戒するアレン。
ヒジリ達も一息遅れて周囲の気配に気付く。
「分かりません。しかし、どうやら後を付けられているようです。」
「ずっと茂みから視線を感じる。」
声をひそめ、周囲を警戒する二人。
しばらく周囲を見渡すが、敵が姿を見せることはない。
「仕方なねぇ――おい、そこの茂みにいる奴ら!!さっさと出てこいよ!!」
しびれを切らせたヒジリが茂みに向かって大声で叫ぶ。
すると…
「氷の槍」
ビュンビュン
ヒジリの呼び掛けに応じて出てきたのは人ではなく、氷の塊であった。
「この攻撃をかわすとはさすがはブリッツ王国の英雄。」
そして、続いて茂みから数人の男達が現れた。
「やれやれ、素直に降伏する気はなさそうだな。」
リネアを抱えて敵の攻撃を回避したヒジリが臨戦態勢に入る。
しかし、
「これくらいの相手、我々だけで充分ですよ。」
「楽勝。」
ヒジリ達の前にアレンとクリスティーナが立ち、敵を挑発する。
「いや、でも…」
「いいじゃないか。彼らも早いところ君の信頼を得たいんだよ。それに彼ら二人の強さは君も知ってるだろ?」
「彼らはこのワタシをマグレとはいえ、一度倒しているくらいですからね。」
「まぁ、確かにな。」
ヒジリも先日行なった入隊テストでのプランチェ兄妹の戦いぶりを思い出し、この場は彼らに任せることにした。
「それではお任せを。――行くぞ、クリス!」
「うん。」
「舐めやがって!やっちまえ!!」
「「「氷の槍」」」
ヒジリ達のやり取りを挑発と受け取り、憤った敵は再び鋭利にとがった無数の氷の塊を放ってくる。
しかし、
「薔薇の壁」
アモスが呟くと彼の前に巨大で無数な薔薇が出現し、氷の槍を全て防ぐ。
そして、今度はクリスティーナが無感情に呟く。
「千本の薔薇」
「ぐあぁ!」
「ギャーッ!」
「――がっ!!」
何もない空間から無数の鋭いとげを持つ薔薇のムチが出現し、次々に敵を切り刻む。
「もう大丈夫です。」
アレンとクリスティーナがヒジリ達の方を振り返る。
辺りには無惨な姿の敵の死体が転がっている。
戦闘開始からわずか1分足らず。
敵は格下とはいえ、恐らくC+級、B級と思われる魔導士が10人程度。
「さすがにヒジリ君の屈折した性格でも、二度も見れば彼らの強さを認めざるを得ないんじゃない?」
ジョシュアは隣にいたヒジリに冗談交じりの口調で問いかける。
「こいつらが強いってことは昨日の時点で分かってるよ。」
ヒジリは昨日行なわれたプランチェ兄妹VSフリーク兄妹のテストマッチを思い出しながら溜息交じりに答える。
昨日のテストマッチ…ヒジリはジョシュア達の勝利を予想していた。
しかし…
「あそこまで本気にさせられたのは君依頼だよ。しかもセシルの奴も本気でやってたみたいだし。」
植物魔法と炎魔法。
どちらもA級魔導士で相性はジョシュア達が圧倒的に有利。
そんな中、序盤は魔法属性の相性がそのまま出てジョシュア・セシル組が有利に進める。
しかし、少しずつ劣勢を覆していくアモス・クリスティーナ組。
セシルの補助魔法によって強化されたジョシュアの攻撃をなんとか防ぐアモス。
そして、隙を見て先程のような植物魔法による攻撃を変幻自在に操るクリスティーナ。
ジョシュア達は二人のコンビネーションと高度な植物魔法にかなり苦戦を強いられた。
そして、最終的にはコンビネーションの隙をつかれて、最初にセシルが倒れたことによって均衡が崩れ、プランチェ兄妹の勝利に終わった。
「まぁ、彼らが味方にいれば君も大分楽になるんじゃない?」
「確かに、味方ならかなり心強いな。」
そんなことを話しながら馬を進めていると、大きな建物が見えてきた。
「あっ!あれはプランチェ城です!!」
リネアがブリッツ城よりも大きな城を指さす。
「やっと着いたか…早くゆっくりしてぇよ…」
完全に疲れきっているヒジリ。最早気力が感じられない。
城の前まで辿り着き、それぞれ馬から降りる。
「はははっ。とりあえず、軽く挨拶を済ませたらゆっくり食事でもしましょう。」
「おお!いいね!!」
「それにしても、国王ってのは君達のお父さんだろ?一体どんな人なんだい?」
食事と聞いてテンションを上げるヒジリとは対象的に、ジョシュアが珍しく真面目な質問をぶつける。
「そうですね…父はとにかく国民を大切にされる人です。国民を守るためなら自分の命すら顧みないような人です。」
「へぇ、なんだか聖人みたいな人だね。」
「はい。『誰かを守れるように強くなれ』というのが父の口癖です。」
「それに他国であっても近隣国に助けを求められた際は無償で助けを出したりと、かなり器の大きな方です。」
「そうか、リネアは会ったことがあるんだったな。」
「はい!かなり優しいお方です。私もアダムズ陛下のような国王を目指しています。」
そんなやり取りをしながら国王陛下がいるという部屋まで歩く。
そして、
「さぁ、着いたよ。」
大きな扉の前でアレンが振り返る。
「で、でかいな…」
「何度来ても慣れないですね…」
ブリッツ城の王室の扉の2倍はある扉を見て、呆気にとられるヒジリとリネア。
「まぁまぁ、そんなに気を張らなくても大丈夫ですよ。挨拶もすぐに終わるでしょうし。」
「そうだよ。ハーメルン城の王室もこれくらいだし、そんなに気にする必要ないよ。」
「「…そうですか…」」
リネア達に気を遣うアレンとフォローをするふりをしてニヤリと悲しい現実を突きつけるジョシュア。
そして、二人で敗北感を噛みしめるリネアとヒジリ…
「早く入る。」
しかし、そんなこと等お構いなく、クリスティーナは先に部屋の中に入っていき、
他のメンバーも遅れてそれに続く。
「陛下、只今帰還致しました。」
「ただいま。」
「やあ、お帰り。そちらの方々はブリッツ王国の方々だね。よくおいで下さった――リネアちゃんも久しぶりだね。」
部屋に入りアレン達が挨拶すると、玉座に腰掛けた初老の男が優しそうな笑顔で話しかけてきた、
事前にアモス達が話していた通りの情に熱く、優しそうな印象だ。
「お久しぶりです、アダムズ陛下。本日は突然のご訪問申し訳ございません。」
「いやいや、遠いところこちらこそ申し訳ない。それにしてもしばらく会わない間にすっかり綺麗になった。」
「お、おじ様…」
とても友好的なやり取りで、微笑ましさまで感じる程である。
しかし、その直後、予想外の言葉がアダムズの口から放たれた。
「久しぶりに会えて本当に良かった。――しかし、だからこそ残念だ。リネアちゃん、いや、リネア陛下。気は進まんが今から非常に残念な話しをせねばならん。」
「アダムズおじ様…?」
先程までの優しい笑顔から一転、真面目な表情に変わるアダムズ。
「我がプランチェ王国はブリッツ王国に宣戦布告する!」
「「「「!?」」」」
アダムズの口から放たれた衝撃の一言に目を丸くし、再度彼の顔を見返す一同。
しかし、その表情からは冗談など微塵も感じられず、ただただ真剣さだけが伝わってきた。
9月21日少し修正加えました。




