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四哀悲話  作者: 青田早苗
第四話、イェストラブの皇帝の話
20/20

後書きのようなもの

 完結させた後、まず最初に時分で思った感想…うーん、冗長…でした。 

 月下之詩の番外編として書き始めたお話ですが、気がついたら番外編の方がメインみたいなことになってしまいました。

 様々な生い立ちや経験に伴って、人の内面や他人との関係性がどうかわるか、それがその人にどう影響を与えたのか。歴史上名前が残っている人もそうでない人もどんな人生を歩んだのか、どんなドラマがあったのか、そんなお話を書きたいと思い、四哀悲話を書き始めました。

 もっとさらっと書けるようになりたいなあ。。


 陳腐な表現かもしれませんが、全話に共通しているのは愛です。母と子の愛が一話目。祖国愛が二話目。家族でない人への情愛あるいは信愛が三話目。そして兄弟愛あるいは家族愛が四話目です。


「母になった女の話」では、自己中心的で人の気持ちを考えられなかった桂花が、毅、貴蘭と出会うことで少しずつ成長していきます。

 貴蘭を母の代わりの存在として認識していた桂花は、貴蘭にしてもらったことを安に対して、まるで幼い女の子が人形相手に世話をするように行います。しかし、自己中心的な気質は残ったまま娘を産み、事実としては母親になるのですが、本質的な意味での『母親』にはなれていないのではと苦悩します。

 と、いう描写を言葉でしか書けなかったのが非常に残念です。もっと桂花の言動や仕草などから言葉で書かずとも分かるような表現をしたかったのですが、力量不足をひしひしと感じたお話です。

 些細な裏話ですが、桂花グイフォアの「gui」と貴蘭グイランの「gui」は同じ音です。桂花にとって心理的な母親である貴蘭と音を似せてみました。


「落ち延びた王子の話」は、周囲の人々が自分の為に命を落としていく様を目の当たりにして、亡国の王子であるデュムバが国の再興を成さねばならないと執着します。

 ヴラナの力を借りてイェストラブさえ倒せば国が再興できると考える浅はかな部分や、案外すんなりと泰獄の暮らしに馴染んでいる部分はデュムバの精神が幼く、あるいは柔軟である根拠として書きましたが、今一つですね。

 そして、息子であるパトゥラが当然自分の考えと同じだと思っているのも、彼の尊大さを示しています。また、国土を敵軍に踏み躙られた時の屈辱や、国の再興に対する並々ならぬ執着が表しきれなかったことが今二つでしょうか。


「義を尽くした裏切り者の話」四哀悲話を書き始めるきっかけともなったアイディアです。

 月下之詩の本編では僅かに出てくるだけの安ですが、過去の回想の中では、桂花が死んで気落ちしている毅を励まし、かと思えばイェストラブの兵士として再び毅の前に現れる。イェストラブの間諜として役目を全うするのであれば、芙蓉の目が見えることを伝える筈なのにそれをしない。そして、毅の元に現れて杯を交わして友情を確かめ合った後には、毅を貶めるような言動をする。傍から見ているだけでは非常に不可解な動きをします。

 元々は芙蓉の役の名前が「桂花」でした。金木犀は天上界の神木で、月が原産地と考えられていたため、月神の地を治める一族の末裔であるパトゥラの相手は「桂花」にしようと思っていました。

 しかし、どうにも金木犀の花のイメージと芙蓉の役柄のイメージが合わず、それに最終的にパトゥラと芙蓉は結ばれることがないため、それを暗喩するためにも違う名前としました。ちなみに、芙蓉は水芙蓉ではなく木芙蓉です。

 私の中で、金木犀の花は非常に明るくそして華やかなイメージのある花です。よく通る道に金木犀があり、秋晴れの頃に通ると花も葉もきらきらとしているためです。そのイメージもあり、桂花の役柄はもともと天真爛漫で自由闊達な性格と決めていたので、「桂花」をこちらにつけました。

 ですので三話目では常に、金木犀≒桂花として扱います。

 安は、心の機微に疎く桂花への恋心すら気がつくのに相当な時間がかかります。金木犀の枝を手にしようとして必死になる安が、いつもいつも掴み損ね、毅に先を越されます。この少しずつ溜まった嫉妬が安の不可解な一貫性の無い行動の原点となります。最終的に安は、芙蓉達を裏切るような行動を取りますが、実際は芙蓉や毅に対して情愛があったからこそ、怨みが募ったのでしょう。

 このお話はもうちょっと簡潔にまとめられたらなあとは思いつつも、ストーリーは結構気に入っている一話です。


「イェストラブの皇帝の話」このお話では、サブタイトルが示唆すると思われる人物が二人登場し、グルビナムに焦点をあてつつもソルヤムもまた話の軸として現れます。

 グルビナムとソルヤムは例えるならトランプのカードが一枚では立たないけど、二枚あれば立つ、そんな関係です。

 また、グルビナムはソルヤムに対して劣等感を抱きながらも、憧れを覚えて成長します。憧れだけではなく、後に息子が支えになるまでの間、グルビナムにとってソルヤムは唯一と言っていい家族であり家庭でありました。なので、ソルヤムが軍に入って世界を広げて行く時、そこで仲良くなった部下達に対して微かな嫉妬を向けています。しかし、彼らは部下でありそれ以上の関係にはなりません。なので、グルビナムは突然現れ、ソルヤムの心を全てさらった芙蓉に対して嫉妬を覚えています。

 最後に芙蓉の簪をソルヤムの墓に入れなかったのも、心の底に嫉妬の心があったからでしょう。少しずつ変化して行く二人の関係性を書くために冗長になってしまったのが、残念な点です。

 そして、四哀の四人目がグルビナムなのかソルヤムかは読んだ方の判断に委ねたいと考えております。グルビナムに比べればソルヤムは悲惨と呼べる死に方で若くして命を落としています。しかし、片割れとも言えるソルヤムを手にかけて天寿を全うしたグルビナムが、外野が思う程に幸せだったとは言い切れないでしょう。

 

 四哀悲話の一番の悲劇は、どの人々も誰かの為を思って行動をするのですが、自分を思ってくれている人との心が通じていない部分です。

 今回は、常にそれを意識していました。

 桂花は自分が母になったことを喜んで死にますが、そこに居た毅と安はその心情を理解していません。

 デュムバは最後まで国の再興だけを考え、残された息子が自分を糾弾してもなお、何故自分が責められているのかが分からずに死にます。

 安は、桂花を失い、桂花のためにと様々な事をしますが、最後は桂花の大事な人達を傷つけます。

 そして、グルビナムは愛する兄の暴挙に心を痛め、兄の思惑に気がつかずに自らの手で殺しまいます。

 唯一想いが通じ合っているのは芙蓉とパトゥラという点では、悲劇的な死を迎えていても、二人は幸せなのかもしれません。

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