表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
長命エルフの小さなカフェ〜今日はなに飲む?〜  作者: 藤 野乃


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

11/16

白龍③


「でも、あの辺にあるのは間違いないわよ」


 私はアーイシャ妃のものだという部屋を指差した。


「うーむ、急を要する事案だから宮までは入れるが……妃の部屋に王以外の男は入れぬ」


「侍女頭を呼んで。私だけ行って回収してくるわ」


「それしかないな……」


 ややあって、無表情な侍女頭とともにアーイシャ妃の部屋に入室。


「卵でございますか」


 侍女頭は首を傾げた。

 担当の侍女は数日前から食あたりで寝込んでいるという。


「つまり今いる侍女は……」


「臨時のものですが、身元はしっかりしております」


 うーん、なんだか作為的なものを感じるけれど。

 私の仕事は卵の回収と返還。

 宮廷の陰謀にはノータッチね。


「…………」


「あるじゃないの」


 大きな卵は確かにあった。

 宝石を貼り付けられ、豪華絢爛なオブジェとして。


 (宝石は本物だわ。相当お金がかかってる仕上がり)


 アーイシャ妃は既に就寝したということで、不在。

 だが宿直の侍女が困惑して卵の受け渡しを拒んだ。


「姫様が大変お気に召しておりまして。起きて無くなったと知ったら──」


「王様からもっと素晴らしいものが来ると言っていいわよ。これは手違いで、次のはもっとキラキラしてるって言いなさいな」


 シグマはそれくらいの手間ならやるだろう。

 国が滅ぶよりはマシだもの。


「あの、こちらは大臣からの贈り物でして」


 侍女頭がピラリと書類を振って侍女に言った。


「宰相、後見人の命令書です。従わなければ罰がありますよ」


「ですが──」


 侍女頭が手を叩くとドアの前にいた女性衛兵が侍女を連れ去って行った。

 侍女頭は私を見て、どうぞと言うように頷いた。


「持っていっていいのね?」


「どうぞ。私はこのまま宿直を引き継ぎます。姫様には代替が来ることをお伝えしておきますから」


「そう? じゃあ遠慮なく」


 私は時空庫に卵を入れてみた。

 有精卵は……タイミング次第では生物とみなされて入れられないのだけれど。


 (良かった、まだ生まれたばかりの卵だった)


 中である程度育って形が出来てきていたら入れられなかったので、ラッキーだったわ。

 まあ、入らなければ浮かせて運搬するからいいんだけれどね。

 私はそのままシグマの元へと向かった。


「回収してきたわ」


「やっぱりあったのか……」


「詳しいことは侍女頭から聞いて。大臣からの贈り物らしいから」


「ああ……どの大臣か聞かないとだな。おそらくアーイシャ妃の生家の政敵だろうから何人か該当しそうだ」


「犯人探しはあなたの仕事。私は貼り付けられた宝石を卵を壊さないよう剥がさなきゃ。剥がした宝石はもらっちゃっていい?」


「持って行ってくれ」


「アーイシャ妃には同じようなものを作って渡してあげればいいと思う」


「早急に手配しよう」


「一応現物を見ておいて」


 卵を出すと、シグマは絶句した。


「全部宝石か……こりゃ金かかってそうだな。代替はこっちでやる。そっちは卵の現状復帰と返却頼むわ」


「任せて。全部終わったらまた連絡する」


 一旦カフェに戻ってどうするか考えよう。

 隙間なく宝石を貼り付けられた卵はさっさと綺麗にして親に返さないと。

 意図を調べるのは私の仕事じゃないし。


「さて」


 どこで作業するかが問題だ。

 いっそこのまま見せて持っていかせる?


 (必要なのは地熱であって、光ではないわけだし……でもここまでぎっしり宝石だと呼吸に影響する可能性もあるわね……)


 とりあえず親龍に現物を見せるべきか。


 私はどの国からも距離のある砂漠の西端まで転移し、卵を置いて親龍を待つことにした。

 夜空を見上げると、白龍のペアがゆっくりとこちらに向かってくるのが見える。

 仄かに輝く龍体は、夜空に浮かぶ月のように幻想的だった。

 卵から離れ、様子を窺っていると砂埃一つ立てずに龍が降りてきた。


 二頭でウロウロと卵の周囲を歩き回っている。

 そりゃ龍も困惑するでしょうね。

 そのままでいいなら、掴んで飛び去るはずなのだけれど。

 二時間待ったが、持ち帰る様子はない。

 が、離れる気もないようだ

 高位の龍は人語を発さないが、理解は出来る。

 私はゆっくり歩み寄り、伏せた龍に声をかけた。

 

「怖がらなくていいのよ。卵の邪魔になってるものは外してあげるから、そこで数日待っていて」


 白龍は動かない。

 伏したまま、静かにしている。


「大丈夫よ、ちゃんと助けるから」


 私はそう言って、作業しやすいカフェへと転移した。

 

 


 

 

 


 

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ