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田村仁の、男の見せ所⑥

来栖さんが小道に入るのに続いて、バス男も吸い込まれるようにそこに入った。


「まずいよ。大通りならまだ人の目もあるし、極端な行動には出れなかっただろうけど、あんな裏道で襲われたら助けも呼べない」


寄木さんが心配そうに空を見上げる。

鳩のホー氏が小道の上空をゆっくりと東に向かって飛んている。


「寄木さん。我々も行きましょう。何かあったときに我々だけでも寄木さんを守らないと。いくら来栖さんでも、成人男性に一人では立ち向かえません!」


信号を渡って小走りで小道に入った。


背の高い建物が乱立している間を這うように伸びる小道を、上空のホー氏を頼りに右に左に進んだ。


そして、建物の前で立ち尽くしているバス男が目に止まった。


急いで電柱の影に身を隠した。


「あの建物に来栖さんがいるのでしょうか?もしや、出てきたところを襲うつもりじゃ!」


「ど、どうしよう。本当に危ないかも…」


鳩のホー氏が上空からゆっくりと降りてきて、寄木氏の肩に止まった。


「うん。うん。え、やっぱり…」


ホー氏と寄木が顔を近づけて会話している。


「来栖さん、やっぱりあの建物に入ったって。待ち伏せしてるってことだよね…。け、警察呼んだ方がいいかな?」


正直に言って、小生は怖かった。何か怖いことでも起こってしまうのではないかと、そう思っていたのだ。だがそれと同時に、漠然とした違和感を覚えていたのだ。


何かあの男の雰囲気が違う気がした。


脳を切り替えて、あの男のオーラを改めて確認してみた。


淡い、全てを優しく包み込むようなピンク色のオーラと、深く胸が締め付けられるような寂しさの青いオーラが、弱々しく男の背中から出ている。

先ほどの怒りと憎しみが混ざり合った赤と黒のオーラは何処にもなかった。


様子が明らかにおかしい。何かが変わったのが分かった。


「ねぇ、田村くん。田村くん!」


「は、はいっ!」


「警察に連絡した方がいいかな?私、で、電話するね」


寄木さんの手元にはスマートフォンが握られている。画面に110番号が表示されているのが見えた。後は受話器のマークを押すだけだ。


「寄木さん。少しだけ、警察に電話するのは待ってもらえませんか」


寄木さんと鳩のホー氏が小生を見た。


「あの男、何かをしでかすような人なのか、確かめたいんです」


あの男に気が付かれないように、ゆっくりと壁に沿って近づいてみる。目の前の建物に気を取られて、全く気がつく様子がない。


何を見ているのか気になって、小生もその建物を見た。


なるほど。来栖さんらしいな、と思った。


男にバレないように背後にゆっくりと近づく。


オーラはとても便利なものだ。オーラはその人物を物語るもの。何を考えているのか、何を見ているのか、共有することさえ、稀に出来る。


目の前の男は完全に油断している。今ならもしや…。


男の背後に近づき、右の鼻の穴を閉じて、左の鼻の穴から男のオーラを吸った。


視界が段々と白んでいく。



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