田村人の、男の見せ所⑤
道路を挟んだ反対側に、例の男が来栖さんを見ながらこそこそと歩いている。
幸いなことにも、我々が来栖さんとかなり距離をとって歩いているため、こちらには全く気がついていないようだ。
「寄木さん、ほ、ほほ、本当にあの男が、います!尾行しております。ど、どうしましょう?警察に通報した方がいいでしょうか?」
「…そうね。で、でも何かが起こったわけでもないし。いや、万が一何かあったら…。もう少しだけ、様子を見てみよっか。いつでも警察に電話できるようにスマホは準備しとく」
後方でこれだけあたふたしているのにも気がつかないようで、来栖さんはただ真っ直ぐに前を向いて軽快に歩みを進めている。
来栖さんがロータリーに向かって歩いているのでバスに乗って帰るのかと思ったが、そのままロータリーを通り過ぎていく。
「来栖さん、一体何処に行くんでしょうか?」
「そうだよね。この前私を助けてくれたとき同じバスに乗ってたわけだし、帰るにはバスを使うはずだよね…。何か用事でもあるのかな?」
来栖さんは大通りをそのまま進み、それに呼応するようにバス男も人混みに紛れながらも、しっかりと来栖さんを目で追いながら歩いている。我々には寄木氏の鳩の友人、ホー氏がついているので二人とかなり距離を取って歩くことができる。
小生はふと気になって遠目に見えるバス男を見ながら、目に神経を集中させる。バス男のオーラを確認してみると、そのオーラがゆっくりと浮かび上がった。
男の背中から、燃え上がるような真っ赤な炎が立ち、それと混ざり合うように真っ黒な煙が全身を包み込んでいる。経験上、黒いオーラはかなり良くない。恨みとか、憎しみとか、怨念とか、執念とか。人の黒い感情は、体の内側から黒い煙になって溢れ出てくる。
あの男は来栖さんに対して黒い感情を抱いているのは間違いない。何か、大ごとになる前にしなければ…。
来栖さんが大通りから突然小道に入った。




