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悪役令嬢は和食をご所望です  作者: 朝日奈 侑
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厨房の使用権がほしいです

「え?シトラス様が?」


 私の呟きはフィオに聞こえてしまったらしい。私は慌てて答えようとしてうっかり「料理が好きだから」と言いそうになったが、すんでのところで止まった。貴族は自分で料理なんてしないし、ましてや私は七歳女子。料理したことないはずなのに好きとかおかしいよね。危ない危ない。でもこれから和食にチャレンジするなら厨房の使用や料理人の協力なしでは難しいから、『シトラス()厨房(ここ)で料理するのは普通』みたいな流れを作っておきたい。これはチャンスかも。


 「私、食べることが大好きなの!食べるってとても大事なことだし、美味しいものだと幸せでしょ?自分の手で作れるってすごく素晴らしいことなんじゃないかと思って。それにほら、万が一の時にも料理できるって役に立つだろうし」


 おそらく大丈夫だけど、もし破滅回避に失敗して国外追放になっても料理屋で雇ってもらえるとかな!仕事あるなしは死活問題だから!


 「わかりました」


 私の熱弁にフィオが圧倒されていると、いつの間にかフィオの後ろにジル料理長が立っていた。


 「ネクター様がお許しくださったら、空いてる時間帯にシトラス様も厨房を使ってくださってかまいません。もちろん、慣れるまで刃物や火を使う際は私が傍にいるようにしますが」


 ジル料理長からの思わぬ言葉に私は目を輝かせた。

 なんと!それは願ったり叶ったりだわ!


 「ありがとうございます!」

 「それでシトラス様に一つお話しておきたいことが・・・」


 ジル料理長がフィオを見る。

 ん?どうしてフィオ?

 意味がわからずきょとんとしている私の疑問にジル料理長はすぐ答えを教えてくれた。


 「厨房の空いている時間、時々フィオを指導しているんです。シトラス様さえよろしければ、フィオと時間を合わせてお使いになるのはいかがでしょう?」


 なるほど。料理人見習いとしてすごくがんばっているんだな。と、いうことは私が隣でうろちょろしてたら邪魔かしら?でも日にちが被らないようにするとジル料理長の休む日がなくなってしまうのでは?かと言ってせっかく厨房を使わせてもらえるチャンスを諦めたくないし・・・でもこれは私のワガママでしかないからなぁ。

 そんなことをぐるぐる考えているとフィオがまっすぐ私を見て言った。


 「シトラス様がお気になさるようでしたら、俺が厨房の空き時間使用をやめます」


 フィオの発言に私はギョッとした。

 えぇー!?やだやだそれは申し訳ないからやめて!そういう意味で悩んで黙ってたわけじゃないから!!


 「フィオがやめる必要ないわ!ジル料理長のおっしゃる通り、お互い一人でも厨房に立てるようになるまで時間を合わせて一緒に見ていただいた方が良いと思います。ジル料理長やフィオの邪魔にならないよう気をつけますから、ぜひ同じ時間厨房を使わせてほしいです」


 私もジル料理長に色々教えてほしいし、それにたとえそれぞれ違う作業をしていても誰かと一緒に料理をするのは楽しいはずだ。


 「わかりました。ではシトラス様のご使用になりたい日の前日お知らせください。俺はその時間に合わせます」


 私の言葉に、フィオはそう申し出てくれた。


 「いいの?」

 「はい。シトラス様は他にもお稽古事などあって、俺よりお忙しいでしょうから」


 気を遣われてしまった。なんてデキた子なんだろう。ちょっとしっかりしすぎてやしないかしら。でもこの若さでもう料理人見習いとして働いてるなら実年齢より大人びていても不思議じゃないか。


 なにはともあれ私は無事に厨房の使用権を手に入れられそうで安心した。

 え?お父様達の許可がまだって?大丈夫、きっとこのくらいのワガママなら許してくださるわ。今までのワガママに比べると可愛いものだもの。前世を思い出す前のシトラスのワガママなんて求婚相手に突き付けられたかぐや姫の要求並みに無理難題だったんだから。・・・本当に黒歴史。


 「ありがとう。じゃあ厨房を使いたい日の前日に知らせをいれるわ。これからよろしくね」

 「こちらこそよろしくお願いします」


 フィオが丁寧にお辞儀をしてくれる。その姿に私はあることを思いつき、口にした。


 「あと、一つ提案なんだけど、敬語やめて気軽に話さない?」


 私の提案にフィオが難色を示す。


 「そのようなことは・・・」

 「だって私達そんなに歳変わらなさそうだし、しかもお互いジル料理長に教わる身でしょう?ということはフィオは私の兄弟子みたいなものじゃない?それにずっと敬語だとお互い気を張って疲れると思うの」


 お願い、と私は両手を合わせて頼み込んだ。

 フィオはどうしたものかとジル料理長を見上げ、フィオの視線を受け止めたジル料理長は唇の下に人差し指を添えて少し考えると口を開いた。


 「わかりました。私からネクター様とミラベル様、そして使用人皆にお話しておきますから、フィオはシトラス様のご意向通りにしてください」

 「はい」


 フィオはジル料理長の言葉に頷き、それからもう一度私にも頷いて了承を示してくれた。


 「ありがとうフィオ。改めてよろしくね」

 「よろしく、シトラス様」

 「あ、名前も呼び捨てでお願い」

 「・・・よろしく、シトラス」


 あ、なんか呆れられた気がする。

 たしかに使用人にタメ語や呼び捨てを要求する令嬢って規格外か。しかも私自身はベル以外の使用人に敬語使っているのに。でもせっかく歳が近いんだから、料理教室のお友達ってことで気軽に接したい。

 なので私はフィオの呆れた表情には気づかなかったことにした。

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