いよいよ出発です
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どうぞよろしくお願い致します!
肌に照りつく太陽の光がじわじわと夏を実感させる今日。いよいよ異文化研修出発です!いやぁ感無量ですよ感無量!転生してこの世界にも和食の国があるとわかってから約9年!やっとヒスイ国へ行けます!しかもヒスイ国だけじゃなくてエメラルド国やサファイア国にまで行けるなんて・・・夢のようだ。
寮生もいるので各自荷物を持って一度学園の門前で集合することとなった。前世で言うところの修学旅行みたいな感じで基本的には制服で行動するらしい。よかった、服装考えるのが楽で。
「全員揃ったようだな。ここからは馬車で移動する」
期末試験成績1位であるエリクとライセが引率者という形になるようで、エリクはライセとともに作った日程表などを元に出発前に色々と説明をしてくれる。
学生とは言え王族が2人もいるため、護衛騎士も同行するようだ。馬車は何の紋章もなくシンプルだが頑丈なものが7台。あまり綺麗過ぎると盗賊などに狙われやすいということであえて少し汚してあるらしい。芸が細かい。1台目と7台目に護衛騎士3人ずつと万が一の備えとして必要な道具や食料、2〜6台目に生徒2人ずつと護衛騎士2人ずつが乗るらしい。結構な大所帯。
誰がどの馬車に乗るのかはくじ引きで決まった。
2台目にライセとアミル、3台目にフィオとクロエ、4台目にリムとリィラ、5台目にエリクとステュアート、6台目にケントと私だ。
ちらりとクロエを見やるとフィオを見て顔を真っ赤にしている。クロエの視線に気づいたフィオがクロエに頭を下げた。
「道中よろしくお願い致します」
「こ、こ、こちらこそよろしくお願い致します」
クロエの緊張をよそにフィオはあいかわらず淡々としている。
「シトラス、またあとで」
「え?あ、そうね、またあとで」
フィオは私に軽く挨拶して自分が割り当てられた馬車に乗り込んだ。
「シトラス、俺達はこっちですよ」
「はい、ありがとうございます」
ケントに促され、私も慌てて乗り込んだ。
「シトラスはフィオくんとずいぶん親そうですね」
出発してから少しして、ケントからふとそんな質問を受けた。
「え?まぁ、そうですね。幼い頃から我が家の料理人としてがんばってくれていて・・・気心が知れた幼馴染みです」
「そうなんですね。ところでシトラスはエリクと婚約する予定なのですか?」
「んふぇ?」
急な話題転換な上に内容が突拍子もなくてうっかり変な声で対応してしまった。
「そんな、滅相もないですわ!エリク様には他にもっとふさわしい方がいらっしゃいますもの絶対!!」
令嬢らしからずいささか力みすぎてしまったかもしれないが、否定すべきところはきっちり否定しておかないと。あらぬ誤解をされてはエリクも困るだろう。私も困る。私に王妃という大役が務まるわけがない。
「シトラスはエリクのことを嫌いなんですか?」
「んほぁ!?」
なんってこと言うんだケント!まさかそっちの方向にあらぬ誤解をされるとは思わなんだ。
「嫌いなんてとんでもないですわ!」
むしろ大好きでございますことよ!
「エリク様は聡明で志の高い素晴らしい方でとても尊敬しておりますし、私のような者にも優しく接してくださるのは本当に光栄だと思っております」
推すしかないよね。
「・・・そうですね、俺から見てもエリクはゆくゆく偉大な王になると思います。周囲も皆優秀で・・・そういえば、ステュアートやライセ、リムのことはどうなんですか?」
「どう?とは?」
「この流れでそう返しますか?好きかどうかってことですよ。ちなみにすっとぼけられても嫌なので先手を打ちますが、恋愛的な意味で、です」
「んにゃも?!」
なんだなんだなんでそんなことばかり聞いてくるんだケント!
他に話題がなくて困ってるのかな?それともダイアモンド国の未来の重鎮達について探りを入れたいとか?それなら私はそんな重要事項を把握できるほど大それた地位にいないからお役に立てないよ!
「ステュアート様もライセ様もお義兄様もエリク様と同様尊敬するところはたくさんありますし、親しくしてくださってありがたいと常々思っております・・・けど、そんな、恋愛的な、なんて、私ごときが考えるだけでもおこがましいですわ」
私の答えにケントは興味深いと言わんばかりの微笑みを浮かべた。
「・・・なるほど、皆苦戦しているわけですね」
ちょうどその時馬車が小石を踏んだのか軽く音を立てて揺れたため、ケントの言葉が明確に耳に届かなかった。
「?すみません、今ちょっと何をおっしゃったのか聞きとれなくて・・・」
「いえ、大したことは言っていませんよ。それにしても、そうですか。それなら俺がシトラスに婚約を申し出ても大丈夫ということですね」
「・・・ひゃい?」
話の展開から盛大な置いてきぼりをくらっている私をよそにケントは実にイイ笑顔で続ける。
「あれ?そんな変なこと言いましたか?国同士の結びつきを強固にするために他国に嫁ぐことも珍しくないし、公爵家令嬢となれば他国の王家に嫁ぐのもおかしくない」
いや、おかしくないけどおかしいよ!
「それはそうですけど・・・っ、でも、あの、私なんかケント様に不釣り合いですわ!才色兼備な方は他にもごまんと・・・」
「才色兼備の女性が他にもごまんといるから何だと言うんですか?俺はシトラスがいいという話ですよ」
驚きすぎてもはや奇声も出ない。そんなキラキラという効果音が聞こえてきそうなイケメンスマイルで『俺は君がいい』みたいなきゅん発言されてもどうしたらいいのかわかんないよ!
「俺のこと、まだよく知らないと思いますが、これから知ってもらえれば嬉しいです。ちょうど今から俺の生まれ育った国に行くところですから、併せて国のことも。俺の家族も皆おおらかですから、会う時は変に緊張しなくて大丈夫ですよ」
しかもサラッと言ったけどエメラルド国王族謁見があるってこと?勘弁してくれよ。
ケントとの会話にあわあわしていると昼食休憩ということで馬車が止まった。なんだかとてつもなく疲弊した私はよろよろと馬車を降りる。
ダイアモンド国名物である鶏肉と野菜のトマト煮込みを食べているのにいまいち味がわからず・・・嘘ですかなり美味しくいただきました。
再び出発した馬車の中では好きな食べ物や好きな本、趣味などをお互い教え合うような会話がケント主導で繰り広げられた。今夜一泊する宿に着く頃にはすっかりヘトヘトになった私は部屋に着いた途端備え付けのソファに座り込んだ。
ふと気づくと同室のクロエも向かいのソファでぐったりとしている。
「私が聞くのも変だけど大丈夫?」
「えぇ・・・大丈夫よ・・・」
白目剥きながら答えてる。不謹慎だけどちょっと笑ってしまいそうになった。
「びっくりするくらい説得力ないけど、何かあった?」
「特に何も。ただ前世を含めて色恋沙汰に免疫がないから、護衛騎士がいるとはいえ好きな人と2人での馬車が緊張しすぎて疲れただけ・・・って、あ!」
クロエが顔を真っ赤にして慌てて両手と首を振る。
「私、その、別に、好きな人って言ってもフィオくんのことがっていうか・・・」
「隠すの下手すぎない?大丈夫よ。クロエの気持ちは気づいてるから」
私の言葉に観念したクロエは顔を真っ赤にして固まっていたものの、しばらくすると視線を自分の手元に落とした。
「まぁ、でも・・・フィオくんは私のこと何とも思ってないから」
「・・・馬車の中で何かあった?って、聞いてもいいのかな?」
私の問いかけにクロエはパッと顔を上げ、少し困ったように眉を下げて微笑った。
「シトラスに心配してもらうようなことは何も。適度に話しかけてくれるし、聞き上手だから私も楽しくお話させてもらったんだけど・・・本当にそれだけなの。恋愛偏差値低くてもわかるもんなのね、『あぁ、この人にとって私はそういうのじゃないんだな』って」
クロエの言葉に私は何も言えなかった。『そんなことないよ』と言えるほど、私はフィオの胸の内を知らない。何か気の利いたことを言えたら良いと思うのに、どの言葉も薄っぺらくて無責任な気がして口を開くこともできなかった。
そんな不甲斐ない私の心中を察してくれたのだろう。クロエはホッとしたような表情で「ありがとう、話を聞いてくれて」と言った。
私はますます自己嫌悪に陥りながら、寝支度のために荷解きを始めようというクロエの提案に頷き、ソファから立ち上がった。




