相談して
2017/10/07 07:00
2017/10/11 20:10 一部修正(刹那さん→刹那先輩)
家に着くなり、「グラスよろしくー」なんて崎中が言ってくるから、人数分用意してたら、ベッドに勢い付けて乗る崎中が「落ち着くわー」なんて声出しながら横になろうとしていた。
とりあえず、買ってきたつまみや酒なんかを部長に渡して、朱音と部屋の中に入っててもらって、俺はグラスの用意をする。客用のグラスなんて、あんまり人来ないから使ってなくて、軽く洗って拭いたものをお盆に乗せて持って行く。
「おまたせー」
そう言いながら入っていくが、崎中が撃沈してた。
「こいつ、コンビニで散々飲むんだと、好きな飲み物買って行ったくせに、来るなり寝るなよな!」
「はは」
「まぁ、崎中先輩ですから……」
部長と朱音も苦笑いで応えてる。
「どうすっか、三人で飲むか?」
そう言って、部長と朱音を見回すが、部長が応える。
「宮里さん、俺は崎中起こして帰ろうか?田所に相談事があるんだろ?」
「相談事?」
何についてなのか、すぐわからないが、部長はこういうの察する能力が高いよな。エアーリーディングか。すると、朱音はちょっと迷った風だったがすぐ返事する。
「えーと、部長も一緒に残ってもらって話聞いてもらってイイですか?」
「それで良いのかい?」
部長が確認するが、朱音は俺と部長に相談事があるらしい。
「ええ、よろしくお願いします」
「んじゃ、せっかくだから、飲みながら聞こうか!田所飲もうぜ!」
「お、おう!わかった」
それで三人分のアルコールを用意して乾杯する。
「「「かんばーい」」」
まぁ、乾杯という雰囲気じゃなくなりそうだけど、開始はやっぱり乾杯だよな。
「んで、相談事って、何なの?」
お酒の用意しながら考えたが、副部長の件なのかな?と思いながら朱音に聞く。すると、ため息つきそうな雰囲気で部長が注意する。
「お前も単刀直入だな。最初は、日常会話で良いだろうに」
「だって気になるじゃん」
「崎中じゃあるまいし」
「ふふ、崎中先輩、ひどい言われようですね」
「「あいつはいつもあんな風(感じ)だ!」」
俺と、部長の声が重なったところで3人軽く笑う。
「実は、相談っていうのは、サークルの事なんですけど……」
すると、ボソッと部長が横から口出す。
「そっちか」
そっちって、んじゃもう一つの方は何かと思いながら、朱音に続きを促す。
「あたし、今年でサークル辞めようかなって」
「サークル辞める?」
あれ、副部長を辞退するとかじゃないの?って部長は驚いてないみたいだな。
「さっき、三次会で崎中先輩が言ってたように、ちょっと、なんていうか「一年軍団の親衛隊?」そう、なんですよね。今でも、サークルで会うと食事のお誘いとかあったりして、同じ大学でもサークル外の全く知らない人は、断りやすいんですけど、部員を断ると、サークル活動しにくいじゃないですか」
部長が途中で言葉を補いながら朱音が説明してくれる。確かに、それは嫌だよな。こっちが気がない相手だから、ヘンに意識したりして気まずいだろうな。経験なんて無いから、想像でしかないけど。
「まぁ、振った相手と振られた相手が一緒に活動するってのは、やりづらいだろうし、ハッキリ断りづらいよな」
「それで、今年の一年が大量に辞めたのも、あたしのせいだし」
「それは、元々サークルしに来てなかったやつだろ」
「でも、中には何人か文芸サークルやろうと思ってた子もいたかもしれないじゃないですか?」
「んー、いないとは言わないけど、それでも自分の気持ちに素直に返事した方が誠意があると思うぞ。引き留めるために、あいまいな返事されたら、なんか水商売みたいで嫌じゃん」
すると、部長が補足してくる。
「まぁ、田所みたいに皆キッパリ言って欲しいやつばかりじゃないだろうけどな」
そうなんだろうけど、お互いの事を考えたらキッパリ断るのが優しさだろうに。まぁ、断られたら凹むけどな。俺も朱音に告ったわけじゃないけど、「ないですね」って言っているのを目の前で聞いたときは、結構凹んだ。まぁ、告って失恋した経験もあるけどさ。
「それで、気まずいから辞めちゃうのか?」
「はい、何か申し訳ない気もするんですけど」
「まぁ、楽しく活動するべきサークルの場が、楽しくなくなったらしょうがないけどな。朱音が言い出すなんて、気持ちは決まっているんだろ?」
「はい。あ、サークルの活動は今でも好きですよ。部長と刹那先輩に教えてもらったライトノベルも今では、ハマっちゃっていますしね」
「そうか、それは良かった」
メガネの位置をもどしながら部長が笑顔で応える。俺も同じ気分だ。ゲームやマンガの世界の延長みたいなものだから、自分の好きな事を好きって言ってくれてるようで、嬉しい気持ちだ。
「そうだな。それ好きだって言ってくれて本当によかった!」
「……それで、辞める時期なんですけど、先輩達の引退時期と同じじゃダメですかね?」
「俺たちの引退って今年いっぱいって事か?」
「はい」
「いや、それは良くないと思うな。辞めるなら今月か来月にでも辞めた方が良いと思うよ」
年末まで続けたいという朱音に対して、部長は反対しているようだ。本人の好きにしたら良いんじゃないの?そう思ったので、部長に聞いてみる。
「好きな時期に辞めて良いんじゃないの?」
「それに答えるには、『何で俺たちの引退時期なのか?』という宮里さんへの質問と、田所に『今、好きな人とか片思いの人とかがいるのか?』という質問をして、それぞれ答えてくれないと無理だな」
「は?俺の事が関係あるのか?」
「宮里さんは答えたくないだろう?」
「……はい」
「そして、それがあんまり良い時期じゃないというのも、わかってて言ってるんだろ?」
「……そうですね」
「なんだそりゃ?全然俺わかんないよ」
「まぁ、とりあえずさっきの事は置いといて、純粋な興味として聞くけど、田所って今好きな奴とか気になっている奴はいるのか?」
「え、さっきと変わらないじゃん」
「あ、あたしも聞きたいですね」
「お、うーん。まぁ、言っても良いけど、部長も答えるのか?」
「おう、俺は今のところいない。まぁ、2年の時に副部長に告白したけどな」
「えぇー。副部長に!」
「そんなに、意外か?
まじめで、理論立った考えができて、静かだし。俺はお前らみたいに外見は重視してないしな」
「お前らって、……俺と崎中か?まぁ、そりゃ美人の方がイイけどさ。あー、そうか性格は確かに付き合いやすいというか、こういうサークルのネタについていける女性って少ないしな」
「だろ?ほら、俺は答えたぞ!次は、お前の番だ!」
うっ。部長に聞いたらブーメランになった。流石に「今いない」だけだとブーイングだったが、告白した話を(しかも俺が教えろと言った感じで)教えてもらっといて、何も言わないというのは良くないな。しょうがない。今のところの正直なとこを話すか。
「えーと、今のとこ好きってほどの奴はいないな」
「そうか、んじゃ気になる奴はいるんだな?」
「あぁ、まぁ何人かその……」
「何人?複数気になっている奴がいるのか?」
「あっ!」
しまった口すべった。しかも「あっ!」って言っちゃった。
「それで、何人なんだ?」
部長のメガネが光って、背景に『ジョジ○の奇妙な冒険』のゴゴゴゴゴって効果音が見えてきそうだ。
「えーと」
「往生際が悪いぞ」
何これ、借金の取り立てか何かか?
恥ずかしいけど、まぁ人数くらい言っても良いか。人妻のスザーナさんは流石に外すとして、マリーとレベッカさんと坂崎さんと朱音もかなぁ~。
「4人かな?」
「4人!!!えらい人数だな、皆田所が好きそうな美人なのか?」
「俺が好きそうかどうかは置いとくとして、誰が見ても美人なのは確かだな」
「そうか、それで田所から見て脈ありそうな相手はいるのか?」
「そこそこ親しい人が2人と、ビジネスライクなだけっぽい人が2人で、残念な事に皆脈なしだな」
「なるほど、2人脈ありみたいだぞ宮里さん」
「何だそれ、脈なしって言ったじゃん。せいぜい一緒に飯食うくらいだよ」
「お前の一般常識は信用できるが、恋愛感覚の評価は客観的には信用できん」
「なんだそれ!それだと、俺が鈍感系主人公みたいじゃないか!」
「何だ、自覚はあるのか?」
「無いわ!つーか、恋愛でも鈍感ではないつもりだ!」
「自分の事を客観的に見れる人間なんて、そうそういないぞ?」
「う、まぁ、それは認めるけど、間違いなく脈はないって」
「こう言っているが、どう思う宮里さん?あと、脈なしと言っているけど、下手すると脈あり4人もあり得るかもな」
すると、俺と部長の話に朱音も口をはさむ。
「そうですね。鈍感系主人公までいくのか分からないですが、刹那先輩の自己評価が低いのは客観的に見ても納得ですね」
「えぇー、だって俺オタクじゃん!!モテたことないし!」
「この発言がすでに、鈍感系主人公じゃないか?」
「否定できないですね」
「何2人で示し合わせたように、漫才みたいなことするんだよ。モテるなら俺だって彼女欲しいさ!これまでだって、告白してフラれた事が何度あったか!」
「……何度あったんだ?」
「え?言うの?」
すると二人そろって、うなずく。何だこの公開的なイジメ。
「……3回」
「俺の記憶に、田所がフラれて落ち込んでいるとこって見た事ないけど、それは、大学に入ってからの回数なのか?」
「いや、中学と高校だけで……って何言わすんだ!」
「そうなのか。田所のフラれ経験が、鈍感系恋愛臆病主人公を作り上げたと……」
「臆病でもないっての。ただ、勇み足で突撃してフラれるような事をしなくなっただけで、それって成長だろ!そもそも、インドアな俺は、外で知り合う機会が少ないから、大学で告るほど親密になった女性がいないってだけだよ」
「それでも、その少ない機会で、気になる程度の親密度にはなってるんだろ?」
「う、まぁその通りだよ。たまたま自分の出会った人がここ最近美人ばっかりだったからな」
「……ちょっと待て。ここ最近?」
「あっ!!」
しまった。また「あっ」って言ってしまった。何なのもう、この尋問。酔ってるせいか、口が軽くなってるのかな?
「ちなみに、さっきの気になると言ってた中で、ここ最近気になったのは何人だ?」
「もう、言わないと進まないんだろ?」
やっぱり2人そろって頷く。
「……3人」
「そうか!それじゃ、残り1人が一歩リードというか、他の3人より付き合いは長いんだな!」
「まぁ、そうなるな」
失言に気を付けながら、一応肯定する。政治家のよくやる失言って、酔っ払ってたりするんじゃないだろうな?
「というか、これって朱音のサークルを辞める時期の話だったろ?何で俺の事聞いてるんだよ」
「まぁ、それは置いとけ。もういいや」
「何それヒドっ!!」
私遊ばれるだけ遊ばれたのね?ってな感じで思ってたけど、朱音も元気になったみたいだし、まぁいいか。
「とにかく、宮里さんが辞めるというのはしょうがないと思うけど、辞める時期は考えた方が良いと思うよ」
「はい、部長も刹那先輩も色々ありがとうございました」
「俺、今日の相談で役に立ったの?」
あんまりアドバイスとかできてない気がするんだけど。
「えぇ、部長さんの力はとても大きかったですが、刹那先輩もすごくありがたかったです」
「どうせ、笑い話担当だろ!」
「ふふ。どうでしょうね」
そう言ってほほ笑む朱音の表情は、ホントに楽しそうだ。美人の笑顔も見れて、こっちも良かったかな。
「まぁ、なんだ。流石に田所もちょっぴり可愛そうな気がしないでもないから「気がするのかよ、しないのかよ」、んじゃ一応可愛そうだから「一応かよ」、ウチのサークルの女子部員の中での田所の評価を教えてやってくれないか?」
「は?女子部員の評価?」
「あぁ、女子部員が6人いるが、その中の4人が田所の評価をどう言っているのか、こないだ俺は知ったんだ。……聞きたくないか?」
何それ、良い評価なら聞きたいけど、オタクだしキモいって言われると、失恋並みに凹みそうなんだけど。
「それは、い、イイかな?」
顔を引きつらせて拒否してみたが、部長がニヤリと笑って追加で声をかけてくる。
「あながち、俺の言う鈍感系恋愛臆病主人公も違ってなかったよう「聞きたい!評価聞かせろ!」だな」
何か、臆病って言われているのが悔しい気持ちもあって、とっさに叫んだけど、どうしよう。……どうしようもないな。聞くならしっかり受け止めろ!!だが、マイナス評価でも、俺は趣味を変えたりしないがな!!!
「言っていいんですね?」
朱音が確認してくるから、目を見て頷く。
「えーと、さっき部長さんが言ったように、女子部員の中でも4人の評価なんですが、顔はまぁまぁ」
「まぁまぁ」
「ただ、笑顔がカワイイ」
「か、カワイイ」
「それで、優しい」
「うん、優しい」
「たまに頼りになる」
「たまに……」
「以上、刹那先輩の評価は、こんな感じでした」
「これって、どうなの?」
思わず部長に、今の評価を聞いてみたが、部長が要約してくれるようだ。
「つまりだな、顔は中の上程度ではあるが、母性本能をくすぐるようなカワイイ笑顔を持っていて、どっちかというと弟のような感覚を抱きやすい。それでいて、たまーに男らしく頼りになる時があるというギャップあり。という感じだ。まぁ、総じて言うと、中の上から上の下くらいかな?」
「それって、結構、好評価なんじゃ?」
「あぁ、サークルの中じゃトップレベルだな。まぁ、このサークルのトップ取ってもたかが知れてるけどな!」
「確かに。あ、いや、でも良かった~」
これで、ケチョンケチョンにダメだしされてたら、次のサークルも風邪ひきそうだったぜ。
「さて、そろそろ明け方だし、酒もなくなったから帰ろうかな」
「お、もうそんな時間か」
言うほど俺は飲んでなくて、部長と朱音がほとんど飲んでしまった。といっても、度数の軽い飲み物ばかりだったけどな。
「おい、崎中!帰るぞ!」
「お、おはよー。四次会は?」
「さっき終わった。寝ぼけてないで帰るぞ」
「そか、そだな。終わったんなら帰らないとな」
そんな事言いながら、部長が崎中を起こして、3人が帰って行った。
今回の飲み会も楽しかったけど、何か俺、身を切ったような感じがするんだけど……。まぁ、朱音が元気になってたから良いか。そんな事を考えながら、室内の後片付けをしていくのだった。
酔った席での失言は注意しましょうね。
そして、フラれたら臆病になるのも仕方なしか……。




