表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
七人の勇者と婚約者殿~世界と異世界を救う絆の物語~  作者: 童爺
第2章 学園都市イーバラット
26/54

2-18 初めての実戦訓練:準備

 三年生へと進級した春、学園生活の空気が一変した。

 授業科目も刷新され、午前はこれまで通りの座学――魔法理論、戦術学、国語、数学、政治学、歴史、地理、第二外国語など、基礎教養を固める内容が続く。

 しかし午後からは、より実践的な科目へと移行した。


 剣術や魔法戦闘訓練の枠は「実戦訓練」として再編され、さらに舞踏や礼儀作法といった社交の素養も加わった。

 学ぶというより、“鍛えられる”時間が増えたのである。


 実戦訓練の舞台は、学園が保有する森やダンジョン。

 そこに棲息する初級魔物を相手に、学生たちは実際の戦闘を経験する。


 現れるのは、F~Eランクのゴブリン、コボルト、オークなど。

 時に、森の奥に盗賊団が隠れ家を築いていることもあり、その場合は彼らも討伐対象に含まれる。


 もっとも、スライムだけは出現しない。

 ――この世界におけるスライムは、転生前のゲームのような“愛嬌ある雑魚敵”ではない。

 それは森の悪夢であり、旅人を喰らう災厄の象徴だ。


 枝葉の影や地中に潜み、通りがかった獲物に向けて強酸を滴らせる。

 あるいは木の根元から酸を噴き上げて襲いかかることもある。


 その液に触れた者は、瞬く間に白煙とともに肉体を溶かされ、やがて骨さえ残らぬ。

 運悪く飲み込まれれば、内部でじわじわと溶解されながら、生きたまま捕食されるのだ。


 物理攻撃はまったく通じず、炎か聖魔法による浄化だけが有効な手段である。

 ゆえに、スライムは危険度Cに分類されている。


 この訓練に参加する生徒たちは、出自によって所属先が異なる。

 平民の学生は、戦士ギルドや魔導師ギルド等へ登録して活動するのが慣例だ。


 一方、貴族の生徒たちは立場によって事情が異なる。

 上位貴族――公爵家や伯爵家の子息は、平時には領地経営に従事し、実戦の機会は少ない。

 しかし戦時には軍を率いて前線に立つ者もおり、学園での訓練に参加する者も少なくない。


 対して、子爵から騎士爵の下位貴族にとっては、この訓練が己を証明する唯一の舞台である。

 戦場で武功を立て、褒章や昇爵を得ることが、彼らの生涯の目標なのだ。


 ――そして今日。

 その初めての実戦訓練の日が訪れた。


 舞台は、学園の北方に広がる深い森。

 俺たちはそこへ、戦士としての第一歩を踏み出すことになる。


 俺はストレージの中から、愛用の刀を取り出した。

 銘は〈童子切安綱〉。

 自己再生の付与が施された、日本の天下五剣に数えられる名刀である。

 レンカは同じく〈蜻蛉切〉を手にしていた。

 彼女の槍もまた、自己再生の付与が施された、日本の天下三名槍に数えられる逸品だった。


 珍しい武具を手にした俺たちを、周囲の生徒たちは物珍しげに眺めていた。

 「極東の武器だ」と説明すると、彼らは納得したようにうなずき、それぞれの準備へ戻っていった。


 他の生徒たちは、この日のために新調した武具を身に着け、気合いを入れている。

 しかし、その装備はどれも過剰に重く、前衛だけでなく後衛職までもがフルプレートアーマーに身を包んでいた。


 鉄の鎧が軋む音がそこかしこから聞こえ、俺は思わず眉をひそめる。

 「動けるのか、あれで……」


 レンカも苦笑いを浮かべ、肩をすくめた。


 俺たちの装備は、それとは対照的だ。

 上下レザーアーマーの上にミスリル銀製のブレストアーマー、手甲、ブーツを装備した軽装備。

 レザーには要所にミスリルの板金が仕込まれ、急所を守る設計になっている。


 バックパックには水筒や地図、最低限の補給品を入れ、ストレージには念のための予備武具――バスタードソードと円盾を収納してある。

 レンカも補助武器としてショートスピアを収めているらしい。


 完全武装の生徒たちの列に混じると、俺たちの姿は否応なく浮いて見えた。

 互いに顔を見合わせ、苦笑がこぼれる。


 重厚な鎧の音が響く中、俺とレンカの軽やかな足音だけが、やけに静かに森の風に溶けていった。

もし、面白い。


続きが気になる。


先を読みたい。


等のご希望があれば、下記の評価とブックマークをお願い致します。


作者の励みになります。


宜しくお願い致します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ