2-9 閑話(日常)
生徒会役員であっても、クラブ活動には参加できるらしい。
そのことを知った俺は、戦略研究会に所属し、王国騎士団の戦術を分析したり、前世の記憶を活かして『孫子の兵法』や『三十六計』をテーマに研究している。
ストレージには著書が二冊とも入っていた。
――神様、グッジョブ。
そこから戦略を見直し、まとめた書物を王国に提出。
今では、王国の戦術・戦略教本になっているようだ。
◆
レンカは料理研究クラブに入会。
女子たちの輪を作り、ときどき俺を巻き込んで昼食会を開く。
料理のレベルはまちまちだが、外れたことはない。
恐らく相当苦労して新作料理を生み出しているのだろう。
時折レンカが「米・醤油・味噌はどこで手に入るのかしら」とつぶやくのを、他の女子たちが聞きつけ、こっそり俺に「米・醤油・味噌とは一体どんなものか? あと作り方も」と聞いてくる。
俺は前世では自炊していたが、残念ながら帝級までの料理しか教えられない。
瀬織津姫命様から料理全般“神級”のスキルを貰っているが、神級料理は神以外の種族に作るわけにはいかない。
神が満足するレベルの料理だ。
神未満の存在にそんなものを食べさせたら、麻薬のような症状を引き起こす。
神級以外の料理を受け付けなくなり、ひたすら神級料理を求めるようになってしまう。
レンカにもそのことを伝えたが、匙加減が難しいらしい。
……だが、そんな話をしていたら、無性に和食が恋しくなってきた。
ポンと材料を出せる都合のいいスキルは持っていない。
材料は現地調達するしかない。
このミドルアースの住人は、あの世界消滅事件で神々が救い、転生・転移させられた第二世代の人類の子孫だ。
どこかに和食があっても不思議ではない。
不純な動機だが、勇者集めの旅をするときは、ついでに和食も探そうと決意した。
◆
レオンハルトは剣術研究会に入っている。
――いかにも、という感じだ。
さらに他校との交流試合では大将を務めているらしい。
余談だが、レオンハルトの婚約者であるリリアーナ・アルグレイン侯爵令嬢は、レンカと同じ料理研究クラブ所属。
料理の腕前だが……レオンハルトはガッツリ胃をつかまれているらしい。
よくクッキーの差し入れをレオンハルトにしているようだ。
まあ、俺も最近はレンカに胃袋をガッツリ握られているので、レオンハルトのことをとやかく言う資格はない。
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