5 体力づくりを始めよう
体の方は良くなってきたので、今日から体づくり。まずは散歩から始める。体が慣れてきたら走り込みをしよう。昔住んでいたところに似ている。麦畑が広がり、のどかで、緩やかな丘などがある。そして空気が美味しい。久しぶりの外だ、気持ちいい。
まずはストレッチをしながら歩き、徐々に速度を速くする。高低差が緩やかで体力増強の初歩にはいい具合だ。人を切るための剣は嫌いだが、大切な人たちを守るためには仕方がない時がある。そのためにもきちんと身につけなくてはいけない。
「ケビン坊ちゃん、とうとうやる気になったのですね。大怪我しましたもんね。いい心がけですよ」
3歳上の従者見習いのロデムが兄さん面して諭してきた。くそー、ロデムの方が剣術ができるからしょうがない。僕は今までサボっていたよ。でもやっぱり生身の人や動物を斬るのは嫌だよ。魔法使えないしなぁ。なんかスタンガンとか作れないかな。魔力量は多いから魔石に魔力を入れて何か武器が使えないかな。クロスボウを作ってもらおう。遠くからならなんとかできるかも。命中率はどうかなぁ?念の為あった方がいいだろう。一応相談してみよう。
さて朝食、転生して初めて両親たちとの朝食だ。
「おはようございます。父様、母様、ジュリ。遅くなってすみません」
「「おはよう、ケビン」」
「おはよごじゃいましゅ、にいに」
朝から癒しだよ、ジュリアス。みんなメロメロだろうなぁ。
みんなで祈りを捧げ、食べ始めた。
やはり素朴な味のスープ。今日、邸宅の外を散歩がてら見て回ったが、家畜はいる。ニワトリよりも大きい鳥。これは卵を産み、肉にもなるらしい。鶏肉か。それから魔牛もいた。牛乳と鶏肉、牛肉の確保はできている。
馬小屋らしきところに魔馬もいる。デカすぎる。あんな足に蹴られたら死ぬね。近寄らないでくださいと言われてそそくさと退散した。改めて異世界怖い。魔獣がいるよ。
餌を見るとじゃがいも、とうもろこしらしきものが転がっていた。そうだよ、俺じゃない僕には鑑定がある。本当に魔法がなかった前世。今世でも別に使わなくても生きていけると思っている。でも、鑑定という便利なものを使わないなんて勿体無い。
鑑定:ポテトイモ(日本名じゃがいも)
芽が毒と言われているので取り除けば美味しいじゃがいも。揚げても煮ても美味しい。
鑑定:モロコシ(日本名とうもろこし)
ほったらかしでも育つ
おかしい、僕の鑑定は食に特化しているのか?食べ方を教えてくれる。ジャガイモがあったよ。フライドポテトは美味い。太い方と細い方どっちと議論があるが俺は太い方が好きだ。モ◯チーズバーガーの下の方に残る玉ねぎとソース、これを掬うためにポテトを使って全部食べる。これがいい。
ハッシュドポテトも好きだな。ジャガイモは色々料理に使えるから便利だ。お腹持ちも良いし、お酒も作れるから便利だ。
よし、じゃがいもを増やそう。
コーンもあるのか。スープだ。コーンスープができる。スープの味変が出来る。
さつまいも、にんじん、玉ねぎ、トマトも欲しい。トマトは必須だよな。あるのかな、この世界。トマトがあればどんな料理にも合うはず。あとは、ポーションがあるということは薬草があるんだよな。この領地で薬草がないのか?ポーションを買っているのか。俺が錬金で習得できれば、もっと経費削減につながる。もしくはあれば金になる。
よし、まずは良い野菜や植物を育てるには土壌改良なんだよな。
土精霊様以前に土壌改良。やっぱり勉強だな。地形、気候の変動、この土地がどのような土地なのかを知ることから始めないと、そこからだな。海が近いのか?なだらかな丘はあるが大きい山は?なさそうだな。うーん。
種や苗がどんなものがあるのか市場にも行ってみたいな。父様に頼んでみよう。
「ケビン、唸っていて何か悩みか?」
父様が食べない俺を見て心配してきた。
「すみません、父様。今日から体づくりをしようと軽く歩きまわったのですが、家畜の餌になっているものがもしかして食べられる野菜じゃないかと思って研究しようかと思ってます。あとなんとか土壌改良できないかと思ってます。勉強するために、近年の気候変動や収穫しているものなどの資料を見せていただけないでしょうか?」
「ケビン?お前、どうしたのだ?」
「あ、あの今まで何もしなかった自分が情けなくて、俺もこの領地で役に立つことをしていきたいと思ったのです。兄さんたちは領地のためにそれぞれ自分の志を持って働いているのに、俺はふらふらと何もしていなくただ生活をしていたので少しだけ、本当に少しだけですよ、何かしていければいいなと思ったのです」
「ケビン、少しだけなのか、役に立ちたいと思うのは」
「はい!ほんの少しだけです。あとは脛をかじって生きていきたいです。だからまずやるべきことをしていきたいと思ってます」
僕はどや顔で脛かじり宣言をした。両親の顔は笑っている。頬がヒクヒクしているよ。もう!
「そうか、ケビン、脛をかじって生きていくのか。あははは。まあ、いい。朝食後に話を聞こうではないか。何か我々が気づかなかったところにケビンなりの気づいたところがあったのかな。朝食後聞こう」
「はい、父様」
「ケビン、あなた、いつから俺なんて言うようになったのかしら?まだ俺と言うのは早いわ。僕でいいのよ。僕で。まだかわいいケビンは僕と言ってちょうだい。ジュリアンも真似してしまうわ。わかりましたか?」
母様の圧は怖い。コクコク頷くしかない。
「は、はい。母様。これからもぼ、ぼくと言います。すみませんでした。かっこいいと思ったのですが、早かったのですね」
父様がめちゃくちゃ笑っている。あー、俺って言ってしまうんだよ。僕かぁ。しょうがない、8歳だからな。
食事後、父様の執務室に足を運んだ。




