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2 今世の紹介

 俺、ケビン ランザルド フォーゲリア


 フェイノランド王国 フォーゲリア伯爵家 三男 8歳


 父は騎士副団長、母は元第三王女、両親は相思相愛、周りの反対を押し切り見事結婚。母は王族、父は伯爵の嫡男だったため、周囲が身分違いということで反対した。それも伯爵と言っても裕福ではない方。王族を迎え入れるには脆弱だった。王家や周囲の条件が何があろうと王家に頼るなということを母様に突きつけた。母様は笑顔で了承したと言う。王族が降嫁したからと言って優遇はしないと言うことだ。両親はそれを了承し、はれて結婚。その後男4人、女1人を産み、貧乏ながら家族仲良く暮らしていた。母様は強い。精神的にも肉体的にも強い。こんな貧乏な伯爵家を切り盛りしていたのだ。母様は、領民と一緒に田畑を耕し、領民の悩みを聞き、領地のために奮闘していた。


 母様の境遇は王族で魔力量はあるが魔法が使えない、王族としては無能者として、臣下や周りからは冷たい目で見られてきた。しかし家族は優しかったと言っている。国王陛下や王妃様はそんな母様に魔法は使えなくても生きていけるよう、勉学や領地経営、刺繍、剣術、乗馬、絵画などさまざまなことを習得させたらしい。それが今伯爵家で役に立っている。母様は、"私はこの伯爵家のために色々勉強や領地経営のことを学んできたのね、神の導きね"、なんでポジティブな発想の持ち主だ。


 母様の兄である王太子殿下は剣術、乗馬、次兄には勉学、姉には淑女教育と刺繍などを一緒に学び指導してもらい楽しく過ごせたと言っていた。家族が母様を冷遇や見捨てない温かな人達でよかった。


 その王太子殿下のご学友で騎士団にいた父と出会い、お互い惹かれあった。あの出会いはビビビっときたといつも聞かされていた。ビビビ婚か?あの時はなんでそんな言葉が思い浮かんだかはわからなかったが、前世を思い出してからは、前世の言葉かよと今ならわかる。


 母様は質実剛健をモットーに父様と協力し合いながら生活し今に至る。貧困でも約束通り王家に頼らず、伯爵領のみんなと助け合って、楽しく過ごせたと言っている。


 そして、兄イーサン(19歳)は宰相補佐、その双子の姉クラウディア(19歳)はすでに結婚。北のスティングレイ辺境伯嫡男、ゼーファン様と仲睦まじく過ごしている。次兄ロナウド(18)は魔導士兼商人、俺、三男(8歳)そして末っ子に四男ジュリアン(5歳)がいる。


 そして今の俺はベッドに横たわっている。


 ことの発端は父様が俺に剣術教育の時に起こった。


 俺はハッキリ言おう、剣術は苦手だ。そもそも平和主義。人や魔獣を斬りつけることに抵抗がある。特に人だ。無理だよ、人と人との争いなんて以ての外。口論でさえ嫌いだ。


 前世の記憶がない時でも足は早かった。逃げ足だけは早いと褒められていた(褒められてはいないが)。


 8歳なのに初の魔獣討伐に参加させられ、一番最弱と言われる一角ウサギの討伐ができなかった。騎士達から笑われたがそんなの関係ない。生きているものを切る行為に慣れない。売っている肉を切るのと訳が違う。動いているんだよ。血がでるんだよ。ムリ!


 周りから落ちこぼれと影で言われていたが、両親や兄姉達はお前にはお前の良さがある、周囲の声なんて気にするな、お前らしく生きろと励まされていた。


 でも、剣術は貴族の嗜みで習得しなければならないという苦痛。嫌々やっていた為か、見た目型はできているように思われるが実質何もできない。父の咄嗟の行動に対応できず、バランスを崩し倒れた。倒れた先に石があり、頭をぶつけ、大量に出血。


 治癒魔法を施し傷は癒えた。しかし意識が戻らなかったという。


 そして前世の記憶と共に俺が目を覚ました。


「ケビン、ケビン、大丈夫?母様よ、わかる?」


 大きい胸に包まれた。前世大人な俺は必死に堪えた。これは母上だ、母様だと。まぁ、子供だからそんな状況にはならなかったけどな。ははははっ。


 おや?母様、妊婦だったのか?子供の知識じゃわからないよな。そうか、今度は妹がいいなぁ。


 おっと、話を戻そう。そういうわけで、貧乏伯爵家三男、平和主義、江戸時代でいうところの昼行燈よろしく、のほほんと生きていきたい。でも、両親の志である領民を飢えさせないようしっかり領地経営をすることに協力して、脛を齧って生きていこう。これ大事。実家の脛を齧り、俺は表立ってはしないけど、頑張って伯爵家を発展させ、のびのびとこの田舎で生活していきたい。


 長兄イーサンは頭脳派だ。父の脳筋に似なくてよかったと誰もが思っていた。しかし田舎暮らしは好きではないのか、今現在宰相の補佐をしている兄は王都のタウンハウスに住んでいる。次兄は魔導士でありながら商人としてあちこち転々と依頼があれば魔導士として赴く生活をしている。出稼ぎみたいなものだ。三男の俺、昼行燈。そうなると四男ジュリアンに期待するしかない。ジュリアンは見た目王子様だった。母の王族の血が色濃く出て、王太子に似ていた。王太子の子供と言っても通るほどだ。俺はというとどちらかと言えば王族寄りな程度。父もイケメンだから、父の方にも似ている。要は家族皆なんだかんだ美男美女だということだ。俺もイケメンだよ。たぶん。ぶふっ。鏡がないからわからない。


 両親は伯爵家の爵位を誰が継いでもいいと言っている。長兄イーサンは嫡男になりたくない、王都にいたいと宣言しているからだ。次兄ロナウドは一つのところでは落ち着かないと転々としている。そうなると伯爵家を継ぐのは俺かジュリアンになってしまう。ジュリアンに賭けるしかない。がんばれジュリアン。小さいお前がこの伯爵家を背負っていくのだ。俺は影で支える。だから領地の隅の方で過ごさせてくれ、頼むと小さいジュリアンに心の中でお願いしていた。


 バタバタと足音が聞こえてくる。バタンとドアが開けられ騒がしくなった。


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