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1 これって転生ですよね

 ここはどこだ?病院か?会社帰りの駅の階段で何かがぶつかってきて、そのまま階段から転げ落ちた。そこからの記憶がない。


 俺は、裁縫師、聞こえはいいがゆるキャラや刺繍のデザインを考え、そして作成したりする制作デザイン会社に勤めている。手作りぬいぐるみをオーダーで作成もしている。まぁ、言ってはなんだが裁縫の何でも屋である。刺繍デザインは巷では高評価を得ていると自負している。


 俺は小さい時から料理や物作りが得意だった。と言っても、やるしかないためやっていたということだ。それは母親を早くに亡くし、父方の祖父母、父、4歳上の兄と一緒に片田舎て暮らしていた。母を亡くした寂しさから祖父母の後をいつも付いてまわった。カルガモの赤ちゃんかと言われたぐらいだ。祖父はモノ作りが好きで、祖母は機織り、裁縫が得意だった。日舞の先生とあって、踊りはもちろん着付け、所作、機織りの材料の素材の目利きなど多岐に渡り知識は豊富だった。祖父母にはモノづくり、野菜作り、裁縫、料理、礼儀作法や近所づきあい、爺婆との会話術を学んだ。祖父母と物作りをしていた経験の賜物だった。


 兄は外で友達と遊びやサッカーに行き、俺は家でモノづくり。内と外。体育会系と文系に分かれた。でも、田舎なので、足腰は鍛えられているので俺だって足は早いよ。運動ができないわけではない。そこ大事。


 祖父母が高齢で亡くなった。喪失感が酷かった。それと同時期に父の転勤で都会に行くことになった。都会というと自分が酷く田舎者のように感じるが自分は田舎が性に合っていた。父は元々都内の大学に行き、一人暮らしをしていた経験があるので、都会は慣れたものだった。兄は陽キャ系統だったのですぐ慣れ親しんだ。サッカー部に入り自慢の脚力を披露していた。田舎だったので脚力はある。少人数の学校のためほとんどワンツーマンで勉強を教わるので学力も上位。顔はイケメン風。それが兄だった。


 俺はというと、部活は家庭科部に入った。男子は俺以外に2人もいた。そいつらはなかなか手つきが慣れた者で、やはり家でやっていると言っていた。様々な家庭環境があるので男も料理をする時代なのだとつくづく思った。家庭科部では創作料理や刺繍、作り物を考えだし発表することが楽しかった。仲間がいたことが嬉しかった。最近はごはん男子、刺繍男子、編み物男子など様々な男子が活躍してあるご時世だ。活動しやすくて助かったよ。もちろん女子もいるので、みんなでお菓子作りをしてお茶会をしていた。わざと女の中にいるのか?とよくからかわれたが別に気にしない。あと2人男がいるのでそれほど気にすることでもない。マイペースに過ごしていた。


 毎日、父と兄にお弁当を持たせている。都会は物価が高い。田舎なら、野菜は自分で作ったり、ご近所さんが持ってきてくれていたが、都会は買わなければいけない。高い、高すぎるよ!なんだよ、キャベツが700円台って!庭が少しあるので家庭菜園をすることにした。都内、怖い。



 俺の作った弁当は父、兄に好評なので頑張って作っている。そのほかに兄の繕い物などもしている。本当、俺オカン的役割。


 この前、サッカーのユニフォームを着た兄のマスコットを作った。これをサブバに付けていった兄。それを見た友達が自分の分も作って欲しいとお願いしされて帰ってきた。弟が作ったマスコットをつけていく兄(彼女じゃないんかーいとツッコまれるらしい)もなんだかなぁと思うが、まぁ、男3人家族、仲が良いので気にしない。


 兄の友達が家に遊びに来たり、泊まりに来ると食事の用意やおやつなどを作ったりする。そうすると、男なのに気持ち悪いと言う奴もいる。そういう奴と兄は付き合わなくなる。一度兄に言ったことがある。



「別に俺のことを言われたからって、付き合いを切らなくてもいいんじゃないか」



「何言ってんだよ、お前が俺たちのために頑張っていることを知っている。それをあいつの物差しでお前を判断されたくない。そういう器の小さいやつとは付き合わない!」


 兄は本当にしっかりとした考えを持っている人なんだ。やりたいことはとことん責任をもってやる。そして家族を大事にしている。そういう兄だから俺はサポートしていきたいと思っていたんだ。でも結局は兄を頼りにしている自分がいる。頼りになる兄ちゃんなんだ。


 父親もなるべく早く帰れるように効率よく仕事をしていると本人は言っている。休日には父と一緒に兄のサッカーの試合を応援に行き、プロサッカーの試合を見に行ったりしていた。尚且つ温泉好きの俺は暇さえあれば温泉に行く。父、兄もついてくるんだよ。結局家族旅行に行っていた。俺はどこの温泉はどういう効能かなど調べてあげ、自由研究で提出して先生に怒られた。自由研究と言っているのだからいいじゃないか?一応化学と地理の融合の研究でいいんじゃないか?と思ったけど、趣旨が違ったらしい。


 それから高校卒業後、芸術工芸大学に通い、その傍ら手芸教室などに行き趣味に没頭していた。もちろん温泉に行っていたよ。


 工芸大学に入学したが、有望なデザイナー候補がいっぱいいる。俺のように普通のデザインなんてザラだ。ただ刺繍やレース編みのデザイン画は好評を得ている。やはり趣味の方が楽しい。


 そうして小さいながらもデザイン制作企画会社に就職。趣味に近い会社で楽しく暮らしていた。


 兄は結婚し子供が産まれ、編みぐるみやぬいぐるみ、布の飛び出す絵本などを製作して持っていくと姪や甥に喜ばれた。子供の笑顔は癒しだよ。




 兄夫婦は共働きしているため、親父と俺が時々姪や甥の面倒を見た。親父は好好爺になっている。俺はベビーシッターか?兄貴に、俺の方が父親に思われるぞ、と冗談めかしに言ったら、頭をコツンとされた。何気に痛いぞ。それから兄も子育てを沢山するようになった。愛情あふれる子育てだ。甘やかしてはいないぞ。たぶん。結局今までも家族、仲が良いということだ。


 そして冒頭のここは病院か?


 ガタガタという音がした。誰がいるのか?


「ケビン様、ケビン様が目を覚まされました」


 ケビンって誰だ?さっきの女性はメイドのような服装を着ていた。ナース服ではないな。ん?メイド服。俺はそんな喫茶に行っていないぞ。行ったこともない。行ってみたいと思っていたのだ、いたのだが勇気がなかった。はじめの一歩を踏み切れなかったのだ。


 それから色々な情報が頭に流れ込んできた。


 ケビン ランザルド フォーゲリア


 俺はフェイノランド王国 フォーゲリア伯爵家 三男だ??


 あれ?これは俺、死んでしまったのか?ラノベでいう転生か?神様や女神様には会ってないぞ?


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