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神様のお告げ

 あれは、二〇〇一年の有馬記念。

 初めて中山競馬場に行った。その年には、同時多発テロがあり、たまたまその時期にアメリカに旅行していた友達と一緒に有馬記念を見に行った。私は内馬場で、お土産にもらったライターをなくし、第五レースの十万馬券を逃し、ものすごく暗い気分になっていた。

 妹に頼まれた馬券があるから、買わないといけないと思っていた。

 妹はほとんど競馬をやったことがない。だが居候していた祖父母の家の隣に住んでいる叔父は、年代者の競馬ファンだ。結局収支はマイナスになるのだからと、奥さんにとがめられあまり馬券は買っていないようだったが、かなり詳しく分析していたはずである。

 妹に頼まれたのは確か、一番九番の馬連だった。十五万馬券である。

「何でこの馬券なの?」と聞くと、

「神様からの啓示があった」という。要するに夢で見たのだ。こんな馬券に千円も払うのいやだな、と負けのこんでいた私は思いながら、マークシートを塗りつぶした覚えがある。結局その馬券は当たらなかったものの、現場にいる私たちよりもあたりに近い馬券であった。一番は二着に来たアメリカンボスだったからだ。

 私たちは悔やんだ。マンハッタンカフェ、アメリカンボス……テロのときアメリカにいた友達……お土産のライターの紛失……神様の啓示をまんまと見逃した私たちは、おけら街道をおけらで歩いた。

 翌年の有馬記念。私は立川の場外にいた。また妹から頼まれていた。今度は一番四番だったと思う。理由はまた『神様からのお告げ』だ。なんともうまく有馬記念にあわせてお告げがあるものだと思いながらも、私は素直にその馬券を買い、そしてこっそり、一枠と三枠から枠連で総流しした馬券も買った。混雑したウインズで小さなモニターを見ていた。タップダンスシチーが先頭に立った映像を記憶している。妹はまんまと馬券をはずし、私は漁夫の利で枠連をゲットして、多分はじめて有馬記念を当てた。私の本命はコイントスだった。

 去年の有馬記念は、ドリームパスポートが本命だったが、見事に玉砕した。妹も応援していた。が、最近は自分で場外に馬券を買いにいけるまで成長してしまっている。もう妹のお告げはあてにできない。ビギナーズラックの時期は過ぎてしまった。

 昨日の夢は、面白かった。知り合いがなぜかジョッキーなのだ。だが、どこでの騎乗なのかわからない。私は明らかに中山競馬場にいると意識を持ちながら、それでも行ったことのない外国の競馬場のようなところで、うろうろしていた。前から知り合いがやってくる。今日の騎乗は断ったというのだ。一鞍しか依頼がないし、遠くまで行くにはリスクが高いくらい、あまり勝ち目がないからだ、という。現実の世界ではそんな理由はありえないだろうが、私はなんだか納得していた。

 その馬はテイエムプリキュア。斤量五十キロ以下の馬が三着に来ることが結構ある日経新春杯に登録している。私は迷わず、三連単の相手に入れた。

 が、結果は玉砕。プリキュアは頑張った。でも、私の予想が頑張れていなかった。

 なぜ、複勝を押さえていなかったのだろう。ちなみに、本チャンの馬券はいまだ白星がないが、JRAの馬券道場では単複を少しは当てている。まぁ、半分くらいしか回収していないのだけれども。要するに、一番下手くそなのは買い方である。と、わかっているのにうまく買えないのだ。

 神様もため息をついていることであろう。せっかく教えてやったのに、人間とはなんとおろかなものよ、ってな具合だろうか。

 今年の私主戦のジョッキーは、落馬しちゃったけど、勝浦騎手と幸騎手で行こうと思う。去年私のお財布を潤してくれた二人だ。なので、ライアン産駒でもパラダイスクリーク産駒でもないのに

「何でこんな馬予想してんだ」と思ったら、騎手を確認されたし。

 ああ、プリキュアちゃんもパラダイスクリーク産駒なんだよなぁ……去年なんて、あんなに調子よかった勝春騎手、六万円も投資したのに、私の財布には一円も返してくれなかった。なんて馬券下手なんだろう。多分、一番の神様からのお告げは『欲をかくな』。来週からこそは、三連単なんて買わないぞ、と、今日のところは誓っておく。

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