競馬の学校
出かけられるなら出かけていこうと思うときに限って、前の晩、何かに襲われる。今回は妹の接待に付き合わされるという不幸に襲われ、検討の時間がとれず結局馬券にはならなかった。
レースは美しかった。特に、直線でウオッカがうちに入ったとき、アルマダのホワイト騎手はウオッカの進路をふさぐことなく、見事にフェアな騎乗だったと思う。そこから抜け出したウオッカの美しさには鳥肌が立った。残念だったのはまた審議になったことだった。現在ファン投票一位のウオッカだけれど、このまま秋まで休養する予定らしい。今年に入って海外も含め、四戦を消化しているから仕方ないだろう。宿敵ダイワスカーレットとの対決も見たかったけれど。
馬産地では牡馬が生まれたほうが喜ばれる。高く売れるからだ。牡馬はレースで活躍した後、種牡馬としての第二の生活が待っている。牝馬は一年に一頭しか子供を残せないが、牡馬は種付けした数でたくさんの子供を残すことができる。商品価値として高い。血統においても、母よりも父のほうが重要視されている。ただ「兄弟」とされるのは母方からになる。それはそれでお父さんはちょっと切ないかな。
さて、中央競馬会騎手課程の募集が始まる。
応募資格は来年の三月に中学卒業見込みから三月末に二十歳未満であること。中学卒業以上の学力を有すると認められること。学業成績証明書などが必要で、一次試験には国語と社会の筆記試験もある。娘が受けたときには社会科の問題で日本の地名のテストがあったとか。
つぎに体重。年齢で違いがあるが、娘の場合は四十四キロ以下であった。この制限体重を試験当日越えているとその後の試験も受けられない。
そして視力。眼鏡もコンタクトも不可。〇.八以上ないといけない。
その他にも健康診断書の添付が必要となる。ちなみに提出する書類には父母の体重の記入欄もある。一緒に減量しておいてよかった。
入学説明会はもう終わってしまったけれど、学校見学会はまだある。私も夏休みに見に行った。夏時間だったため集合が午前七時。は、はやい。その上とても遠い。実は乗換えを間違えて遅刻してしまった。だが、私たちより大失敗をした人たちがいるらしい。競馬学校ではなく栗東に行ってしまったという。トレーニングセンターは栗東と美浦の二箇所にあるが、学校は千葉の白井の一箇所にしかない。栗東からではどう頑張っても見学会には参加できなかっただろう。
見学会では学校内を案内してもらえ、最後に競馬学校に関するビデオを見せていただいた。卒業式の場面では池添騎手の若々しい姿が映し出されていた。
面白かったのは、食事制限のお話。全寮制で食事の管理は学校がやってくれるのだけれど、週に七百キロカロリー(だったと思う)はお菓子やジュースを買ってきてもよい。生徒さんたちは一生懸命カロリーを計算して買い物をしてくる。飲み物であったり、スナック菓子であったり……それを教官に見せてチェックを受ける。そこで規定のカロリーを超えていると――全部没収されてしまう。卒業後には食事制限を自分でしていかなくてはいけない。そのための訓練でもあるという。でも全部没収なんて世にも悲しい一週間になる。心の底から気の毒だな、と思ったのを覚えている。
学校見学は一般の方もいけるので、興味がある方は行ってみてはいかがだろう。初々しい生徒さんたちが「おはようございます」と迎えてくれる。懐かしい名前の元競走馬たちが訓練用にいたりもして、それはそれでとても楽しい。
G1は宝塚記念までしばらくお休みだけれど、競馬はまだまだ続く。地方も含めればいつでも開催しているのだ。大きなレースでないからこそ、自分を重ねる馬がいるかもしれない。
そういえば、競走馬としては珍しい白毛のユキチャンは今度武豊騎手を背に川崎競馬で行われる関東オークスに出走予定だ。ぜひ観戦したい。