果報は寝て待て
競馬場に着いたのは、第六レースのパドックが終わった頃だった。
先についていた馬友と合流し、レースを見たあと、いつものように蕎麦を食べに行った。同じ鳥蕎麦を頼んだはずなのに、なぜか馬友の蕎麦にはかき揚げと煮玉子がのっかっている。店員さんのミスで、
「食べられますよね?」
というごくアバウトな理由により、間違ったかき揚げ煮玉子蕎麦にとりをぶち込まれたらしい。なんとも豪華な蕎麦は、本日最高の当たりとなるオーラをかもし出しているが、ギャンブラー二人にとってこの時点ではただの笑い話に過ぎない。今日で春の東京開催は終わりである。父の日のせいか、家族連れも多い。G1のある日とは違いなんだかのんびりしている。
寝坊して、第三レースからの参戦だと馬友は言った。第八レースのパドックを見て、買い目をマークしていたらお腹が痛くなった。トイレに行こうと思ったが、ふと、浅田次郎先生のエッセイが思い出された。大万馬券を買おうとしていたら、お腹が痛くなり、馬券をあきらめてトイレへ。トイレの中でその的中を知ったというお話である。
なかなか勝ちきれないけれど、POGで持っていた馬が出馬する。ぜひ買いたい。買えないで勝ったらそれは切ない気分になる。でもお腹は痛い。我慢してマークしていたものの、やはり耐えられなくなり、トイレへ。便座に腰掛けながら、マークして、急いで買いに行った。前に並んでいる人がぐずぐずしている。なんとか買えたものの、三着には着たけれど、馬券にはならず。
第九レースも見当違いな馬券を買い、惨敗。第十レースのあたりで
「まだ三レースもあるのか……」
と朝からとりがみすらない馬友がささやく。かっこいい叫びがしたいため、障害帰りのトニービン産駒を軸に買うも、完全な縦目。
「コレ一番人気はずしたら、男前だよね」
東京良績の馬について検討するも、馬友は二番人気を「男前」に切り、惨敗。
メインレースは点数を控えるために一、三着固定というおかしなフォーメーションを買い、縦目。お守りの「武豊単複馬券」だけ複勝が当たり、一頭しか名前がないのに、とりがみという不思議な馬券を見る。勝った横山典弘騎手のガッツポーズが可愛かった。裏のCBC賞はお誕生日馬券に違いないと思って、そこからながすも、またも縦目。最終くらいは何とかと意気込み、四頭ボックスなんて買ってみるもやはり惨敗。
東京の最終で3着にきた馬を馬友は軸にしていた。直線で
「柴山! 柴山!」
と叫んでいるも、脚色が衰えている。が、十一番人気だったため、二三着のワイドでも二千五百円強の馬券。あまりのショックに馬友しばし固まる。
パドック側に移動途中、神様が降りてきた。中京の最終。テンザンコノハナの騎手が乗り替わっている。以前まで乗っていた角田騎手は逃げ馬に乗っている。これは行った行ったの決着になるパターンではないか。急いでそのテンザンコノハナから角田騎手とライアン産駒へのワイド五百円ずつと、三頭の三連単のボックスにマークをして、券売機に近づくと「休止」の文字が光った。締め切られてしまったのだ。パドックの大画面でレースを見る。予想通りの展開。逃げる角田騎手についていくのはテンザンコノハナただ一頭。四コーナーを曲がったところで、二頭は後ろをぐんと離し、決着はついていた。私はその場で凍りついた。
払戻を見て、死にそうになった。ワイド九千五百円。四万七千円を取り逃がしたのだ。
最終週だから、現場にいたかった。でも馬友も寝坊していた。もし、馬友が来ていなかったら、来なかったかもしれない。そういえば、CBCで三万馬券を取ったときも、ガーネットステークスの十七万馬券も、去年年末の十万馬券も、実はレースを見ていない。皐月賞の万馬券も東京で画面での参戦だった。
ダービーにはダービーの雰囲気を味わいに行った。でも今日はどうだろう。別に家での参戦でもよかったのではないか。というよりも、そうするべき日だったのではないか。馬友の寝坊、最高あたりは蕎麦、トイレに行きたくなったこと、その後の前の人のぐずぐず……
「今日はパットで買うべきです」
神様からの啓示をまたも見逃し、おけら街道をおけらで歩く。久々のかなりの惨敗街道となった。来週からはお家場外馬券場で買い、レースは見ないでおこう。果報は寝て待て。




