皐月賞
皐月賞といえば、やはりディープインパクトの年。
私は府中のパークウインズで一人でターフビジョンを見ていた。実は私、ちょっとむかついていた。
当時私が購入していた競馬雑誌には『誌上パドック』として有力馬の写真がでていたのだが、シックスセンスの写真が載っていない。どういうことだ、と憤っていた。
まぁふたを開けてみれば十二番人気だったのだから仕方ないけれど、京成杯は二着だったのになんて見所のない雑誌なんだろうと思っていた。
そのとき私が買っていたのは、ディープインパクト、シックスセンス、アドマイヤジャパン、スキップジャック、ダンスインザモアの五頭で三連単のボックス。そしてディープインパクト、シックスセンス、ダンスインザモアの馬連ボックスだった。正直、オッズは見ていない。ゆるぎない信念でその馬券を手に、まだ小さかったターフビジョンの向かって左側に陣取り、一人でレースの開始を待っていた。
シックスセンスには出遅れ癖があった。四位騎手が
「ダービーまでには治るように、競馬を嫌いにならないようにやっていく」
といった記事を何かで読んでいた。だから多少のんびりゲートを出ても大丈夫だな、と思っていたら、のんびり出てきたのはディープインパクトのほうで、私はこの時点で馬券を獲ったと確信していた。
結局ゴール前ではすっきりとさされてディープが勝つけれど、私にとってはシックスセンスが二着にいることがうれしかった。パークウインズはざわめいていたけれど、それはディープの見事な差脚についてだとばかり思っていた。
「がちがちだな。たいしてつかないだろう」
そう思っていたので、払戻がターフビジョンに映し出されて、私はまたちょっとむっとした。シックスセンスの複勝が千円超えてるってどういうことですか? 馬連も六千円近くついている。なんでそんなに人気がないのよ?
まあ、とったのだからよしとしよう。せっかく、高性能のカメラつき携帯だから記念に馬券の写真でも撮っておくか、と私はターフビジョンの前の手すりに馬券を固定して、上手く写る角度を探していた。右手から三人組の男の子が歩いてくる。
「ディープはあるけどさ、二着ってなんだよ」
「シックスセンス? そんな馬いた?」
「こんなのとれないよな」
チャララン、というカメラの撮影音で、その三人はぴたりと黙った。とれなかった馬券を悔しがっているそばで、女一人で来ているやつが、にやにやしながら馬券の写真を撮っている。それが皐月賞の馬券だとは容易に想像できたはずだ。悔しかっただろう。
「へへーん。私は獲ったわよ」
と心の中で言いながらシャッターを押していたので、そのオーラも伝わったことだろうと思う。結局、お財布もほくほくになって帰った。
さて、今度の皐月賞。心情的にはレッツゴーキリシマとスマイルジャックを押したいけれど、距離の経験がない。マイネルチャールズは人気になるだろうけれどはずせない。後はノットアローン、サブジェクト、ダンツウィニング、フローテーションあたりがちょっと気になるかな。まだちゃんとデータ解析はしていないけれど。
最近、雨続きで馬場がよくない。このレースで『今年三冠に挑めるたった一頭』が決まる。できればぴかぴかの馬場でやらせてあげたいけれど、そうはならないだろう。また心から全馬の無事を祈るばかりだ。