籠城されたら一揆
最後のあたり改稿しました
えー、皆さんお久しぶりです。
まだまだ七尾城の戦いは続いています。長いよ。
七尾城は信長の援軍を信じて待っているらしい。軒猿の知らせでは、すぐに来れそうなのは柴田勝家らしい。どっかで戦いに出ているらしいけど、多分数ヶ月で終わるとか。さすがですわ。将来は賤ヶ岳合戦で負けるくせに。
ともかく、七尾城を潰すには精神的なダメージを与えなければならない。
…こうして考えてみると、俺の中の何かが昨夜の戦いで壊れた気がする。敵がどうなろうと知ったことかってなっているし。こうやって戦国思想に染められていくんですね。
で、話を戻そう。
七尾城は織田信長の援軍を要請している。つまり、援軍が来るまでは籠城するということだ。残念ながら、あの城は騎馬戦では不利になっている。大筒があれば変わったかもしれないけど、もし騎馬戦で押し込むならば死兵が必要になる。いそうだけど、絶対に手柄と恩返しで死にに行くな。なんて死亡フラグ。
ではどうするか。
「与六、お主ならばどうする?」
「…調略、でしょうか」
「うむ、わしもそう考えておった」
まあ、籠城戦にはこれだよね。
何だったら堺などへの道を邪魔するのもいい。逃げようとする奴に夜襲を仕掛けるのも良し。時期を考えるとすれば、二〜三ヶ月後くらいか。食糧、士気、裏切りが問題になる頃だ。
…いや、待てよ。助けに来るとしたらいつ、誰が来るんだ?
織田家の家臣で上杉に対抗出来そうなのって誰だろう。すぐに来れそうなのは柴田勝家だけど、頑張れば前田利家とか滝川一益も来れそう。羽柴秀吉はどうだろう。手柄目的で来そうっちゃあ来そうだけど。
うん、分かんない。
それにしても、御身城様はいつ倒れるんだろう。出来れば酒を控えてもらいたい。確か日本史の先生は
「上杉謙信は脳卒中と思われる病気で亡くなりました」
って言っていたな。昔、御身城様が倒れたって騒ぎがあったけど、あれって多分発作だな。脳卒中って高血圧とかだったはず。こんだけ毎日酒を飲んでいれば病気になるはずだ。でもハイテンションにならなければ大丈夫なのでは?…あ、ダメだ。戦の後って凄いテンション上がる。
「どうした?難しい顔をしおって」
「い、いえ…ところで、援軍の方はどうされるので?」
「うむ。この地図を見よ」
御身城様が傍に拡げていた地図を指す。丁度この辺りのもの。
どうやら柴田勝家が使う道は奇襲に向いている地形のようだ。傍にある森に隠れているのも良し。通り道に爆薬を仕掛けておくのも良し。それに、七尾城が堅牢な城だと知っている彼らは、自分たちが到着するまで耐えていると考えているだろう。上杉を背後から攻めるだろうが、道が悪いな。
「しかし、今宵のお主はいつもと違う。何かあったのか?」
「…いえ、何もございませぬ」
凄い怪しまれている。でも言えない。首が落ちる。
こうして戦の間は毎晩酒を飲むから、脳卒中になったんじゃないか?呼ばれて酒を持っていく俺も俺か。こうやって今日の戦のことを振り返り、次に活かす為に弱点を埋める話や義について話す。
こんな当たり前なことが、あと何回出来るのか。俺には分からない。
とりあえず、今の月見酒を楽しむ事にしよう。
多分二ヶ月くらい過ぎました。
七尾城は相変わらずの沈黙。籠城戦って面倒だな。しかし、相手はやってくれやがりましたよ。もうこれ以上の嫌な戦いはないだろう。
「また一揆ですか…」
「今度は三ヶ所同時だそうだ」
景勝様は御身城様や景虎様、直江信綱殿などの家臣と共に評定です。
俺は外で実頼や久秀達と待機。いやー、出陣の準備でもするかな。
「じゃが三ヶ所同時ってあり得るのか?」
「誰かの策略ならな。…どうやら七尾城の長続連が、この一揆の裏で手を引いているらしい」
昨晩、景勝様と今までの一揆の事を話していたら、軒猿が知らせてくれた。そういや軒猿って名前無いのかな。誰も名前呼び合ってないような。
しかし七尾城の城主は、まだ幼児の畠山花王丸と聞いた。子どもに何て役をやらせるんだ。
「今度はどこの一揆を鎮圧しに行くんでしょう…」
「さあのう…」
二人とも嫌気がさしかけている。大きな戦じゃないし、こんなことで武功を挙げてもあまり良い気分じゃない。
長続連は援軍が来るまでの時間稼ぎの為に、農民を煽って一揆を起こさせたらしい。このままで七尾城を攻めても、農民に悔恨が残りかねない。
この七尾城の戦いの表向きの理由は『畠山氏によって乱れた領地を正すため』だ。貧困の原因は畠山のせい、と思っていればいい。問題はその後、新しい領主が行う政治が農民にどう作用するかだ。これでまだ貧困が続いたら、原因は上杉謙信になる。そうなればまた一揆が起こる。
「…なんだかなあ…」
謙信公の最大の敵は武田信玄じゃなくて、農民の一向一揆なんじゃないか?
今回は俺たちは待機だそうです。前回行ってきたからだって。
あ、あと俺の槍を新しくしてもらいました。七尾城の戦いでダメにしてから、今までずっと刀を使っていた。その刀は拾った物だから、元から刃こぼれがしていた。刀欲しい。
「うわあ…デケェ…」
「兄上、振れますか?」
「ああ」
身長は俺が上だが、弟の実頼の方が力がある。ただこの槍はだいぶ長い。だが思っていたよりは軽い。絶対現代っ子には振れないな。
「お前も作ってもらうか?」
「え!?いえ、わしにはこれがありますから!」
「そうか。まあ、なんなら貸すぞ。多分俺はすぐに槍を捨てて、この刀を使う」
「刀好きですね…では捨てられた槍はわしが回収しておきます」
「…毎回すまん。あと、ありがとうな」
「そう思うなら捨てないでください」
ですよね!
実際に前の槍は捨てたようなものだからな。敵に刺してから抜けなくなったし。何気に前の一揆で、他の奴から借りた槍も途中で手放したからな。実頼が拾ってくれていた。本当にすまん。そしてありがとう。
「槍は実頼に任せるかな…」
「兄上、諦めないでください。…今度褒賞に刀を貰ってはどうですか?」
「…そうだな。七尾城を攻める時に頑張るか」
刀は刀でも名刀が欲しい。まあ、名前持ちは無理だろうけど。織田信長も名刀を何振りか集めているらしいが、剣聖足利義輝は様々な名刀を所持しているとか。いいなあ。
またまた月日が経ちました。一向一揆がやっとこさ鎮圧した。本当に長かった!
まあ、折角だから首謀者を見つけて説得してきたよ。
「今回の一揆は長続連に煽られたんだろう?あの七尾城にいる奴らは皆、お前ら農民の事を微塵も考えちゃいない。ただの捨て駒としてしかな」
畠山氏に従うよりも上杉氏の方がいいと判断したようです。どうやら人質として農民を伏兵として集めているようだ。俺たちが突入したら、背後から攻める形になる。汚い。
まあ、そっちの方は農民達を説得しておいた。側にいる敵の足軽は、こっちで何とかする事になった。まあ、農民を嗾かけるだけだから油断しているだろうし。
あと柴田勝家はまだ時間がかかりそうです。鬼の居ぬ間に洗濯とはこの事だな。
俺はいつも通り景勝様の側にいますよ。でも後で先陣に行く予定。久秀と競争しているからな。絶対負けん。
おっと。どうやら出陣のようです。
目の前にあるのは熊木城。
場所とか殿様とか詳しくは知りません。知らなくてもいい。
これから無くなるんだからな!
「オオォォオオオオ!!」
凄い雄叫びと共に猛ダッシュ。鎧って重いな。後で必要なところだけ残して捨てよう。
「退けえッ!」
「邪魔だっ!」
うわあ…実頼が張り切っている。まあ、活躍したいんだろうな。これで武功を挙げてしまえば、景勝様の手助けになるかもしれない。久秀も特攻していくのが凄い。その勢いのままで敵を貫くとは…。俺ならあの槍は捨てるな、うん。
負けてられんな。そろそろ景勝様が来られる頃だし、さっさと道を開けておくか。
「オラァ!道を開けろぉッ!」
現代っ子の考えなんて捨ててしまえ。槍と共に。
「はあ、はあ…っ、はっ…!」
「っ、粗方、…はぁ、片付いたかのう…」
「はあ…っ、そ、そのようです」
おい、久秀と実頼。なぜすぐに息切れが回復するんだ。やっぱり、俺って戦国時代の身体に慣れていないのか?最初っから飛ばしていたのは同じのはずなんだがな。そして俺が捨てた槍は実頼が使っていた。実頼のはダメになったらしい。俺はそこらで拾った刀を使った。比較的綺麗なやつです。
しばらくして景勝様率いる陣が追いついて来ました。辺り一面は敵さんと俺たちと先陣組の血で真っ赤。あー、こうして見ると戦神に見えなくもない。夜叉でも可。
「首尾は?」
「順調でございます。敵の伏兵は全て退け、門前の敵兵も片付けました」
「後は本陣のみ、か」
そう、実は今回の城は七尾城を孤立させるための戦いだった。
それほど堅牢という訳でもないから、それぞれに分かれて潰すことにした。で、俺たちは熊木城。おそらく富木城とか他の城も落ちているだろう。これで七尾城はすぐに来る援軍や兵糧の供給等が、あっさりと断たれたわけで。これだと降伏しかなさそうに見える。
でもなー………教科書には七尾城の戦いなんて無かったし…。前も言ったけれど、織田信長と上杉謙信の戦いだったら教科書に載るはずだ。織田信長の勝敗がどっちにせよ、それは天下を統一する際に重要なことでもある。
勝てば天下人。負ければ第六天魔王。
その諦念に繋がる教科書は、今はないものだ。この後がどうなるか。
ねー聞いたー?
御身城様、越後に帰るってよ。
マジで!?
次は期末テストです




