勉強したら反省
テスト頑張ります
「【一向一揆】とは、一向宗に所属する信者達が、支配者に対して反抗し、引き起こす一揆のことである」
勉強なう。一向一揆ってそういう理由で起きたんだったっけ。すっかり忘れていた。危ない危ない。
いつの時代にも反乱は尽きないようだ。現代だとネット上で叩いたり訴えたりするけど、この時代にそんなものはないからな。農具とか、刀と言えるかも微妙な脇差とかを手に取って戦うとは…しかも相手は戦国大名。御身城様にはあまり無いだろうけど、北条氏への出兵が痛かった。あれを根に持っている奴がまだいるかもしれない。
「はい、三成先生」
「なんですか、与六さん」
「この越後では豊作であり、蓄えも豊富です。それなのにどうして起こるんですか?」
「一向宗の総本山、石山本願寺の顕如が呼び掛けたからとされています」
何しちゃってるんすか!顕如さん、貴方も僧侶の端くれならば死に行く人々のことを心配しろよ。罪も無い人々が自ら罪を作るとか…、南無阿弥陀で許されるから大丈夫って言ったのか?うわ、最低。罪悪感はそんなもので簡単には無くならないから、救われる人はごく僅かだろ。
「ちなみに、顕如が一揆を呼び掛けたのは織田信長への反抗です。織田信長は顕如にお金や、本願寺からの立ち退きを命令していました。それを断った顕如は信長を困らせる為に呼び掛けたとも言われています」
「…大阪城でも作ろうとしたのかな」
「かもな。まあ、こんな感じだ」
あれ?織田信長の方が悪くね?義があるのは顕如の方じゃね?
だとしたら謙信公が和睦したのも納得が出来る。…だとしてもこれは。
「謙信公って上洛中に死ぬんだっけ」
「上洛の前に厠で倒れたらしいぞ。ちなみに後継者は誰とも言っていないまま死んだ」
「うわあ…それって阻止出来ないのか?」
「この時代じゃあな…諦めるしかない」
マジかよ…。
「お前、どうするつもりだ?」
「え?」
「御舘の乱だよ。お前は勿論景勝側なんだろうけど、他は皆国人だぞ。外見と利益だけで動くだろうな」
そうだった。上杉って国人の集まりじゃないか。なんてこった。一番信じられないのが家臣達とか。上条家、山浦家、直江家あたりは景勝様につくだろうけど。長尾政景様に仕えていた家臣達も景勝様につくはずだ。
足りない。忍びはどうしよう。軒猿はどうだろう。…確か景虎様の命令を聞いていた忍びがいたな。……ヤバイ。
「三成、忍びが足りない!」
「え?家臣じゃなくて?」
「それは金に物を言わす。少なくとも直江家と本庄家は景勝様側につかせる。あと政景様に仕えていた家臣達は大丈夫だと思う」
「…そうか。で、忍びが信じられないと?」
「…大変申し訳ないけども」
だって忍びって金に正直なんだろう?いや、偏見かもしれないけど。
謙信公がもし、死ぬ寸前に景虎様だと言ってしまい、それを忍びに聞かれたら。間違いなく景虎の耳に入る。その後は北条氏を後ろ盾に後継者宣言をすればいいだけだ。親の七光りではあるが、その光は説得力を帯びている。
「…話してみたらどうだ?」
「え?殺される」
「即答!?いや、お前は謙信公の弟子なんだろう!?」
「そうだけど、それとこれとは別じゃないか?」
問答無用で殺されると思う。それが上杉の為って言われそう。
「お前な…『赤心ヲ推シテ人ノ腹中ニ置ク』って言うだろう」
「…………………それもそうか」
「間ぁ長くね!?」
こっちから信頼しないとダメ、か。景勝様に忠誠を誓わせてやる!
あ、あと伊達氏にも挨拶しに行こう。向こうには片倉小十郎がいるんだよね!
「よし!今夜聞きに行ってくる!」
「決断早っ!おい、無茶するなよ!」
「大丈夫だろう。為せば成る!」
「そうかよ…。あ、そうそう。虎と市松がまた手合わせしようって言っていたぞ」
「虎?」
聞き覚えがない人物。誰っすか?
「え?…あー、そういえば言っていなかったか…。昨年を持ちまして夜叉丸は元服し、加藤虎ノ介となりました」
「マジかよ!元服おめでとう!俺まだなのに!」
「お前はいつなんだろうな」
本当にいつだ!教科書にも資料集にも無かったし!…小説?読んでませんね。
あー…読めば良かった…。俺も元服したい。いつまでも子供は嫌だ。
「まあ良いや。どうせすぐだろうし」
「軽いなオイ」
「悩んでいたって分からないものは分からないしな。父上に言おうかな…」
「そうしたらどうだ?」
そーしましょそーしましょ。
今は伊達氏だ。今の当主である伊達輝政は北条氏につくだろう。だって友好関係を築いているし。織田信長にもだけど。
これじゃあ北条氏を抑えてもらう為の軍が足りない。寧ろ伊達を抑えてもらう軍も考えないと。
…そうだ。武田勝頼がいた。あ、でも北条氏と同盟組んでる。
「伊達政宗っていつ元服?」
「1582年」
「あらー…じゃあ無理か」
応援頼もうと思ったけど。若すぎるってことで出陣出来ないだろう。
でも片倉小十郎には会いたい。よし。
「…まあ、どうにかするよ。顕如のことはすまん」
「大丈夫だ。どうせ1580年には終わるしな」
「…一応、虎と市松と忠勝さんと万千代に手紙書くわ」
「おう」
そんなこんなで終わった作戦会議。
解決したのは忍びのみ。あるェ?
そろそろ帰ると言って出て行く三成を見送りに行く。他の人はいない。
「ここら辺でいい。…与六、忍びはどうするんだ?」
「俺だけで何とかする。景勝様に余計なご苦労は掛けたくないし」
「味方に出来るといいな」
「景虎様に忠誠を誓ってないと良いんだけどな、誓っていたらそれまで。俺が死んだら景虎様の命令で軒猿に暗殺されたってことで」
「死ぬなよ!?もしもの時は景勝様ごと織田に逃げてもいいよ!?俺が守るから!」
「あらやだ惚れる。でも景勝様は頼むわ」
この後、約束通り御身城様に修行されました。相変わらず厳しい!
その日の夜。景勝様に呼ばれて寝所に向かう。ついでに酒も持ってきた。とは言っても度数は低いもの。良酒だし、日本酒だから度数15%以上は絶対ありそうだけどな。
「失礼いたします」
「ああ、来たか」
なぜか景勝様は着替えていない。着替えを手伝えってことか?…あ、この顔は違うわ。じゃあ何?え、あの、何故刀を腰に?出掛ける準備万端に?
「出掛けるぞ」
やっぱりですか!この夜に!?
「ほら、早くしろ」
「え、はい!」
良かった!俺も出掛ける状態で来ておいて!
景勝様が散歩。しかも自ら。今まで俺が連れ出す形になっていたけど、行きたい所があったのかな?
ってあれ?
「あの、景勝様?」
「なんだ」
「私の目がおかしくなければ、ここは忍び小屋に見えますが…」
「そうだ。お前の目はおかしくない」
なんでここ!?
俺の動揺を意に介さずに、とっとと入っていく景勝様に慌てて続いた。そこには見覚えのある男達が三人。え、なにこれ。
「軒猿の頭首と上忍二人だ」
「え?」
なんでここに?謙信公の護衛とかは?
とか考えていたら、三人に急に頭を下げられた。え?なにこれ。
「昼間の話、お聞きしました」
「……え?」
昼間。昼間って言ったよな。
………………え?
まさか、三成と密談したこと?え、聞かれたらマズイ話をしていたぞ。マジでヤバイんじゃあ……。
「御身城様と景勝様に、お二人の護衛をするようにと、お見送りの際に」
「…え、景勝様?」
「ああ」
ワァオ。なんてこったい。
でも見送りの際ってことは、部屋での話は聞かれてないんだな。良かった!未来の話をバンバン話してたし!
「お前が忍びに不信感を抱いていると聞いてな。与六、安心するが良い。此奴ら軒猿は、上杉の忍び。北条につくことは決してない」
「はっ。我ら一族全員、御身城様と景勝様に忠誠を誓っております」
……恥ずかしい。こんなに尽くしてくれている奴らを、俺と同じように景勝様と上杉家に尽くしている奴らを疑っていたなんて。
とりあえず土下座しよう。…うわあ、なんか凄い慌ててる。俺は景勝様のただの小姓なのに、そんなに慌てなくていいのに。
「本当にすまん!俺はとんだ勘違いをした!」
「え、あの、頭をお上げください!我ら忍び如きに頭を下げるなど…!」
「いーや!お前らは確かに忍びだが、同じ人間で、俺と同じように上杉家に尽くしている者達だ。景勝様に忠誠を誓っているお前らを、俺は一方的な偏見で疑っていた。これは完全に俺の不義。本当にすまん!」
マジでごめん。本当に偏見というか、差別ってダメだよね。忍びが金で動くとか、薄情者扱いしてたわ。俺は最低だ。前世でどれだけ人権同和教育を受けたんだ。何も学んでいないじゃないか。
俺が自責の念に苛まれている最中、景勝様が突然笑った。え?何で?
忍び達が吃驚している。表情には出てないけど、何となく分かる。
「与六、お前は儂を上杉家次期当主にする為によく働いてくれる。儂に家臣達の元を回るようにと言ったのもそういう訳だろう」
「…バレていましたか」
「お前は分かりやすいからな。おかげで越後だけでなく、他の地理まで覚えてしまった。いつでも有利に戦えるぞ」
国絵図ってのは越後ver. もあるけど、話を聞いていたら他の国のも作ってしまったのだ。三成から聞いた話から、西国の方も描いている。最近はさぼっているけど。
「儂は確かに景虎に劣っている。だが、儂には側にお前や家臣達がおる。何があっても負ける気はせん」
「景勝様…」
懐かしい長文です。久しぶりに景勝様の長い台詞を聞いた気がする。俺たち小姓を口説いた時以来じゃないか?
「与六、これからも頼むぞ。お主達軒猿も、これからも上杉家に尽くしてくれ」
「…ははっ!」
「勿体無きお言葉にございます!」
…そういえばこの時代って忍びは日陰者だったっけ。だから忍び如きに、とか自分達を卑下していたのか。情報は大切なのに。忍びがいないと夜も眠れないくせに、大名達は何をしているんだか。…だとしたら有名な猿飛佐助、霧隠才蔵、加藤段蔵、風魔小太郎とかは何で名を残したんだろう。あれ?…ま、いっか。
「与六、お前は本当に気が効く者だな」
「?…ああ、これですか」
そのまま持ってきてしまった酒。何で置いてこなかったんだろうね。杯は全部置いて来ちゃったのに。
「おい。杯を持って来い」
「はっ」
脇に控えていた上忍の一人が取りに行った。忍びなのに小姓みたいな真似をさせてしまった。…俺の仕事が盗られた。
その後は酒盛りをしました。景勝様は二つしか持って来なかった軒猿を叱って、杯を五個持って来させたよ。忍びと杯を交わす人ってあまりいないんじゃないかな。
やっぱり景勝様は御身城様の血を引いているよ、うん。
「なんじゃ?まだ飲めるじゃろう」
「…もう無理です」
度数が弱かったからか、全然酔っていなかったけど。やっぱり強いね!
模試とテスト勉強に凸します!




