その234 最強の過去の断片
黒猫はあのゲームの世界で生まれた。
リアルに限り無く近く、しかしチートやバグやハッカー達が蔓延る狂った世界。
なんの事前情報も持たない初心者が最初にログインしても、チュートリアルですら生き残るのが難しいと言われるそんな世界で黒猫は生まれ育った。
そこでは黒猫に名は無かった。故にナナシと自分を呼ぶように。そしてそこでナナシは㤅に言われるがまま他者からデリートされない様にナナシ専用のシークレットルームで隠れて生きてきた。
しかし世界の広さに興味が沸いたナナシは㤅に黙ってシークレットルームから出た。
そして間も無くしてチーターやハッカーに襲われる。
しかしナナシはこれを返り討ちにし撃退。
ゲームの世界ではデリートされればコンテニューが普通だ。やり直しなんて何度だって出来る。飽きたら辞めるだけ。
しかしナナシにとって、この世界のデリートは死に直結する。やり直しなんて無い。辞めるなんて以ての外。
命懸けで来る敵来る敵を迎撃する毎日、そんな日々にある転機が。
羽柴と呼ばれる女性プレイヤーとの出会い。その羽柴と呼ばれる女性プレイヤーは、ナナシをチーターやハッカーから助けてくれた。
砂上の楽園と呼ばれる砂漠に1人でいる彼女は何やら悲しい表情をして何かを待っていた。
ナナシはそんな彼女に惹かれたのか、時折会いに行っては彼女と他愛ない事を話す仲に。
何時しかその場所がシークレットルームとは別のナナシのもう1つの居場所となっていた。
しかし、そんな日々も長くは続かなかった……
「……返してもらうぞ。大切な友人の思い出を」
ナナシの噂を聞き付けた連中がチーターやハッカーで同盟を募り、まるで1つの大規模なイベントの様に
ナナシを狩る為に集まった。
地形のデータにハックする者、座標バグで当たり判定を無効にする者、当たれば一撃で死ぬ無限追尾機能付きレーザー光線のチートを使う者。何でもありで寧ろ何が無いのか分からない程の卑怯で卑劣な力との応襲。
そこでプレイヤーの頂点とされる【1桁ランカー】。全ゲームプレイヤーの憧れでもあり誉れでもあり、畏怖され尊敬され怪物だと呼ばれる者達が徒党を組み参戦してくる。
常に敵対同士でチームワークなぞ皆無と思われる1桁ランカー達は、そんな周りの考えをひっくり返す様に、まるで1つの生物だと思わせる様な阿吽の呼吸を超えた連携を行いナナシを追い詰める。
中には天啓を使う者もいた。
普通なら勝てない。何故なら、それは上下左右分からない状態で常に高速で回転して瞬間移動をしながら幾つもの未来を演算で導き出し常に最適解を選びつつ針に糸を通すような芸当を強いられるからだ。
攻撃は絶対に当たる。こちらの攻撃はほぼ届かない。全ての攻撃に一撃死を付与されているので無効化する対策を施しておかなければならない。しかし相手がデータ改竄を常にしてくるので、1秒ごとに対策として凡ゆるデータ内容にハッキングしながらデータを変え続けなければならない。油断すればかすり傷どころかパンチしてきた風の流れで死んでしまう。
【1桁ランカー】が全員揃っている訳ではない。2人ほど参加していなかった。
それでも7人もいればそれは、どんな相手だろうと惑星規模の要塞で木の棒を持つ原始人を蹂躙するのとほぼ同義の戦力差が生まれる。
圧倒的力の集合体にナナシはたった一人で立ち向かい
そして
勝利を収めた。




