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233/234

その233 観測者のメンバー達

3人の人物が黒猫の映っているモニターを見ていた。


それは観測者だけが見る事の出来る映像。ここでその一部始終を覗き見ていたという事実は、観測者達かその協力者だという証明。


その内の1人が、映像が切れると直ぐに聞きたい事をメンバーに尋ねる。


「……協力はしたんだ。そろそろ教えて貰おうか。あの子は一体何なんだ?」


最近観測者の一人として加入した人物である天河は、腕を組みながら2人の人物を睨み付ける。


「チェ、あたいもあれの詳しい情報は知らない。研磨で猛威を奮ってたって事ぐらいだ。教えろ」


天河の前にいたのはゲバラだった。ゲバラもまた天河と同じくある人物について疑問を投げ掛けていた。


その問いに答えるように、【始まりの村落】に居るはずの白い鎧を身に纏ったNNが口を開く。


「あれは……そうですね……例えるなら、隠しボスに見せかけた絶対に倒せないプログラムってとこですかね」


「何だそりゃ?」


「ゲームでボスが現れるとします。そのボスがもし倒せない仕様だとして、しかしそれが倒せるか倒せないか分からない時、初見で勝てないと判断する判断材料は?」


「負けゲーって事か?うーん……攻撃が当たらない、もしくはダメージが入らない、あとは……一撃で死んでしまう、とか?」


「概ね正解です。そしてその条件に集約されるのは理不尽さ。中には時間が表示されて時間制限まで逃げ続ける等の分かりやすいパターンもありますが、大体理不尽だと感じた時点で皆はこれを勝てないボス、負けても仕方がないボスだと判断するでしょう」


「それが何だってんだ?」


「無いんですよ。あれには。初見で勝てないと判断する材料が。故にタチが悪い」


「チェ、まどろっこしい。つまりどういう事だよ?」


「あれはダメージを受ける、HPもある、攻撃もこちらが理不尽に殺られる程のダメージを負わされる事が最初の内は無い」


「覚醒前の話か?」


「覚醒した後の話です。いや、覚醒というもの少し違いますね。元に戻った時というのが正しい。元に戻る前の本庄継実の容姿ならその辺のラッキーモンスターでもあれは倒せますよ」


「攻撃力0のモンスターでも倒されるのは流石に笑うな。転んで死んでしまう位だから有り得るか。しかしまぁ、覚醒後は全然倒せる風には見えなかったが」


「実際に刃を交えたら分かりますよ。とてつもなく強いと思うが勝てない事はない。勝てるかもしれないと微かな思いが芽生える。だからこそ思い知る。ダメージは入る。致命傷も負わされない。しかし黒猫にダメージを与えても、HPが削りきれないという事実に」


「ライトは攻撃当てる前に全部避けられたり受けられてたけどな」


「そう、まずダメージを与える前に攻撃を当てる事が難しいのも倒せるか倒せないか分かりにくい要因ですね。信じられない反応速度で攻撃を避けられる。その反応速度は0.1秒なんて可能性がある速さではなく全く同時。誤差が無い反応速度。上回るなら未来を読んで攻撃を放った場所に黒猫を誘導して攻撃を当てるしかない」


「何だその無理ゲー?」


「同じ反応速度なんて、攻撃が来ると分かってないとそんな芸当出来ないだろ。ゲームのコントローラーですら押してから反応するまでほんの少しのラグがあるのに」


「そうですね。大前提で人間では無いですからね。反応速度に関してはスーパーコンピューター宝樹を経由してるせいもあります」


「宝樹ってあの小惑星のか?よく回線を繋げられたな」


「凄腕のハッカーなら皆見付からずに陰で利用していますよ。そこの犯罪者も使っています」


「誰が犯罪者だコラァ?チェ」


「なぁ、疑問なんだが、あの子があんなに強いなら別に武器を切り替えて戦う必要無くないか?ライトとの勝負の時やたらと武器を切り替えてたが、素手で十分だろ?」


「武器の切り替えは研磨の時の名残りでしょうね。いくら攻撃が当たりにくいとは言っても、ハッカー、チーター、ランカー達は攻撃を普通に当ててきました。そしてそのほとんどは攻撃が当たらないチートや防御に絶対的な対策を施していた。だからそれぞれに対応した武器の切り替えが必要だった」


「知ってるよ。ランカーは当たり前の様に公式チートアイテムとか、グリッチやシステムハックなんかで無敵やら座標バグやらでガード固めてた奴ばっかりだったって」


「そうです。その経験が黒猫にダメージを負ったら直ぐ様回復して武器を切り替えて対応、対策を取ってくるという行為に繋がっている。後出しジャンケンの様に。それがあの世界で黒猫が生き残る最善の戦法だった。それ故黒猫に挑む側が有利になる事はない。そして時間を掛け過ぎたら勝機なんてもう無い。その理由は対策もそうですが、最終的にステータスが時間経過で限界突破する程上昇させるある能力のせい。貴方々なら分かりますね?」


「……ああ、身内のせいで痛い程分かるよ」


「あん?……ああ、天啓ってやつか。うん?待てよ……ダメージ喰らうなら最初の一撃で沈めりゃいいじゃねーか。チェ、これならどんなに強くても天啓があろうと関係ない。どこが絶対勝てないだ?不意打ちの初撃で終わりだ。首を狙ってな。あたいならそうする」


「それが出来たらもうとっくの昔に黒猫は消滅してますよ。あれにこの世界の常識は通用しません。復活のインターバルのない一撃死は無効化されています。それは黒猫側も同じですがね。何より黒猫が倒せない最も大きな要因、それは黒猫が身体に羽柴の天啓を常に纏っているという事。これに尽きます。イレギュラーを直す天啓。黒猫のは羽柴のオリジナルと少し違って強化されているみたいですが、そのせいでどんな攻撃も強化攻撃もチート攻撃もバグ攻撃も素の力が凄い攻撃も、よくて黒猫と同レベルにさせられる。超える事は出来ない。そして黒猫はチート級装備アイテムを、自身が無限と呼ぶ力で必要以上に装備し防御力を固めてる。不意打ち対策も然り。目には見えない絶対防御」


「なるほどな。同じレベルに立たされてる上に不意打ち、一撃死を成功させるのは至難の業って訳か。なら物量攻撃で状態異常とかにしたり、弱体化するような特殊攻撃ならいけるだろ?避けられない範囲攻撃とか」


「それすら纏っている羽柴の天啓で防がれる。当たる、ダメージは通る、しかし、決定打には決してならない。とっておきは黒猫自身の命を消費して時間経過で能力値が上昇する天啓。その力で能力値に差が開いてしまったらもう終わりなのです」


「チェ、なら自身を強化したらいい。お前みたいに強化した最初の一撃で沈めれば」


「さっきも言ったでしょう。自身を強化したら黒猫が持っている羽柴の天啓の上位互換で全て解除される。強化した時点でイレギュラー判定とみなされ対処されるのです。故に強化は意味をなさない。黒猫より強くなる事が出来ない。だから早い話が勝てない。勝つには宝樹経由の処理能力に多大な負荷を掛けてラグを発生させ、一桁ランカー達のやったような化け物じみた戦い方をするしかない。とは言ってもあの時は黒猫自身の天啓は発現してなかったからこそ、あそこまで黒猫を追い詰められる事が出来たのでしょう。今の黒猫に弱点はない。強いて言うなら黒猫が本気になって消滅するまでの3分間逃げ果せて自滅を待つというのが1番可能性があるでしょう。しかし、黒猫の個々のデータをハッキングして何処にいるか直ぐに把握出来る探知力を掻い潜る自信があれば、ですが」


「逃げられない敵にそれは無理だって言ってるようなもんだな」


「ならよ。瞬間移動の使えない現実世界に引っ張り出して自滅までの時間逃げたり、あいつ自身をブラックホールみたいなのに吸い込ませれば勝てんじゃね?ワームホールの研究でブラックホールの生成が可能だって聞いた事あるぞ?」


「あのニュースは半分フェイクらしいぞ。だけど、倒す方法を考えるだけってなら亜空間に飛ばすとかは効きそうだな」


「SFみたいな話を引っ張り出してきましたね。急にリアリティが遠退きましたが、仮に出来たと仮定した話で言うと、天啓の力はゲームだけでなくリアルにも影響がでる超能力だって事は前にお話しましたよね?亜空間やブラックホールに飛ばしても無理矢理突破してくるのがオチですよ。黒猫はゲームの世界を除いても全ての事柄に干渉できる。ブラックホールも消されるでしょう。カサンドラがいい例だ。貴方の姉は天啓の力で世界すら自分の思うままに動かした。さらに戯れでランカー1位の座を欲しいままにしていました。望む事全てを叶える、言うなれば現世に降り立った神に近しい存在カサンドラ。そんな彼女が1桁ランカー達と組んだにも関わらず黒猫1人に負けたんです。現実だろうとゲームの世界であろうと勝てる未来はない」


「カサンドラってお前の姉だったのか?お前の姉の天啓ってどういう能力だったんだ?」


「未来予知……は控えめに言い過ぎか。あのろくでなしは自分の望む未来を必ず手に入れられる能力。その見返りに他者の未来を潰す。それが俺の姉、カサンドラの能力の全てだ」


「意味分かんねーな。天啓には必ずデメリットがあるって聞いてたが、デメリットがデメリットしてねーじゃん。なんだ他者の未来を潰すって?」


「他者の成功する未来を糧にしてあいつは自分の幸せを手にする。証明しようがないが、それも当然だ。その未来が無くなるんだからな」


「なんでんな事分かんだよ?そもそもどうやって分かったんだ?」


「姉がテレビを観ながら言ったんだ『こいつは絶対未来で成功する。気に入らないからこの男の未来を摘み取って私がこいつの全てを手に入れる未来でも手にしようか。暇潰しにな』って。そしたら、そのテレビの男は不運と言わんばかりの出来事を連続で受けて何もかも失っていった。最後にはその命さえも。そして姉は望む未来を手に入れたんだ。正直鳥肌が立ったよ」


「それが事実ならお前の姉貴ろくでもねえカスだな」


「ああ、知った人間からすれば憎まれて殺されてもおかしくない奴さ。あのろくでなしは言ってた。『未来とはその人物を創り出す全て。夢、希望、財、愛、幸福、人格、人生、全ては未来があるからこそ成り立つ。未来を奪えばどうなるかなんて分かるだろ。存在を奪うに等しいのさ。だから私はこの世界で唯一無二の絶対的な神なんだ。誰も私の世界を侵せない。私だけがお前らの世界を侵す事が許されている。分かったか愚弟』って」


「姉弟仲悪いのは分かったわ。要するに自分の好きな未来を手に入れて、他者を殺す天啓か」


「ああ、だが、実際には考えているよりもっと多くの人間の未来が変わってるだろうな。何人が不幸になっているか分からない。どれ程大勢の人間を不幸にしたのか分かってない。自分以外に興味が無いから分かろうともしない。分かる必要がない。そうやって今ものうのうと生きてる奴さ」


「チェ、聞けば聞くほどカスクズ女だな」


「それ程の力を持ってしてもカサンドラは勝てなかった。数多ある未来の中で、カサンドラは黒猫を倒す未来を手に入れようとした。しかし、そんな未来は無かった。だから負けた」


「だが、黒猫は研磨で一回死んだんだろ?最後に残ったクソガキにやられたとか、もっぱらの噂だぞ?」


「それは宝くじに当たるよりも低い確率の不運が重なってしまった事が要因ですね。今思えば、それがカサンドラが唯一得た未来だったのかもしれませんね」


「理不尽だと感じる時にはもう後には引けない存在。強さが隠しボスと思わせる。だから絶対勝てないプログラムか」


「隠しボスだとして、まだ答えを教えて貰ってねーぞ。力は分かった。だがあの存在は何なんだ。何であんなのが生まれた?」


「子供を蘇らせようとした産物。いや、人間を創り出そうとして失敗した哀れな存在」


「そして」


「私に無いものを全て持っている存在」


「「!?」」


そう言ってNNは兜を脱ぎ、その顔を見て2人は驚愕した。

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