その198 終点は花が咲いていた
「のじゃ!のじゃ!のじゃ!」
黒猫は小枝が生い茂り、狭い小道の様な場所を突き進む。少しでも追い掛けてくる魔法を小枝にぶつけて巻こうという算段だ。
しかし目標に当たるまで消えない役職の効果が乗った魔法を巻ける訳がない。辛うじてライのお陰で相手の魔法速度が遅なり、森の中という地の利で何とかなっているが、それも時間の問題だった。
ゴムボールの様にバウンドしながら黒猫目掛けて徐々に近付いてくる魔法の数々。
まともに当たれば死。掠っても死。防ぎ方次第だが今の黒猫では防いでも死に直結。
「のじゃああああああ!!」
大声を上げながら黒猫は森の中を走り抜ける。
そしてとうとうその時が来た。
障害物の全く無い、花が咲き乱れる広場に出てしまったのだ。
もうスピードで逃げ切る事は不可能。
ここが終点だった。
「しまったのじゃ……」
逃げるのを諦め、ただ呆然と立ち尽くす黒猫。
「…………のじゃ?」
しかし、いつまでも経っても魔法が黒猫に当たる様子がない。
黒猫は後ろを振り返るが魔法は森から出てくる様子もない。そして不意に辺りを見渡す。
そして自分がいる場所がどこか理解する。
「花畑……ここは……実装されなかったエリアかの。また偶然辿り着いたのじゃ」
前に、寝ていた棄世と出会った特殊なエリア。ある手順を踏まないと来れない、まさにバグで来れるような隠しエリア。
黒猫は偶然ここに辿り着く事で、追ってきていた魔法を巻くことが出来たのだ。
魔法ではその手順をクリア出来なかった。だからこの場所に追ってきていた魔法は現れない。
だが
「…………ふひ……ひひひひひひ……ど、どうして……かなぁ……どうして……こ、こうなるの……かなぁ……いひひひひひひ……」
そこでは棄世が待ち構えていた。