仮想世界は楽しむ所なのじゃ

VRMMORPG《始まりの楽園》

現実世界に限りなく近いゲームの世界で1500万人の人々が現実世界に戻れずゲームの世界に囚われた。

抜け出すにはゲームをクリアするしかない。

そんな世界の話は、世界から抜け出す為に奮闘する主人公ではなく、とある2人組に焦点が当てられる。

コノルと呼ばれる至って平凡で何処にでもいるごく普通の女子高生と、黒猫と呼ばれるポンコツここに極まれりなコノルと同い歳位の金髪の女の子。

2人はゲームの世界を抜け出す為に苦労する訳でもなく、黒幕を追うという事を考える事もなく、強くなる為に修行をするという訳でもなく、特別な環境でも特別な力がある訳でもなくただ平々凡々に、勝手気ままにその日を死なない様に過ごすだけ。

これがゲームの世界でなければ、代わり映えもない普通過ぎる生活を送るだけのつまらないお話だ。

しかし、コノルの連れている黒猫が普通では無かった。

ラッキーモンスター(攻撃力0)に殺られたり、転んだだけで死んだり、大勢の人が乗っている船を沈めたり、NPCの村を焼き払って消滅させたり、世界を解放へと導く攻略組の本拠地の屋敷を燃やしたり、界ボスと呼ばれるボスの討伐を邪魔したり、PvPの勝負で蹴られただけで負けたりと、とにかく破滅的ポンコツ具合を発揮する黒猫。

そんな黒猫の正体は、《始まりの楽園》が発売される前の《始まりの楽園》の基盤となるゲーム《Sword & magic fantasy online》で最強と名を馳せたナナシと呼ばれる銀髪の猫耳をした少年だった。

この話は、今や見る影もない哀れなクソザコ黒猫と、ゲームに囚われるという異常な日常を普通の日常として謳歌するコノルとの、主人公になれない脇役ライフを愉快痛快に過ごす、そんなお話。