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192/231

その192 解放されたのじゃあああああ!!!

 それは魔法の詠唱だった。


 黒猫の頭の上に出ていたカウントは無くなり、身体の傷は消え、体力は完全回復した。


 そしてゆっくり目を開け起き上がり、声の聞こえた方を見る。


 その方向には何も無い。しかし見ていると次第に空間が人型に歪み、そこに黒猫のよく知る人物が現れる。


「何やってるんだお!もう少しでネココが死ぬところだったお!死んだらどうするつもりだったんだお!もっと早く言って欲しかったお!!二イチャ!!」


 目の前に激怒しながら現れたその詠唱者は、黒猫の隊のリーダーであるフゥとライだった。


 フゥは頭の上にいる小さな虎のヌイグルミであるライに向かって怒声を上げていた。


 ライはその怒声に答える。


「大きな声を出すなフゥ。敵に聞こえたらどうする。それにしょうがないだろ?俺だってギルマスの指示で動いてるんだ。文句ならギルマスに言いな」


「そうやってすぐマスマスのせいにするの良くないお!二イチャは操り人形じゃないお!自分で考えて動けるお!」


「だが俺が動くにはフゥの身体が必要だ。それにフゥだって黒猫が危ないなんて知らなかったろ?お互い様だ。それに今は間に合った事を喜ぶべきだ。人を責めてばかりじゃなくポジティブにいかないと、だろ?フゥの悪い癖だ。なおしたほうがいいぞ」


「……二イチャ嫌い」


 正論を言われてフゥは拗ねる様に口を膨れさせる。


「たく……拗ねるなよフゥ。悪かった。言い過ぎたよ。今度から気を付ける。黒猫。大丈夫か?」


 やれやれといった様子でフゥを後にし、虎のヌイグルミであるライはフゥの頭の上から黒猫の方を見る。


「風神雷神の金剛石?相変わらず名前が長いのじゃ。改名するのじゃ!!」


「今その事はどうだって良いだろ。略せよ。律儀にフルネームで呼ぶなよ。たく……死に掛けた癖に元気だな。それだけ吠えれりゃ大丈夫か。フゥ。少し身体を変わってくれ」


「やだお」


「頼むフゥ。兄ちゃんからのお願いだ。黒猫とコノルの為だと思って、な?」


「…………仕方ないお。手短に済ませるお」


「悪いな。暫く休んでてくれフゥ」


「またあとで話すおネココ〜」


「うむ。ゆっくり目を休めるのじゃ」


 フゥが目を閉じるとフゥの身体が徐々にライの身体へと変化する。相変わらず変な着ぐるみの姿のままツインテールからポニーテールへと髪型と性別が変わる。


「さて、時間もない。手短に言うぞ。潜入は中止。事情が変わった」


「やったのじゃあああああああああああああ!!!」


 ライのその言葉を聞いた瞬間、黒猫は歓喜の声を上げる。


 漸くこの地獄から解放され、コノルとの日常が帰ってくると思ったのだ。


 しかし黒猫はまだ釈放された訳ではなく秘密裏に脱獄している訳だからコノルとの日常はまだ当分帰ってこない。


 そんな黒猫の心中を察しているライは哀れみの目を向けながら話を続ける。


「フゥに負けず劣らず声デケェな……静かに出来ねぇのか?あと、上げて落とすみたいになって悪いが喜んでられないぞ。今外は大変な事になってる」


「のじゃ」


 喜びの歓声を上げたと思えば今度は真顔でライの話を聞く姿勢になる黒猫。解放されたら後はどうでもいいといった様子が見え見えである。


「感情の起伏が激しいな。少しは興味持てよ。仕事はまだ終わってないからな?引き続きちゃんと聞け。大変な事ってのは、あのゲバラがとうとう【Re:ペア】を動かした。奴等はどうやったか知らねぇが、レイドボスを10体召喚して【希望の星】の本拠地を攻撃しに掛かろうとしてる」


「のじゃ」


「事態は緊張状態だ。場所は『始まりの村落』。それが【希望の星】の本拠地だ。運営から特別に設けられた【希望の星】専用のギルドフィールド。特殊ギルドキーってアイテムをポータルで使わないと行けないフィールド界だ。聞いた事あるだろ?」


「ないのじゃ」


「そうか。まぁお前には関係ないから知らなくても問題無いが、その『始まりの村落』はレイドボスに囲まれてる。って事は村落に残ってる人が危ないのは想像できるな?そこで俺達のギルド【夢完進】も【希望の星】に協力してレイドボスの撃退を行う事になった。英雄ライトも手練も皆出払ってて人手が足りないって理由でな」


「のじゃ……ん?何故ライトはおらん?他のギルドは?助けに行かんのかの?」


「珍しく察しがいいな。そこだ。ライトとその他のメンバーは【Re:ペア】の罠に嵌って連絡の取れないダンジョンにいる。更に他のギルドも問題ありときた。【赤壁旅団】は他のブラックギルドの攻撃を受けて行動を制限されてる。【緑の聖母】は絶賛内部抗争中で手を貸す所じゃない。他は大手ギルドが揃ってこんなだから、ビビっちまってな。隠れて事なきを得ようとして見て見ぬ振りだ。必要なのは【希望の星】じゃなくライトやその他のスキル持ち個人って考えなんだろう。村落に残ってるのは力の無い弱者だけだから自分達が無理して助けに行く必要は無いって判断したんだ。【大鷲】だけは積極的に手を貸しに来てるが、そもそもあのギルドは少数精鋭だからあまり期待出来ない」


「少数精鋭はわしらもじゃろ。そうかの……切り捨てたのじゃな」


「まぁな。だからこそ俺達も借り出された訳だ。猫の手も借りたいって気持ちだったんだろうな。だが、NNが了承して全員出るからには全力で行く。ギルド総出の初戦闘だ。園田はやる気0だが、血死涼は気合い入れてメイン武器を幾つか引っ張り出して準備してるよ。関係ないが、お前、血死涼の武器盗んでないだろうな?盗んでたらここでバレるぞ」


「のじゃ。『蒼天シリーズ』の弓と『天下シリーズ』のハンマーを借りたのじゃ」


「黙ってか?」


「黙ってじゃ」


「それを盗むって言うんだ。使えないのに何で盗む?血死涼にまた血祭りにされても知らねーぞ?ただでさえあいつはお前に…………まぁいい。で、話は脱線したがお前にはここからが本題になる。さっき以上によく聞け」


「のじゃ」


「コノルが囚われの身になった」


「のじゃ…………………………のじゃ!!?」


 まさかの発言に黒猫は思わず驚愕の声を上げた。

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