その189 拷問になってない……
そんなやり取りから早数週間。
黒猫は毎日決まった時間に暴力を振るわれながら毎日を拷問部屋で過ごす事になっていた。
出る事は許されず、実質監禁の日々。暴力を振るうのは、勿論監禁を命じたブルーハート、だけではなく命令された射場ザキやリョウケンや羽崎が毎日日替わりで黒猫をありとあらゆる手段で痛め付けていた。
毎日レッドゲージになり、床に這いつくばりながら過ごす黒猫。死にかけたら少量の体力回復アイテムを口へと押し込まれて回復させてまた暴力。
暴力が終わると回復アイテムの食糧を詰め込まれ放置され、また決まった時間に暴力を振るわれる。
まさに生地獄の様な生活を強いられていた。
そんな黒猫は
「今日はまた不味いご飯だったのじゃ」
レッドゲージになる度に与えられる回復アイテム、つまり食糧系の回復アイテムを毎日の楽しみにして日々を過ごしていた。
普通だったら心が折れるが、黒猫はレッドゲージになる度に気を失って暴力を振るわれた時の事を忘れてしまうので、実質ノーダメージなのだ。
目が覚めると、いつの間にか口の中に食糧が詰められているので、これはラッキーと言わんばかりに咀嚼して飲み込み、食べ物の有難みを毎日味わうという、頭幸せな日々を過ごす黒猫。
最初は手をもがれたり、指を1本ずつ切断されたり、腸を抉られたりする様な仕様外の方法で拷問される予定だったが、いざブルーハートが仕様外の方法を取ろうとすると、黒猫にエラー表示が出て出来なかった為、ブルーハートは諦めて暴力だけにしたのだが、それがまた逆に黒猫を喜ばせる事になっていた。
そんな事になっているとは夢にも思ってないメンバーは未だに黒猫を苦しめていると思いながら痛め付けている。
その度に忘れる
↓
食べ物美味し
↓
痛いのじゃあああ!?……気絶……
↓
忘れる
↓
食べ物美味し
↓
痛いのじゃあああ!?……気絶……
こうした幸せスパイラルを決めていた。
何の拷問だ?いや拷問だったわ。
そんなある日、自体は大きく動き出す。
ガチャッ
拷問部屋の扉が開く音が部屋の中に鳴り響く。
「のじゃ?ご飯かの?」
普通にまた拷問だろ。そんな可能性が一切頭に浮かばない呑気な黒猫は階段から降りてくる足音の方に目を向けると、そこにいたのは棄世だった。
「……」
「のじゃ?お主かの。何の用じゃ?ご飯かぁ?」
「……」
棄世は何か言いたげにモジモジしながら下を向く。
「……」
そして棄世は何も言わず元来た道を引き返していった。
「???」
そんな棄世の奇妙な行動に首を傾げる黒猫。
「何がしたかったのじゃ?それにしても腹が減ったのじゃ……」
ぶつくさとそんな独り言を口にしていると、再びドアが開く音が聞こえる。
ガチャッ
「のじゃ?今度こそご飯かぁ〜?」
期待を胸に抱き階段から降りてくる人物の方に目を向けると、そこにはブルーハートがいた。