その185 思ってたのと違うからやり甲斐を見出そう
一方コノルは屋敷の外で倒れている人達を手当り次第蘇生していた。
「はい。【無限神札】」
「うおおおおおお!ありがとうございます!心の友よおおお!」
「え?あ、はい」
無駄にテンションの高い一般人Aを蘇生して次の場所へと急ぐ超テンションの低いコノル。
「なんだかなぁ……なんか……思ってたのと違う」
蘇生する為に見回っているのに何が違うというのか。
そもそも猫さん見つける為の見回りな筈だったのに何で私はこんな所で猫さん用のアイテムを使いまくってるの?別に他の人を蘇生させるのは全然良いんだけど。うーん……猫さんは私を信頼してこれ渡してくれてるから……何だか段々猫さんに悪い気がして乗り気が…………ヨシ!回復させたらその活躍を後で広めて報酬を貰おう!じゃないと達成感も無いし。そしてその報酬で猫さんと一緒に美味しい料理を食べる!なら少しはやる気が出るし罪悪感も無い!これね!
謎の達成感の無さに、やり甲斐を見出そうと思ってるズレた思考のコノルは引き続き怠そうに蘇生して回る。
やり甲斐を見出してもこれである。態度にも出て欲しいものだ。
「とは言え、何でこんなに屋敷の周りで死んでるのよ?ダウンするなら燃え盛ってる屋敷の中じゃない普通。まぁ屋敷の中なら諦めるしかないけど。【無限神札】」
「おお!危なかった!危ないところをありがとうございます!いやー!火から逃れる為に3階から飛び降りたら死んでしまって!面目ない」
あ、そういう事ね。
理由が分かった所でコノルは安心する。
リアルと違ってこのゲームの世界では炎に巻かれて死んだり、煙で一酸化炭素中毒によって死んだりする事は無い。だから外に飛び降りた方が何百倍も助かる確率が高いのだから、自殺したい人はともかくとして、助かりたい人は全員外へと飛び降りる。ダメージは受けるが首さえ折るような落ち方をしない限り600秒のインターバルが出来るのだから、普通はそこに賭けるだろう。だから少なくとも中で倒れているプレイヤーは少ないのだ。
「死ななくて本当に良かったですね。では」
そう言って早々に立ち去ろうとするコノル。
しかし蘇生させた一般人Bがコノルの腕を掴んで引き止める。
ガシッ!
え?何?痛いんだけど?
少し乱暴に引き止められてコノルは少し困惑した目を向ける。
「そう言えば!僕がさっき倒れてる時、怪しい人物がここを通っていきました!それも凄い形相で!あれは恐らく放火の主犯です!」
一般人Bはそう言ってコノルに怪しい人物の情報を伝える。
だから何?追い掛けて倒せって事?無茶言うな。
コノルは呆れた様な目を一般人Bに向ける。
そんな危険人物が通ったと聞いたところで、自分に何を期待しているのか?そもそも蘇生して回っているだけの人間がそんな危険人物をどうこう出来るわけないだろう。
フル無視一択。聞かなかった事に。
そう脳内で完結させるコノル。
しかし、何を思ったのか、何か引っ掛かり、コノルはここで再び一考する。
待てよ……放火の主犯……しかも言い方からして1人……凄い形相で通った……逃げていたって事かな?何から?……もしかしてタイミング的に、私達を見掛けて逃げたって事?幼いレウガルちゃんと公共ギルドのメンバーと私なんかを見て逃げたのだとしたら……もしや弱い?
ニヤリ……
コノルは口元に笑みを浮かべる。
「という事は……私にも何とか出来る相手……なら!そいつを捕まえたら!謝礼金が!じゃなくて!大手ギルドからお金が貰えるかも!」
言い直した意味の無さ。結局同じ意味である。
一考した結果、コノルはこれが一攫千金のチャンスだと思ったのだ。
身の破滅に向かう様な思考である。