その184 ライト&レウガル&シノ影vs棄世
「だ、【ダーク……あ、アンビエント】」
棄世は槍をシノ影に向かって振り下ろすと、その刀身から黒い波紋が現れ、その波紋は周りの物に当たるとズタズタに引き裂いてシノ影の元へと向かっていく。
「攻撃スキルか!っと!」
「攻撃範囲が読めないが速度は遅い。避けるのは容易だが威力は強力か。ふむ、攻撃後のRTが大きい類いの攻撃だ。情報屋、避け次第奴に攻撃を」
「分かってるつーの。一々分かる事を指図すんな。そんな事よりお前は攻撃を交わせよ。わざわざ掠ってHP減らしてんじゃねぇ。素人か」
「……」
シノ影を冷たくあしらうレウガルと、それに対して不服そうな顔をするシノ影は、攻撃を避け次第仕掛けにいく。
「今!【乱斬り】!」シュッ!
「当たれ!【三投連】!」ブンッ!
シノ影による太刀筋がバラバラな斬撃と、レウガルの投擲したブーメランが三つに分裂する攻撃スキルが棄世に向かって放たれる。
RTで動けない棄世に攻撃が当たる事は必須。
逃げれない攻撃を前に棄世はというと
微笑を浮かべていた。
「……ふひひ」
その瞬間、レウガルとシノ影の攻撃にシャドーマンがわざと当たりに行き、棄世への攻撃を肉の盾となり防御する。
「こいつら!そういう使い方も出来んのか!」
「なるほど。先に雑魚を片付けないといけない訳か」
「シノ影さん、レウガルさん。雑魚は俺に任せて本体を引き続き狙って下さい。特異スキル【英雄】【障害神手】【力の抑制】発動!」
ライトは攻撃スキルで数秒動けない2人の前に出て、特異スキルを使用し、2人を守りながらシャドーマンを蹴散らす。
そしてRTが終わった2人は引き続き棄世を狙って攻撃を仕掛ける。
棄世も負けじとシャドーマンと共に反撃を行う。
戦力は拮抗していると思われたが、実は棄世本人にも分かる程、徐々に棄世が押され劣勢になっていた。
「強い奴だと思ってたが、私達ならば、なんて事ないな」
「コイツに殺られた仲間を復活させなきゃいけねー事忘れてねーか?時間制限があるんだ。余裕こくな」
「……先程から言い方に棘があるな?まだ港の時の出来事を根に持っているのか?そろそろ許して欲しいものだ。お互い遺恨を残さない結果で収めただろう」
「お前が痛い目に合い続ける分には、俺はまーたく構わない。寧ろまだコノル達に謝罪してない事忘れんなよ?それより喋ってねーで剣振れバカ大将」
「チクチクチクチクと……よくもそこまで」
「2人共!雑談してないで戦闘に集中しろ!レイドと違って相手は思考を持つプレイヤーだ!隙を見せたらそこを狙われるぞ!」
「ひひ……も、もう……遅い」
棄世はレウガルとシノ影の視線が自分から外れた瞬間を狙って影で黒いロープを作り2人を拘束する。
バシッ!
「くっ!?」
「しまっ!?」
「ハッ!」ズバッ!
ライトは拘束された瞬間を見て咄嗟に2人に近付き黒いロープを斬って拘束を解く。
だが同時に、シャドーマンが一斉に3人に詰め寄り、拳を刃に変えて攻撃してくる。
「飛べ2人共!【地獄車・地】!」
シノ影は咄嗟にしゃがんで回転しながらシャドーマンの足元に広範囲の回転攻撃を仕掛ける。
レウガルとライトはシノ影の動きに合わせてジャンプし、シノ影の攻撃スキルを交わす。
そして足を斬られたシャドーマン達は地に伏せ、地べたに這い蹲る。
その隙に3人は体制を整える為一旦棄世とシャドーマンから離れる。
「私に対し借りが一つ出来たな情報屋に英雄」
「何が借りだ。お前と会話してたからだし、危うくお前に足斬られるとこだったんだが?」
「だが助かったのは事実だよレウガルさん。感謝しますシノ影さん」
「ふふふ。これぐらい君のあの偉業に比べればなんて事ない。ふはははは!」
調子乗ってんなぁコイツ。
レウガルが冷たい視線をシノ影に向け、ライトはそんなシノ影に苦笑いしている最中、棄世は3人を睨み付けていた。
「……」
槍を構えながら静観している棄世。
そんな棄世の様子に変化が現れる。
「………………なっ!?」
突如、驚いた表情になる棄世。
「何だ?」
レウガルはそんな棄世の異変に気が付く。
そのレウガルの反応でライトとシノ影は再び武器を構えて棄世に警戒を向ける。
しかし棄世は眼中に無いといった様子でそんな3人を無視して独り言を呟いていた。
「…………………な、何で……こう………………………………ふ、ふん……め、面倒……く、臭く……な、なった……お、お前ら……の……あ、相手は……ま、また……こ、今度に……し、して……やる……い、命……拾い……し、した……な」
最後ポツリとそう零すと棄世は3人の前に巨大な影の壁を出現させる。
「うお!?」
「なぬ!?」
「おっと!」
下から突如現れた壁に当たりそうになり、3人は驚きつつも後ろにジャンプして冷静に回避する。
そのタイミングで棄世はそこから退却し姿をくらます。
同時に周りのシャドーマンも霧となり消え、残った3人は拍子抜けした様に、呆気に取られた顔をするのであった。