その182 トカゲの尻尾切り
「まぁ……間違っちゃいねぇな」
その佳代の言葉に渋々頷くレウガル。
「……ま、漫才は……お、終わり……か?……じゃ、じゃあ……は、始める……よ……」
口を挟めるタイミングを伺っていた棄世は、話が終わった瞬間、手を前に出して臨戦態勢に移る。
「漫才じゃねーよ!って、おい。アイツら仲間を1人残して消えてんぞ?他の奴らは?ブルーハートはどこいった?」
レウガルは棄世が1人だけ残っているのに気が付く。
「……さ、流石に……あ、アリ共が……ふ、増え過ぎ……て……め、面倒……だ、だから……って……あ、あんたらが……は、話してる……間に……た、退却……し、したよ……」
「で?お前1人ってか?お前は逃げなくていいのか?この人数相手じゃお前に勝ち目ねーぞ?」
「………………わ、私は……し、殿を……つ、務め……る……や、役さ……そ、それに……お、お前ら……なんか……わ、私……ひ、1人で……じゅ、十分……ひひひ」
そう言うと、棄世の周りにシャドーマンが味方の数を超える勢いで何十体も現れ、棄世はHPとSPを半分消費してシャドーマンを操る。
「くひひ……わ、私は……こ、【殺し屋棄世】……お、お前らの……い、命なんか……何とも……お、思わない…………ふひ……くひひひひ……やれ……」
棄世が指でレウガル達を指し示すと、一斉にシャドーマンが動く。
「1分間のRTを稼いでくれたお陰で俺も漸く動く事が出来る。【一閃】!」
ズバンッ!
その声と同時に一筋の斬撃がシャドーマンに向かって放たれ、シャドーマンは一気にその数を減らす。
「な、なに!?」
「さっきの借りを返させてもらおう」
ライトが剣を構えて棄世を相手取ろうとする。
その横からシノ影も現れる。
「私がいる事も忘れないでもらいたい」
シノ影も刀を抜いていた。その周りの取り巻きも。
武器を構えて一斉に掛かる構え。
棄世の額から汗が滴り落ちる。
「気付いてるだろ。無茶だって。お前はトカゲの尻尾切りにされたんだ。大人しく投降すりゃ命までは取らねーが、どうする?」
レウガルは腕を組みながら棄世を説得しようとする。
「……う、うるさい……ちょ、調子に……の、乗るな……」
そういうと、棄世は地面に手を置く。その瞬間、広範囲に地面から黒いトゲの付いた黒い木が生えてくる。
まるで影絵で表現した枯れ木のようなその攻撃は、辺り一面を咲き乱れるように攻撃する。
無差別に、しかし当たるのは自分以外。周りに敵しかいない今、棄世は能力を抑える必要がないので容赦は無かった。
そして、その攻撃により、さっきまで人数で圧倒していた筈のレウガル達の力関係が崩れてしまう。
「くっ!」バッ!
「おわっ!?あっぶ!?」サッ!
「チッ」カキンッ!
「ぐああああ!?」グサッ!
「ぎゃあああ!?」ドス!
ライトやシノ影やレウガルみたいな力のある者は間一髪で避けれたが、その他の者は影の木で倒されたり、木に引っ掛かって身動きが取れなくなったり、木に吹き飛ばされたりしていた。
「しまった!味方が!生き残った奴等を助けねーと!くそ!アイツ何者だよ!」
ただの一撃で形成を持っていかれたのを理解すると、レウガル達は信じられないといった表情で棄世を見る。
だが、棄世の攻撃はまだ終わらなかった。
「……い、生き残り……なんか……い、いらない……ひひ……あ、当たった……なら……ちゃ、ちゃんと……し、死ね……」
影の木に引っ掛かってる連中に対して棄世は、地面から影で出来た棘を出現させてとどめを刺す。
棄世の攻撃を避けられなかった者はこれで全員1人残らず倒された。