その181 ハイヴァー&シノ影 登場
「普段なら金取る場面だが、命が優先だ。情報を渡してやる。お前らよく聞け。ブルーハート。こいつはスキル持ちじゃないが役職が厄介な奴だ」
「役職が?」
「役職は投擲者の上位特殊派生役職【追跡者】。効果が特異スキル並に厄介だ」
「チッ、あいつは情報屋のレウガルじゃねぇか。お前らぁ!アイツが口を開く前に始末しろ!」
ブルーハートはレウガルが自身の情報をライトに喋る前に一斉に始末しに掛かる。
「やっぱ止めに来るか!兎に角全員ブルーハートの遠距離攻撃は全部避けずにガードしろ!あいつの攻撃は」
レウガルは必要最低限の事を仲間に伝えようとした。
その時
「【バイパーファング】」
ドゴッーン!!!
「なんだぁ!?」
「チッ!」
ライトとブルーハートの前に強烈な打撃攻撃が放たれ、2人は後ろに下がる。
そこにはハイヴァーが地面を穿つ様に拳を地面に突き付けており、ハイヴァーの後を追う様にギルド【緑の聖母】の一派もライトとレウガル達の後ろから続々現れる。
そこにはシノ影もいた。
「ありゃ【緑の聖母】の連中と……げっ」
「何だ情報屋?『げっ』とは随分挨拶じゃないか」
レウガルはシノ影が見えた瞬間、苦虫を噛み潰したような顔になる。
そろもそうだ。つい最近まで、黒猫とコノルの件でいざこざがあったのだから、会った所で仲良く出来る訳でもないので嫌な顔になるのも当然っちゃ当然である。
そんなレウガルの心中を察してかシノ影が口を開く。
「安心しろ。別に恨んじゃいない。私にも非があった。それだけだ。罰は甘んじて受け入れただけ」
「『にも』ってなんだ?お前にしか非がなかっただろ」ボソッ……
まるで自分は悪くないといった言動にイラッとしたレウガルは聞こえるか聞こえないかの絶妙なボリュームでそう呟く。
「何か言ったか?」
「いや何も?それよりブラックギルドの連中が襲ってきた。手を貸せ」
レウガルは今の感情を後回しにして、今の状況に目を向け、シノ影に助けを求める。
気に入らねー奴だが、実力は確かだ。協力してもらわねー手は無いぜ。
「元より」
シノ影も現状を理解しててか、二つ返事で了承し【シャドーフェイス】の一味に目を向ける。
コノルはそんなレウガルとシノ影を見て口を開く。
「じゃあここは任せました。私達はギルド会議場を見てきます」
私がいても役に立たないし私は救助を優先しよう。人数いるし接敵してもなんとか出来そうだし、何より急がないとね。
コノルがそう言って公共ギルドの人達と救助に向かおうとした時、
「了解した……ん?………………はっ!?貴様はあの時の!?という事は!あの女(黒猫)もいるのか!」
シノ影にコノルの事を気付かれる。
おやおやおや?変な流れに……この人誰だっけ?何にしてもやな予感……
「……こんにちは。急いでますのでまた後で。ごきげんよう」
「待てぇい!貴様らには一言言わなければならぬと思っていたのだ!そこになおれ!」
シノ影は足元を指差してコノルに座るように促す。
「時と場合を考えろボケナス。後にしろ」
レウガルは頭に血が上って頓珍漢な事を言い始めるシノ影を戒める。
「くっ!ハイヴァー!その女を見張り、事が終われば私の元に連れて来るのだ!ついでに手を貸してやれ!」
キレ気味にシノ影はハイヴァーに指示を出す。
「元々同じギルドにいるからと言っても私は始祖様の命令しか聞きません。それに貴方は今【赤壁旅団】のメンバーでしょう。私は【緑の聖母】。指示するなら許可を確認しないと。待ってて下さい。今始祖様にお尋ねします」
しかしこのポンコツ従者、いちいちシフォンを経由しないと動かない。
「そんな事してる暇ねーだろ。後で俺からシフォンに言っとくから、ハイヴァーはコノルに付いて行ってくれ」
「コノルとは先程の女の子ですか?」
「そうだよ」
レウガルはそんなシノ影とハイヴァーを見かねて、ハイヴァーをコノルに付かせようとする。
ハイヴァーはコノルが走っていった先に目を向ける。
そこには既にコノルはいなかった。
「もう居ませんね。次に私は何をしたら?始祖様に連絡?」
「……屋敷に入って逃げ回る奴でも助けて、屋敷と共に焼かれてくれ」
「始祖様にお伝え下さい。『私、やりました』と」
「何をだ?自分で言え。早く行け」
レウガルの超適当で投げやりな指示で、ハイヴァーは壁を駆け上がり3階の窓から火の中へと姿を消していった。
「あいつって……頭は空っぽだけど身体能力は怪物なんだよな」
「それって……ただの獣では?」
レウガルの言葉に、腰を抜かして座り込んでいる佳代が反応する。