その178 レウガルちゃん大好き!その話題には触れませーん!
「さぁ切り上げますよ」
「お話の続きはまた明日ですね」
こんな質問責めの見回り……明日もしてたまるかっ!
喉の底まで出かかる言葉を押し殺すコノル。しかし顳かみがピクピク揺れ動く。
が、我慢我慢……
その後も、戻るまでレウガルの事について聞かれ続けた。
そんなギルド会議場まで行く道中、偶然レウガルと鉢合わせになる。
「あー!レウガルちゃんだー!もう!だーい好き!何て可愛ら(以下略)」
「うがああああ!やめ(以下略)」
レウガルと出会った途端、先程まで質問責めでうるさかった依頼主達はまるで人が変わったかの様に黙り出す。まぁ当然ではある。悪口言ってる最中、その悪口のご本人が登場したようなものなのだから。
しかし、コノルにとっては、レウガルを愛でられ、五月蝿い奴らが一斉に黙り込むのだから一石二鳥、一挙両得の様なもの。有難みしかない。
漸く普通の会話が出来る。コノルは撫で回して怒らせたレウガルを落ち着かせると、レウガルとの他愛無い話に花を咲かせながらギルド会議場へと向かっていく。
「だから私言ってやったの。それは野菜じゃなくて肉やないかーいって。じゃあ20ゴルドまけてくれたの。これで丁度1000ゴルドで猫さんと鍋パーティーが出来たわけ。凄くない私?交渉のプロよね」
「衣替えの話だったよな?服屋の店員との値引き交渉で何でそんな話になんだよ?鍋に服入れたんか?経緯が気になるわ。ある意味すげーよ。ところで話変わるけどよ。盗っ人てのはどんな人相なんだ?お前なんか知らねーの?」
「……」ギクッ
レウガルから唐突に爆弾話を振られて内心ドキッとするコノル。
「いやよ。俺も情報はあるんだけど、どれも信憑性に掛けててよ」
「ふ、ふーん……ち、因みにその情報って?容姿……とか?」
「盗っ人は女だとか、金髪だとか、変な語尾で喋るだとか、こんな暑いのにマフラーしてるだとか、な?どれも嘘くさい情報だろ?」
「ソダネー」
当たってんのよ!もう猫さんを確定付ける情報しかないじゃん!万が一猫さんじゃない事を内心祈ってたのに祈り通じず!神は私を見放した!というか、ここまで情報揃っててレウガルちゃんにバレてないのはナンデ?
奇跡を目の当たりにしながらコノルは横を歩く小さなピンク色の髪の毛を見下ろす。
「つか、そもそも盗っ人って行為を働ける様な奴、俺は1人しか…………あ」
「…………」
終わった。今このレウガルちゃんの反応で分かった。終わったわ。
「…………」
「…………お前……まさか」
「……何の話でしょうか?わたくしには全く、皆目、微塵も、見当もつかないであります」
「口調変わってんだよ。ちょっともうちょい近付いて耳貸せ」
レウガルは後ろの依頼主の顔を気にしながら、人差し指チョイチョイと動かしコノルを呼ぶ。
「喜んで!んふぅー!レウガルちゃんスベスベ〜」
コノルはレウガルに体当たりしてお互いの頬と頬をくっつけながら激しく頬擦りする。
「ちっげーよバカ!離れろバカ!隙あらば抱きつこうとすんなアホ!耳貸せって言ってんだボケ!2度とすんな!」
チワワの様にキャンキャン吠えながら怒るレウガル。コノルを押し退け、話の続きを話す。
「アイツ今牢獄にいないのか?お前はどこまで知ってんだ?」