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175/231

その175 頭のネジが外れとるのじゃ

「のじゃああああ!もう離すのじゃ阿呆!火が近付いてきとるじゃろ!後ろを見るのじゃ!」


「『のじゃああああ!もう離すのじゃ阿呆!火が近付いてきとるじゃろ!後ろを見るのじゃ!』と、送信しました」


「のじゃああああ!阿呆に殺されるうううう!?誰か助けてえええええ!?」


迫真である。


オウム返しで黒猫の言葉を復唱しながらシフォンへとその言葉を送り続けるハイヴァー。黒猫の事や周りの状況等お構い無しにメッセージを送り続ける。ここまできたら最早病的だ。


ハイヴァーに助けられなければ火に包まれて焼け死んでいるところだが、助けられても焼け死にそうな勢いだ。


「先ずは一旦そこから逃げて下さい。と、始祖様は仰ってます」


「分かっとるわ!?いいから仰ってますじゃなく逃げるのじゃ!」


「はい」


グッ


「のじゃ?」


するとハイヴァーは掴んでいる黒猫の手を更に力強く握る。


そしてそのまま勢い良く黒猫を3階の窓から外へと投げ飛ばす。


バリーン!


窓ガラスをぶち破って、外に投げ飛ばされた黒猫は為す術なく空中へ。


そして頭から地面へと垂直に落ちる。


「の……ぎゃあああああ!?」


このままでは確実に死ぬ。首折って死ぬ。なんなら復活時間も無い即死コース。


その時、黒猫の頭に走馬灯が駆け巡る。


『のじゃ!それは何の食べ物じゃ!』

『美味しそうじゃの……わたしゃにもくれ』

『うめーのじゃああああ!!…………辛っ!?』


くだらない走馬灯。もっと思い出す事があるだろうに。


そしていよいよ地面が目前に迫って黒猫は固く目を閉じる。


しかし黒猫は死ななかった。


ポヨンッ


「のぎゅ……のじゃ?」


顔面から硬い地面に落ちたのに、受けたのは衝撃では無く柔らかい感触。


思いもよらない感触に変な声が出た。


確かにハイヴァーに投げ飛ばされ、ガラスをぶち破り、身体中ボロボロになったが、HPはレッドゲージで止まっていた。


黒猫はゆっくり目を開け、自分が倒れている下に何があるのか見ると、そこには何も無かった。


「……?」


確かに何か柔らかい感触を感じたのじゃが……?


黒猫が不思議そうにしていると、上からハイヴァーも落ちてくる。


「【ヴォーパルエリアドライブ】」


スドーンッ!


ハイヴァーは蒼く輝きながら攻撃スキルで地面への衝突の威力を殺して着地する。


その攻撃スキルは地面に大きな穴が出来る程の威力で、その技により鈍い大きな反響音と衝撃による風圧が黒猫を襲う。


同時にその風圧で地面に座り込んでいる黒猫はダンゴムシのように後ろに転がる。


「のじゃあああああ!?」


終わらない災難に悲鳴を上げながら転がされる黒猫。


そして地面に這い蹲る様に倒れ、プルプルと肩を震わせる。


「…………う……ぐっ…………いいいい痛いしうっさいのじゃあああ!何なんじゃお主はさっきからあああ!」


ブチギレながら顔を上げ不満をハイヴァーへと飛ばす黒猫。


「あ、失礼。貴方様なら落下速度が下がる魔法使って頂ければ窓から出した方が早いと思ったので」


「使えんわ!何故使えると思ったのじゃ!ズレとるのじゃその考え!まず一言声掛けるのが先じゃろ!順番フル無視か!いきなり窓から投げ飛ばしおって!死ぬとこじゃったわ!」


「死んでも私は大丈夫です」


「お主はなっ!!誰がお主の心配をするか!!わたしゃが死ぬと言っとるのじゃ!!というかお主も落下速度下がる魔法使っとらんではないか!!何故攻撃スキルを使って落ちてきたのじゃ!!そもそもお主が攻撃しながら落ちた所にわたしゃがいたらどうするつもりじゃったのじゃ!!」


「大丈夫です。私の役職は【ハイモンク】。回復と復活の呪文が使えます」


「…………即死という概念が、お主には無いのかの?即死したら600秒のインターバルもないし、復活も何もないのじゃが?それは分かってたのかの?」


「はい。忘れてました。次から気を付けます」


「あああああああ!?分かったのじゃ!?こやつ頭のネジが外れとるのじゃああああ!?誰か助けてええええ!このままじゃ無自覚の悪魔に殺される!コノリュううううう!助けてええええええ!!なのじゃああああ!!」ダッ!


黒猫は全速力で走る。ハイヴァーという本物のポンコツの恐怖から逃れる為に全速力で。


置いていかれたハイヴァーはというと、


「……逃げられちゃいました。と、送信」


未だにメッセージの送信をして黒猫を追い掛けようとしなかった。

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