その173 ハイヴァー登場
「のじゃのじゃのじゃ…………のじゃあああ!?」
走っても走っても炎から逃れられない。走っては後ろを向き走っては後ろを向き、炎から逃げ切れたと思ってもまだ直ぐそこに炎がある。
当たり前だ。お前が火元なんだから。
火にのたうち回る黒猫。いや弄ばれてる?どちらにせよ上手い事火で苦しめられていた。
バッ!
その時、黒猫の腰にぶら下げた袋が何者かの手によって取り払われる。
「のじゃああああ!?……のじゃ?」
急に火の熱さを感じなくなり黒猫は間の抜けた顔をしながら後ろを振り向くと、そこには狐の面を頭に掛け、着物を羽織った、身の丈200cmはあるかと思われる高身長の女性がいた
その人物は、ギルド【緑の聖母】の始祖様の側近ことハイヴァーだった。
「……誰じゃお主?」
助けられた事も分からないまま黒猫はハイヴァーに指を差す。
「私はハイヴァーです」
「うむ。こんな所で何しとるのじゃ?」
「貴方を助けてました」
「うむ」
「はい」
「「…………」」
両者、微妙に噛み合わず沈黙に入る。まぁ両者共に初対面だから仕方がないっちゃ仕方がない。
とはいえ、今の一瞬で黒猫はハイヴァーに何やら違和感を感じる。
「……うむ、お腹空いたのじゃ」
「飴をどうぞ」
「おお!ありがとうなのじゃ!」
パクッ!バリボリ!
「どういたしまして」
「……」モグモグ……ゴクン……
「……」
再び沈黙。話しかければちゃんと返してくるのでシャイなのかとも思ったが、どうもそうじゃなさそうだ。
しかし、どうにもやりづらい。何が原因か分からない黒猫はハイヴァーの顔を見上げる。
「右手を上げてみるのじゃ」
「はい」
「……」
「……」
「3回まわってワンと言ってみるのじゃ」
クルクルクル「ワン」
「……」
「……」
「……お主……さてはポンコツじゃな?」
「はい」
聞かれた事、言われた事しかしないハイヴァーに向かって黒猫は失礼な事を言うが、それすら怒りもせず素直に返事をするハイヴァー。
そんなハイヴァーに黒猫は呆れた顔を向ける。自分もポンコツの癖に。