その170 ブラックギルド【KILLER】の創始者
棄世は後ろに小さな雑魚モンスターを二匹従えた白髪の少年と薄暗い通りを歩いていた。雑魚モンスターに攻撃してくる様子はなく、それが分かっているからか棄世と白髪の少年は歩みを止めることなく進み続ける。
しかし、途中で棄世は立ち止まる。
頭は泥に塗れ、服や身体はズタズタに引き裂かれた容姿。何があったか言うまでもない。
棄世は●●●をPKして黒表示になったのだ。本来ならゲームの世界で黒表示でも大した問題にはならないが、命が掛かった今のこの世界で黒表示は
棄世に更なる苦難を齎していた。
もう死んだ方が楽だと思う位に。
『何立ち止まってんだ?まだクヨクヨ考えてんのか?やっちまったもんはしょーがねぇだろうが。切り替えていけ』
『…………』
『ハッ!怒りに身を任せてPKしといて、いっちょ前に罪悪感を抱いてんのか?もう引き返せねぇんだよお前は。受け入れろ。お前に残された道だ。お前が選択したんだ。陽の光を浴びれやしねぇ暗い道をな』
『…………』
『……チッ、辛ぇだろうが黒表示の奴がこの世界のルールで生きるには難しい。どんな言い訳しようと他人ってのはアウトローってやつを受け入れやしねぇんだ。皆自分と同じでないと気が済まねぇんだよ。だからお前は爪弾き物にされてんだ』
『…………私……何も……知らな……ウゥ……ウグッ……グス……』
『知ってるさ。気持ちも分かる。だが事情を知らねぇ他人はお前に同情しねぇ。共感なんかしねぇ。お前を排斥する為に躍起になる。それが人間ってもんだ。お前はもう受け入れて、新しい自分になるしかねぇんだよ。耐え続けるしかねぇんだ…………だが、今の自分に耐え続ける事が出来たら、いつの日かお前を助けてくれる奴が現れるかもな』
『……ひぐっ……』
『おら、着いたぞ。いつまでベソかいてる気だ?後はゲバラって奴に任せてる。まだ運が残ってるならお前は助かる筈だ。今は辛ぇだろうが、必ずしも未来に待ってるのは絶望だけじゃねぇ。それだけは忘れんな。じゃあな』
『……あ、あなたは……ど、何処に?』
『俺か?俺は……ゴールを目指しにいく。俺のギルドを作って、別の手段でこの世界からの解放を目指す。もう後戻りは出来ねぇからな。手段は選ばねぇ茨の道だ。お前と一緒さ。生きてたらまた会おうぜ。来い【ハーピィー】【ウルフ】』
小さな妖精型のモンスターと狼型のモンスターを連れたその少年は、棄世をブラックギルドに案内して元来た道を引き返す。
『あ、あの……あ、ありがとう……ござい……ました……な、名前……し、知らな……お、教えて……下……さい……』
『あん?ああ、名前言ってなかったか。俺の名前は――
actだ