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その169 怒りを解放した彼女の末路

 システムの故障かな?アナウンス入ってないけど……まぁいいや、耐えられない程の痛みじゃないし。


 メニューを閉じていざ界ボスに1人で挑もうと顔を上げると、棄世は後ろから●●●に押されて前のめりになり、転ける。


「いたっ!」ドサッ!


「なんでさっさと行かないのよ?ほんとトロいわねアンタって」


 いつもの罵倒。いつもなら軽く流す所だが、棄世は転けた拍子に手を擦りむく。


 手がズキズキと痛む。


 ……こんな所再現しなくていいのに……それにいつもより痛い?…………っ…………くぅ……ううう……


 いつもと違った強い痛み。擦り剥けた手の傷。現実世界に近い痛みと傷。それを見ていると段々怒りが込み上げてくる。


 なんでこんな目に遭わないといけないのか?いつまでこんな扱いを受けて耐えないといけないのか?こんなの本当に友達と言えるのか?なんで理由もないのに攻撃され続けるのか?


 たった一瞬の出来事。些細な嫌がらせ。それはひび割れたダムを決壊させるのに十分だった。



 我慢の



 限界だった。



「……っ!何でそんな酷い事、す、するんだよ!私、●●●に何もしてないのにさ!」


 棄世は立ち上がって●●●に今までの事を含めて声を上げて不満をぶつける。


「は?」


 ●●●はそんな棄世の態度にイラッとする。


「皆も皆だよ!なんで私ばっかり!い、虐めるのさ!」


 棄世は怒りで声を震わせながらクラスメイトの方にも声を荒らげる。


「いきなり何?キモ」

「落ち着けってw情緒不安定かw」

「いいからさっさと行けよ」


 しかし誰も棄世を相手にしない。真剣な棄世の声を聞こうともしない。


「……っ」


 手を握り締め、歯を食いしばって、聞きもしないクラスメイトを睨み付ける。


「〇〇の癖に何?口答え?キャラじゃないからやめときなよ。キモイよ?」


 ●●●は棄世を見下す様な視線でいつもの悪口を言う。


 反抗した後の未来。今後はもっと酷いイジメが始まってしまうであろう学校生活。本格的に学校が行き辛くなり、自分の気弱な性格から下手すれば不登校にもなりかねない。家族に心配を掛けてしまうかもしれない。


 普段なら様々な不安要素を考え思い留まるのだろうが、そんな冷静な思考は怒りで掻き消され棄世は更に噛み付く。


「い、いつもいつもそうやって!私をバカにして!き、キモイのは貴方達じゃん!よ、寄って集って陰湿な事してさ!」


「何?私達が悪みたいに言って。あんたがキモイのがイケないんじゃないの?」


「な、何がキモいのさ!と、友達だったらそんな事言わないよ!いつも理不尽な事ばっか私にさせて!い、今までの事全部謝って!●●●!」


「はぁ!?意味分かんない!マジムカついたわ。あんたなんか友達だと思ってないから。私の召使いだから。今まで構ってやった恩を忘れて調子乗んなゴミ女」


「っ!!」





 その言葉を聞いた後の事はよく覚えていない。





 怒りが最高潮に達したからか、頭の中が真っ白になって気が付いた時、私は黒表示になっていた


 倒れた●●●とクラスメイト


 600秒という復活までの猶予を私は無視して彼女達が消えていくのを黙って見送った。


 リアルに戻ったら責められる。これ以上厄介な日々が待っている。私はもう1人っきり。


 冷静になって、その事が頭を過ぎると、吐き気が止まらない。


 私はログアウトしようとメニューを開くと、ログアウトボタンがなくなっていた。


「……」


 何一つ上手くいかない。酷い状況は更に酷くなる。もしかしたら直ぐに彼女達が復讐しにここに来るかもしれない。


 怖くなって足が動かない。


 だけど


 ●●●とクラスメイトは来なかった。


 ゲームの世界で何時間待っても。


 フレンド一覧にはログインしてるかログアウトしてるか確認出来る機能がある。その機能を確認したが、


 ●●●とクラスメイト全員の名前が消えていた。


 相手が自分の事をフレンド登録解除してもこちら側の表示が消えるなんて事はない。


 ログアウトも出来ず、●●●も消え、感覚リンクシステムの痛みが強くなるおかしなバグが続く中、●●●とクラスメイトはそれっきり復活した様子もない。


 そして、街に戻り、その理由を知った。


 私達プレイヤーがこの世界に囚われ、デスゲームが始まっていると、そう聞いた時、


 同時に私は全てを察した




 私は人殺しになったのだ



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