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その154 こいつを利用しない手はないな

 

 ブルーハートはそんな黒猫の事を考え続けても仕方ないと思考を切りかえる。


 そしてブルーハートは片腕に一見して変わったガントレットを装備する。そのガントレットはブルーハート専用武器で白くて丸い硝子の様な玉が7つ付いていた。


「うむ?なんじゃその装備は?」


 物珍しいと感じた黒猫は興味本位でそのガントレットの事を聞く。


 しかしブルーハートはそんな黒猫の疑問を一切スルーして魔法を唱え始める。


「祝福の願いと慈愛の精神を神の慈悲にて付与せよ『スペルリダクション』有限の時に一時の安らぎを我に『タイムエクステンション』」


 ブルーハートの身体が一瞬青白く光り、バフが付与される。


「のじゃ?」


「いつまで間抜け顔で見てる。羽崎が動いた。さっさと爆弾仕掛けて仕事終わらすぞ。バフの付与しとけ」


「バフは知らぬが、コレを使うのじゃ」


 黒猫は黄色く濁った液体の入った袋の様な見た目の容器をブルーハートに向かって見せ付け、飲もうとする。


 それを見てブルーハートの目が見開く。そして黒猫の手を掴み飲もうとするのを引き止める。


 バシッ!


「っ!?お前……そのアイテム」


 それはブルーハートだけが持っているアイテム。簡単に言えばガソリンの様なもので、火属性の攻撃が当たると燃え広がる特殊なアイテムだ。


 ブルーハートの様な実力者しかクリア出来ないダンジョンでしか素材が取れず、尚且つ他のアイテムを合成して作り出す特殊なアイテムで、火属性の攻撃にしか効果がない事も相まってごく一部の火属性使いしか持っていないとされるアイテム。そんなアイテムを絶対持っているはずがない黒猫が持っている事にブルーハートは全て察する。


「そういう事か。お前が巷で噂の盗みを働けるプレイヤーだった訳か。そのアイテムは俺から盗ったのか?それは飲み物じゃねぇぞ」


「……ち、違うのじゃ。落ちてたのじゃ。の、飲み物じゃないのは、し、知っておるのじゃ………うむー!」


 黒猫の小さな脳みそが働き、ここで正直に話せば痛い目を見ると思った黒猫は、絶対信じて貰えない嘘を言う。


「別に隠すこったねぇよ。なるほどな。アイツらはそれを知ってたって事か。お前なんざを重宝する訳だ。おい新入り。これから俺以外で敵味方問わず、その力は使えるか?」


「のじゃ?また盗みを働けという訳かの……」


「どうなんだ?」


「いけるのじゃ」


「狙ったアイテムは盗めるのか?」


「無理なのじゃ」


「成程。じゃあこの任務中はアイテムをなんでもいいから盗めるだけ盗んでこの布袋に入れて最後に全部俺に渡せ」


 ブルーハートは黒猫に黒い紋章の付いた紫色の袋を渡す。


 これは入れたアイテムをそのままレア度に関係なく袋ごと他者に渡す事が出来るアイテムで、ブラックギルド内でも上位の地位を持っている人間内でしか使われていない仕様外のアイテムだ。


 黒猫はその布袋を受け取るとその布袋を見つめる。


 ……こんなんばっかじゃな。みな考えるのは一緒かの。ヤレヤレじゃ。


 心の中で不満を吐露する黒猫。


「まぁ散々やったから今更なのじゃ。分かったのじゃ。じゃが敵味方問わずっていうのは言葉の綾かの?味方のまで盗らんでもいいじゃろ?」


「リーダーの俺に黙ってた罰ってやつだ。つべこべ言うな。盗れる奴全員だ。分かったか?」


 早い段階で黒猫の正体が分かったブルーハート。こいつは利用しない手は無いと黒猫を利用してアイテムの盗難を企む。


 そしてブルーハートは紫色の袋と一緒にある物を黒猫に渡す。


 フードの付いた黒いローブ。


「それで身を隠せ。襲撃メンバー内で味方と認識出来る。逆にそれ以外は敵だ。お前は戦えねーだろうから爆弾を設置する以外で敵を見掛けたら逃げろ。アイテムはちゃんと盗んでおけ。それと爆弾を設置するルートが書いてある紙だ。この通り動け。さっき俺から盗んだアイテムはこの袋に入れて装備してろ」


 ブルーハートは設置ルートの書いた紙とボロい袋も一緒に渡してくる。


「分かったのじゃ」


 渡された紙を咥えながら、黒いローブを羽織り、ボロい袋に盗んだガソリンみたいなアイテムを流し込み腰にぶら下げる。


 なんじゃコヤツ?色々注文が多いが中々話が分かるではないか。ぬはは。


 逃げろという部分だけしっかり聞いている黒猫はブルーハートが話の分かる奴だと勘違いする。


 ブルーハートはブラックギルドのマスターだ。そんな甘くない事をこの時まだ黒猫は知らなかった。

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