その153 場面は変わって襲撃準備中。なんなんだコイツは?
時刻は丑三つ時
夜闇が辺りを隠す暗闇の刻
しかし、隠されるのは景色や風景、辺りの様子だけではない。それは動く人間も同じだ。暗躍する人間、黒いギルドの名を背負う者達にとって絶好の暗躍時間。
ギルド会議場の破壊を目論むブラックギルドが徒党を組んでギルド会議場の周りにある草木や建物の影で身を潜ませ開始の合図を今か今かと待ち侘びていた。
怖い顔や険しい顔、不敵な笑みを浮かべる者など、様々な面子が雁首を揃えている中、その中に場違いな存在感を放つ奴がいた。
黒猫である。
周りの襲撃メンバーが木陰や路地裏で身を潜めているにもかかわらず、黒猫は堂々と門の前に仁王立ちで腕を組んで立っていた。
すかさず射場ザキが黒猫に近づき頭を引っぱたく。
「何してんだボケ」
バシンッ!
「痛いのじゃ!いきなりなに、ぬじゃ!?」
首筋を引っ掴まれ、引き摺られながら草むらに投げ入れられる。
「ぬ、ぐ……何するのじゃ!」
「大きい声を出すな新入り、死にてーか?良くやった射場ザキ。持ち場に戻れ」
「はい」
射場ザキはその場を後にして自分の持ち場へと走っていく。
「のじゃ?」
そんな射場ザキを目で追いかけて姿が見えなくなると黒猫は横にいる指示してきた人物に顔を向ける。そこにはブルーハートがいた。
「前にも言ったが今回は俺と組む。俺の前で先走った事してみろ、死ぬのはお前だけだ」
「の、のじゃ……」
下を向いて落ち込む素振りを見せる黒猫。落ち込むと言っても言われた事に対してではなく、またリョウケンみたいに命令を聞かなければ殴りにくるタイプだと一目で思い、そんな奴とまた一緒に行動しなければならない事に対して落胆しただけだ。
ブルーハートはそんな黒猫を見る。
ゲバラの女狐が気に掛けているのも謎だが、あの狡賢い鼠顔野郎がつい最近まで連んでたのも気になる。普通に考えてこの間抜け女とあいつが連む理由はないからな。棄世のイカレポンチが鼠顔野郎と間抜け女を離したらしいが、そうなると棄世もやたらコイツを擁護してるとみえる。本店の奴等も直接は言わねぇが重要視してる様子だ。
カリスマ性も無ければ実力もなく、かといってそれ程特別な何かを感じない。なのに周りの人間が黒猫へと集まる。そんな黒猫の存在が妙に引っ掛かるブルーハートは今回の作戦で自分に黒猫を同行させる事で、引っ掛かりの理由を突き止めようとしていた。
何奴も此奴も何企んでやがるか知らねぇが、コイツがそれ程重大な何かなのは間違いねぇ。気が付けば爆弾だったってのは避けたい所だ。正体の片鱗でも掴んでおかねぇと。
自分に何かしらの不利益を生む可能性を懸念しながらブルーハートは黒猫を見続けていると、黒猫はさっきまで落ち込んで下を向いていたにも関わらず、もうその事を忘れたかのような間抜け面で草むらの草を毟って口へと放り込み始めていた。
「何してんだ?」
「お腹空いたのじゃ」
「……」
行動が読めねぇ。棄世とはベクトルが違ぇ頭のおかしさ以外コイツに何かあるのか?スケープゴート用の人員か部下の玩具程度だと思ってたが。益々分からねぇ。何なんだこいつは?
奇想天外な行動に益々頭がこんがらがる。