その150 これが所謂スレ違いコント
「ちゃんはやめろって言ってんだろ!つか離れろよ!擦り寄ってくんな!」
レウガルは抱き着いて頬擦りを止めないコノルの顔を無理やりひっぺがそうとするが
「なんっだっこいつ!?なんでこんな強ぇんだよ!?タコかよ!離れろよぉぉぉぉ!」ググググググ……
「んもー!照れ屋さんなレウガルちゃんも可愛いよー!hshshshs!」ギュッ!
「んがあああああ!」
そんな問答から約5分
漸くコノルから解放されるレウガル。
「ゼェゼェ……」
「レウガルちゃん成分補充完了」
やつれた顔のレウガルと
真顔のコノル。
その差に顔を歪ませて見る依頼主達。
「何が……レウガルちゃん成分だ!ついこの前会ったばっかだろうが!何を補充したんだ貴様は!」
「だからレウガルちゃん成分よ。そう……レウガルちゃん成分は無くても困らない……ただ無いと徐々に魂が削れていくのよ」
「何だその気持ち悪い危ねー成分は!?どう考えても真顔で言ってる今の方が魂抜けてるだろ!」
「うふふふふ。さぁ行きましょうレウガルちゃん。うふふふー」
「何だその気持ち悪い笑い!?腕掴むな!行かねーよ!放せ!あと、ちゃんを付けんな!さんを付けろ!年上だぞ俺は!敬え!何回言えば分かる!」
コノルの腕を振り解き、地団駄を踏んで指を差しながら指摘するレウガル。しかし動作がどう見ても容姿と相まって子供である。
「お前らも!こんな奴等誘ってんじゃねーよ!言っておくが疫病神よりタチ悪いぞコイツらは!」
指を差しながら依頼主達に忠告するレウガル。
しかし依頼主達はレウガルが何を言っているのか分からない顔になっていた。
「あん?何だその反応…………あ」
依頼主達が首を傾げるのも当然だ。コノルしか誘ってないのに複数形でレウガルが指摘してるのだから。
レウガルにとって、コノルと黒猫はワンセットの厄災コンビ。いないという発想が出ず、思い込みで自然と黒猫がいると勘違いしたのだ。
途中でレウガルはその事に気が付き、しまったと心の中で後悔する。
そう、コノルの大切な相棒である黒猫は今牢獄の中。傍から見れば四六時中一緒で、片時も離れる事のない信頼の糸で繋がっているであろう相棒が、1部の攻略組のせいで牢獄にぶち込まれたのだ。
それも何日も。
なるべく触れないようにしなければと、そう思っていた。時間が経つにつれ、コノルはそれを色濃く感じていると思ったからだ。
恐らく顔を曇らせてしまっただろうと思い、レウガルは恐る恐るコノルの方に顔を向けると、
「もぉ〜レウガルちゃんったら、猫さんは、ろ、う、ご、く ♪ だゾっ ☆」
レウガルの心配虚しく、コノルは超笑顔でおっちょこちょいだなぁと言わんばかりにレウガルの額を人差し指でチョンっと触ってくる。
「……うおい、嘘だろ?嬉しそうに言う事じゃねぇだろ。鬼畜か。お前の相棒だろうが。少しでも悪いと思った俺の気持ち返せ」
相棒が黒猫が牢に入れられて傷心していると思っていたら案外そうでもなかったので、吃驚しつつ一周まわって逆にイライラするレウガル。
「やだなーレウガルちゃんったら。嬉しい訳……ない……じゃない……」
すると、いきなりナイーブになるコノル。
その内心は、
ああああぁ……そうだ……今牢獄から出てるんだ猫さん……レウガルちゃんと会ったのが嬉しくて私も忘れてた……そうだ……探さないといけないんだ……はぁ……
と、黒猫のやらかしに対して不安が募っていた。牢獄に入っている事に対してじゃなく出た事に対してショックを受けている。なんとも相棒甲斐のない奴である。
しかし傍から見れば、
案外ムリしてたのか。そりゃショックだわな。傷つかない方がどうかしてるし、やっぱ悪い事しちまったか。
と、やはりショックを受けていたのかと真逆の解釈を取る。そして反省するレウガル。
当の本人はどうかしてる部類であるのに気が付かない。