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その149 空気は一切読まないわっ♪

 

 タッタッタッ!


 軽快な足取りでコノルはある場所に急ぐ。


 時刻は18時。見回り依頼の集合時間。


「はぁはぁ……セーフ。ここかぁギルド会議場。でっかいお屋敷だなぁ」


 見上げるコノルの前には、3階建てで全体的に白くゴシック風の建物が建っていた。


「集合はここだって聞いたけど……あ、いた!」


 周りを見渡すと依頼主の女性がいた。


「あ、コノルさんこっちです」


 手招きで誘われるままコノルは女性に近付く。


「時間丁度ですね」


「セーフですね」


「いいえ、丁度という事は数秒アウトです」


「あちゃー」


「冗談です。では行きましょう」


「ありゃー、あ、了解です……って待って下さい。他の人達は?」


 周りを見渡すと、依頼主以外誰もいない。少人数で見回るのは危険だから5人組で見回ると聞いていたのに何故だろう?とコノルは首を傾げて尋ねる。


「皆遅れてます。遅れた分はしっかり残業させるんで私達だけでも先に行きましょう。コノルさんだけですよ。セーフなのは。はははー」


「えぇ……」


 あまりにいい加減で呆れる声を出すコノル。言っておくがコノルもギリギリだ。言える立場ではない。


 とはいえ、他の人を待たないのは不可解である。コノルは先を急ごうとする依頼主の手を掴んで引き止める。


「ちょっと待って!流石に2人は無理ですよ。少し他の人を待ちましょう」


「……」


 依頼主はイヤそうな顔でコノルを見る。


 え?何その顔?何で睨まれるの?


 バツが悪い顔でコノルの額から1粒の汗が垂れる。


「はぁ……私は反対だったんですよ。ギルド会議場での待ち合わせ。コノルさん、もう隠すのも面倒なんで言いますが、他の人が来ない本当の理由は、今私の公共ギルドと、あるギルドのギルドマスターとがギルド会議場で話し合いをしているからです」


「あるギルド?」


「……【明け待つ旅人】ですよ」


「聞いたような……って、ああー!レウガルちゃんのギルドだ!で、話し合いをしてるから何です?何か関係あるんですか?」


「関係大ありですよ。あのギルド、何かにつけてお金を請求してくるのはご存知ですね?」


「え?あ、はぁ……」


 存じ上げませんが?


「今回の話し合いも今さっき急遽決まって、というか一方的に捕まって、公共ギルドの仕事を他のギルドに斡旋するから仲介料を寄越せと、まぁ簡単に言えばそんな話をしていて、日頃からお世話になっている部分も多々あり無下には出来ず……コノルさんとの約束もあり話し合いの途中で私だけ抜け出してきたのです。でも今の話し合いが終わったら多分今度は私達の見回りに対して何かしらの提案をして金を要求してくるかも知れないんですよあの人。だからここから早く立ち去ろうと、こういう訳です」


「ふへーなるほどー」


 レウガルちゃん意外と銭ゲバ?というか厄介者扱いされすぎでしょレウガルちゃん。何やってんのあの子?


 納得する素振りをするが内心レウガルの暴挙に呆れるコノル。


「3人が応対しているんですが、まぁいつも通り上手く言いくるめられて終わるでしょう。口が上手いんですよねあの人。で、このままではいずれあの人に鉢合わせかねないから早く立ち去りたい。そういう訳なんですよ」


「どんだけ逃げたいんですか。なら集合場所を変えれば良かったのでは?」


「集合30分前に捕まってどうしろと?」


「なるほど。本当に今さっきなんですね」


「まぁ言い分は分かった。俺の事そんなに嫌ってたのな」


「「!!?」」


 後ろから突如レウガルが現れバツが悪そうな顔になる依頼人。後ろにはやつれた顔のメンバー達。


「そ、そういう訳じゃ、あ!お話は終わったのですね!では私達は用事があるのでこれで!皆!行くよ!」


「まぁ待てよ。見回りって聞いたぜ?」


 なっ!?コイツら……言いやがったな!


 依頼主の女性はレウガルの後ろにいる仲間3人に噛み殺さんばかりの眼光を放つ。


 その眼光を受け、仲間3人は申し訳なさそうな顔で顔を逸らす。


 それを依頼主の後ろから眺めるコノル。


 大変なんだなぁー。


 小学生並の感想を零すコノル。まぁ他人事である。


「危ねーから5人組って訳だろ?でも手練は1人くらい入れとかないとどちらにしろ危ないぜ。狩りは下手な知識と中途半端な対策で挑むのが1番危ねーんだ。それは人相手でも同じさ。金は掛けるべき所に掛けるべきだぜ。蔑ろにしちゃならねーよ?命が掛かってるなら尚更だ。何なら俺が紹介を…………ん?」


 レウガルは得意気な顔をしながら饒舌に喋っていると、ふと依頼主の女性の後ろに見た事ある人間に気が付く。


「…………お前……何でここにいるんだよ?」


 嫌そうな顔でコノルにそう声を掛けるレウガル。


「レっ、ウっ、ガっ、ルっ、ちゃんっ ♪ やっと気付いてくれたー! もう大好き ♪」


 コノルはそう言って、一切場の空気を読むこと無くレウガルに飛び付くように抱き着き頬ずりする。


 依頼主達はその光景に驚いた顔になる。


 一方レウガルはそんなコノルに眉間の皺を寄せるのだった。

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