その143 放置プレイ?うむ……何じゃそれ?
そしてこの調子で数十分騒ぎ続けた。
「……無視かの」
しかし、まるで音沙汰無し。こんなに騒いでも一向に誰も降りてこない。
数時間放置されてまだ一度も黒猫を尋問しに来る気配がない。痛い目を合わす必要がなくなったから降りてこないのか、はたまた尋問という苦しみを先延ばしにされてるだけなのか。
状況が分からない。黒猫は暇を持て余して考える。
「これならば先にコノルが来るかの」
だからあんなメッセージで来るわけねーだろ、とツッコミを入れられそうな独り言を呟く黒猫。
とはいえ、流石に放置プレイが過ぎる。
拷問で重要事を話さない者に対して、放置するというのは効果的な面もある。何故ならあまりに長い放置は時に、精神的な苦痛に変わるからだ。自分はここにいるのに、その存在を完全に抹消されたり、忘れ去られるといった対応の仕方がその者の脳内を巡るとどうなるか。
それは不安だ。
例として、隠れんぼをして自分が誰にも見つからない所に隠れたとしよう。何時間も同じ場所に隠れて一向に誰にも見付からない状況が続けば自分はどう思う?忘れ去られたと思ったり、もう皆帰ったのかと思い、見つかるのを覚悟して皆の前に出るだろう。隠れんぼの見つかってはいけないルールなんか無視して、だ。
不安がその者の考えを変える。
つまり、そう、同じだ。人によっては喋ってはいけない事を聞かれず放置されるというのは人恋しくなり自ら話したくなる時もある。精神的なダメージとは肉体的ダメージをも上回る可能性があるのだ。もしかしたら黒猫を放置するのはそういった狙いがあるのかもしれない。
人の肉片が散乱し汚く暗いこんな場所に何日も閉じ込められたら、普通なら気が狂う。そんな狙いも十二分に考えられる。だから何時間も放置されてる可能性もある。
まぁ、最初から気が狂ってるような奴に効果があるのか不明だが。というか効果はない。断言出来る。何故かって?狂ってるレベルの馬鹿だから。黒猫は1日毎に記憶をリセットするから。
幾ら喚いても相手にされないと分かるや否や黒猫は拷問部屋の真ん中で猫の様に丸くなって寝ようとする。
寝るか騒ぐかしかしない本当に幸せな奴である。
そして深い眠りに付きそうになったその時、黒猫の頭に衝撃が走る。それはもうここ数日で身に染みた衝撃が。