その142 どんだけ囚われるんだコイツは?
「皆忙しいんだなぁ。かくいう私も猫さん助けるので忙しいんだけど。ふぅヤレヤレ」
ため息混じりに額の汗を拭う素振りをするコノル。
その時ふと、ライから手渡された布袋が気になる。
「ん?そういえば、これ、何が入ってるんだろう?開けちゃお。箱の中身はなんじゃろな〜 ♪ ふんふんふーん ♪ 」
箱では無く袋だが、鼻歌交じりにコノルは袋の紐を解いて中身を確認する。
中身は大量のゴルド。それも界を何度も跨ぐには十分過ぎる量がそこにはあった。
「おぉ……」ゴクリ……
あまりの大金に息を呑むコノル。
お金の問題が思わぬ形で解決。アルカトラズ監獄への用はなくなった。なんなら暫くバイトや依頼等やらなくてもいいレベルの額を目にしたコノルは
「……今日はお寿司ね」
ちょっと夕飯を豪勢にしようと考えたのだった。
――――
一方その頃、拷問部屋に監禁されている黒猫は……
「のじゃのじゃのじゃのじゃのじゃのじゃ」カキカキカキカキ
近くに落ちていた石を使って一生懸命、地面にヘッタクソな絵を描いていた。それはもうピカソもビックリするくらい下手な絵を。
いやピカソは芸術だ。黒猫のは落書きとも呼べないラクガキ。比べるのは失礼にあたるだろう。
「うむ」
描き終えると、黒猫はあまりの出来栄えに頷く。
コノルやライトやギルドメンバーがせっせと動いてる中、コイツだけは本当に何をやっているのだろう?と疑問を持つ方がいるかも知れないが安心して欲しい。
全力で何の意味も無い事をしているだけだ。
今すぐにでも命が危うい場面で脳ミソスッカスカな事をする黒猫は絵に満足したら、絵を描く時に使った石を見詰める。
「……」
それを大きく振り被り
「ぬん!」シュッ!
出入口の階段に向かって思いっきり投げつける。
「何日ここに閉じ込めておくつもりじゃああああ!そろそろ出すのじゃああああ!」
何日もくそも、まだ投獄されて数時間しか経っていない。
いきなりキレだす情緒不安定な黒猫。
そんな黒猫に答える声もなく、ただただ虚しく時間だけが過ぎていく。