その141 久し振りだな参謀
私の想像が正しいなら……これは使える!『この事実を広められたくなかったらお金頂戴!』って言って監獄からお金を無心すれば良いんだ!ヨシッ!
何も良くない。ただの恐喝である。
黒猫寄りで、しかし黒猫よりタチの悪い犯罪者思考のコノルはこのままアルカトラズ監獄へと向かう事に決める。お前も監獄に入りたいのか?と言われんばかりの行動力である。
お金の問題を解決できる目処は立った。ふふふふふ。
わっるい顔でコノルは、その横にいる依頼主の女性から奇異の目で見られてる事に気が付いてなかった。
ドン引きだ。それはもう引くくらい。
「え、えっと……じゃ、じゃあ明日から早速見回るから。遅れちゃだめよ」
依頼主の女性はコノルの顔にドン引きつつ、後退りしながら別れていった。余程早く立ち去りたかったのだろうか、それはもう見事な早歩きだった。
「あ、はい。分かり……もういない。せっかちだなぁ」
女性の方を振り向くが、そこにはもう女性はいなかった。
この対応にはちょっぴり寂しい様な、とか思っているとコノルは後ろから声を掛けられる。
「相変わらず変わりないな」
「うん?あ!」
コノルが振り返るとそこには
「よう。久し振りだな癒し隊参謀。元気してたか」
2つ名は【双】、プレイヤー名が【風神雷神の金剛石】、その傍らであるライがいた。
勿論姿は、虎のぬいぐるみじゃなく人の姿。
「お久し振りですライさん!半年……いや1年振り?お変わりないようで何よりです!それにしても参謀だなんて、えへへ、照れますよー。特に何もしてないのに。相変わらず冗談がお上手ですね!」
コノルは心底嬉しそうにしながらライの元へ駆け寄る。
「割と冗談じゃないんだがな。元気そうで何よりだ」
「もう元気一杯ですよ!あはは。あれ?そう言えば、今日はフゥさんじゃないんですね。珍しい」
「まぁな。フゥもコノルに会いたがってたんだが、フゥは今寝てるんだ。悪いな」
「そうなんですか。でもライさんだけでも会えて嬉しい!なんだかこの界で超激レアな人に何人も会うなぁ。天変地異の前触れ?」
「そうだな。俺も偶然この界に用があってな」
「何かあるんですか?」
「そりゃブラックギルド狩りってやつ」
「何ですかそれ?」
「俺は口下手だから説明は苦手なんだ。まぁいずれ分かるさ。黒猫にも宜しく伝えてくれ。じゃあな。俺はギルマスから指令があって急ぎの用があるんだ。近々手伝ってもらう時がくるから、コノルはそれまでしっかり準備しとけよ。これは餞別だ。またな」
そう言って言葉を濁しながらライは大きな布袋をコノルに渡し、路地裏へと歩いて姿を消した。
ギルマスからの用……あれ?もしかして自分の所属してるギルドのギルマスに会ったことないの私だけ?まぁいいや。それにしても、相変わらず変な格好だけどイケメンだったなぁ副監。うふふ。
コノルはフゥの趣味で着ている着ぐるみの様な姿を、ライが着ている珍妙でミスマッチな姿にクスクスと微笑しながら渡された布袋を握り締めるのだった。