その139 馬鹿過ぎて、ヤバい
「犬の方がまだ人語を理解するわ!」
今度は両手を大きく振り被って力強くメッセージを打つ。
『話を聞け!待ってますじゃないのよ!何処にいて今何してんのよあんたは!』
「何でこんな簡単な事に返事が出来ないのよ猫さんは!」
依頼主の目も気にせず、メッセージに向かって1人声を荒らげるコノル。
しかし、声を荒げたとて情報は変わらない。返信が早く返ってくる訳でも状況が改善される訳でもないのだから。
1周回って冷静になったコノルは黒猫がどの界にいるのかを聞く為にシンプルなメッセージに改善して送る。
「……落ち着け私……猫さんは端からあの性格。私なら分かる。猫さんの扱いを。そう、威圧的にじゃなく簡潔に、分かりやすく。少なくとも居場所だけ知れば後はどうとでもなる。えっと……」
ピッピッピ
『猫さん今どの界にいるの?』
送信っと……
『ERROR』
……ん?送信っ。
『ERROR』
あれ?珍しいエラーもあるもんだ。まぁ流石に3度目はないでしょ。送信っと。
『ERROR』
んんんん!?
送れなくなった。
これは黒猫が向こうでメニューを開くのを止めたからである。
「…………」
その事を瞬時に理解したコノルは自身の額に手を当てる。
……は……八方塞がりだぁぁぁぁぁあ!!
声にならない心の声。居場所も不明。連絡もつかない。恐らく危機的状況の黒猫。黒猫がおバカ過ぎて自分からは何も出来ない事が確定し、コノルが1人焦っていると
「あの、どうしました?」
先程の見回りをお願いしてきた依頼主がコノルの様子を心配して声を掛けてくる。
「あ、すみません。気にしないで下さい。パートナーが馬鹿過ぎて生命の危機なだけなんです。もれなく私も」
「いや、気になってしょうがないんだけど?」
「それより依頼の件!引き受けますよ!」
コノルはこれ以上は藪蛇になると思い、依頼の話へと半ば強引に話を変える。
「それは良かったわ。被害時刻は大体朝から夜とかなり広いんだけど、その中でも夕方からがかなり被害者が続出してて、それを踏まえて、夕方から夜までの時間を絞って見回る事にしてるからよろしくね。はい。これは集合場所」
依頼主は集合場所の書いたメッセージを見せてくる
「……」
コノルはその集合場所を見て固まる。
ここは1界。高い界には行けない。何故なら費用と素材がないから。
だが、そこに書かれていたのは
閉じ込められた者達の生死を左右するまさに攻略の要。
そう、ギルド会議場だった。