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133/231

その133 宙吊りされて散々なのじゃ

「おおおおおお!ろおおおおお!すうううううう!のおおおおお!じゃああああああ!」


 目を見開いてこれでもかという位叫ぶ黒猫。


 すると、ガシッ!と喚き散らかす黒猫の口を射場ザキが手で押さえ付けて塞ぐ。


「いい加減黙れや?マジで殺すぞ?」


 射場ザキは瞳孔が開いたような目で黒猫を睨みながら口を塞いでる手に力を入れる。


 その様子をリョウケンと羽崎はよくやったと褒めているかの様にニヤリと口角を上げて眺めている。


 誰も止めないと分かるや否やドンドン強くなる握力。


 握力だけで顎が砕けるかの様な力。黒猫と射場ザキのLv差が射場ザキにゴリラの如き握力を齎していた。


 い、痛いのじゃあああー!?


 声は出せず、頭には血が上る錯覚を覚えながら、痛みに悶絶する黒猫。


 体を捩って痛みから逃れようとするが、顎を掴まれて思う様に動けない。


 の、じゃ……あ……


 気を失いかけたその時、



 突如棄世が動いて射場ザキを地面に突き飛ばすと、射場ザキの喉元に爪を突き立てる。


「くひ……いひひひひ……ふひひひひ」


 棄世は不気味な笑い声を出しながら射場ザキに対して殺さんばかりの眼光を向ける。


 その様子に射場ザキと他の2人は驚いた表情になる。


 突然の出来事に黒猫を含めた4人の視線が棄世に集中する。


 何故唐突に突き飛ばされて喉元に爪を突き立てられたのか理解出来ないまま、射場ザキは起きている現状の不味さに息を飲んで声を出す。


「す、すみません!棄世さん!な、何か癪に触ったなら謝ります!な、何がお気に召さなかったのですか!言ってくださいよ!お、俺すぐ直しますよ!」


 射場ザキは心底脅えた表情をしながら棄世に媚びへつらう。


 そんな射場ザキにお構いなく棄世は不気味な笑みを浮かべたまま喋り出す。


「ふひひ……い、言った筈……こ、こいつ……は……う、上の……だ、大事な……ど、道具……だから……あ、あまり……か、構うな……って……わ、私は……そろそろ……ひ、人を……壊したい……め、命令を……わ、忘れる馬鹿……は……こ、殺して……い、いいよ……な?……ひひ」


 棄世は邪悪な笑みを浮かべながら手を高く上げると、部屋中が軋みだしランプ等の光源が点滅する。


 ゴゴゴゴゴ……と地響きが鳴り不気味な影が部屋中を包む様に現れ、一番最初に棄世と対面して感じた姿の見えない複数人の気配を黒猫は感じ取る。


「き、棄世さん。射場ザキはバカだがその辺の奴より使える。殺すのは待ってもらえねーか?ちちち」


 見るに見兼ねてリョウケンが射場ザキを庇う為口を開く。


「そ、それは……く、口答え……か?……そ、それとも……わ、私が……さ、先に……出世……したのが……き、気に入らない……から……邪魔する……って事……か?……ふひひ」


「ちちち、滅相もない。力ある実力者が上になる。こんなシンプルな構図に誰が不満なんか。ちちち、ですが人手が足りないので、その辺を理解して下さると助かります」


 こんな丁寧に喋るリョウケンは初めて見る。黒猫はその様子を黙って見る。逆さ吊りで頭に血を登らせながら。


「ふひっ……わ、私は……いらない……こ、こんなの……ふひひひひ」


 しかし止まろうとしない棄世。寧ろ横槍を刺されてより一層の殺る気になっていた。


「待つのじゃ」


 ここにきて黒猫は声を上げ、全員黒猫の方を向く。


「何をするにしても、まず……わたしゃを降ろすのが先じゃろうがあああああ!!」


 空気をまるで読まない場違いな叫びが鳴り響くや否や、正体不明の気配は消え、ランプ等の点滅も地響きも収まる。


「……ち、ちちち、お、おい。本当に馬鹿か。黙ってろ」


 リョウケンはあまりに黒猫の場違いかつ恐怖心の無い発言に畏怖を覚えつつ動揺した様子で黒猫を静止させようとする。


 だが遅かった。


「……ふ、ひひ」


 棄世は何の警告も無く黒猫の顔面を、その鋭利な爪で切り付ける。


「お、お前は……ただの……道具……う、上が……価値が……あ、あると……は、判断……したから……ほ、放置……して……やってる……事……わ、忘れん……な」


 図に乗るなと言わんばかりに、棄世は鋭い眼差しを黒猫に向ける。


「の、のじゃ……」


 殺気を孕んだその雰囲気に気圧される黒猫。


 あの脳内お花畑の黒猫ですら、今の棄世の圧に後込みしてしまう程だった。


 ただ勿論こんな対応では降ろして貰えない。


 どうにか降ろして貰うには身の潔白を証明するほかないが、どうにも聞き入れてもらえなさそうだ。


 顔の切られた箇所が気になりながら黒猫は何とかしないとと考えを巡らせる。


 うーむ……………………お手上げなのじゃ


 騒ぐ以外の方法が思い付かない。早々に諦める黒猫。


 すると


「……」


 スパッ!


 棄世がロープを切ってくれた。


 切ったと同時に黒猫は頭から地面に叩き落とされる。


 いったいのじゃ!?……のじゃ?


 黒猫は何故解放されたのか不思議に思いながら倒れた状態で顔だけを上げて棄世を見ると、棄世はなにやらメニューを開いてメッセージを読んでいるようだった。


「き、棄世さん、なにを」


 突如黒猫を解放する棄世にリョウケンが困惑気味に尋ねる


「……ら、埒が……あ、明かない……ち、地下に……でも……ぶ、ぶち……込ん……どいて……わ、私は……任務が……は、入った……から……出る……」


 そう言って棄世はブルーハート同様にギルドルームを後にして外へと出掛けていった。


 それを見送る射場ザキ、リョウケン、羽崎の3人は棄世が完全に離れるのを確認するや否や、黒猫を乱暴に地下の拷問部屋へと連れて行き閉じ込めるのだった。

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