その130 命の重み。冷たい正論。間違いの先に行き着いた温かい世界
その後ろ姿を見ながら黒猫はただ茫然と花畑の真ん中に座り尽くす。
そして、両手を広げて花の上へとバサッと倒れる。
「……」
考え込む黒猫。
「……わたしゃは……」
――――
『なんで他人なんか気にするの!貴方が幸せならそれでいいの!間違ってるの!貴方は自分自身を大切にして!自分自身を愛して!他人なんか所詮他人!誰も貴方を助けてはくれないのよ!』
『貴方には現実……なら、命は大切にしないと。ね?』
『助けは!? ひ、1人!? 1人でやるなんて間違ってるよお!やめようよお!死んじゃうよお!』
『生まれた事に意味など求めるな。それぞれがあるようにあるだけ、それだけじゃ』
『あんたにあるのは命じゃないッス。情報ッス。どうなっても知らないッスよ?使わないのが吉ッス。正解ッス』
『間違った道を進まないで!貴方の命は貴方だけの為に使いなさい!』
――――
『……いたい……くるしい……つらい……こんなことなら……うまれたく……なかった……』
誰が言ったのか。誰の言葉なのかも分からない。昔聞いた言葉の数々。自分が行き着いた果てに出た言葉。
『間違った道を進まないで!』
……正しいのだろう。正論なのだろう。
だが
冷たい。
黒猫は寝たまま真上に輝く太陽に手を伸ばす。
「……暖かい……のじゃ」
偽の温もり、作られた温かさ、バーチャルの世界でリアルを再現しただけの感覚。
それでも
自分には本物だ。
偽りなのだろう。嘘なのだろう。本物の温かさだと思うのは間違っているのだろう。
それでも
「わたしゃは……」
黒猫は思いを馳せる。
自分が信じる道を歩む事を、進み続ける事を、信念を曲げない事を
例え間違っていたとしても
ここで、昔固めた決意を、意志を、思い出すかの様に
再び
もう、後戻りは出来ないのだから。
「ぬはは」
黒猫は太陽を眺めながら微笑むのだった。