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その123 鳳影数珠をやるのじゃ

後書きに黒猫の所持アイテムの一部を記載

 元気になった黒猫は直ぐ様落ちている食べかけのパンを拾うと、それを半分に割り棄世に差し出す。


「ありがとうなのじゃ。助かったのじゃ。お主は良い奴じゃの。半分やるのじゃ」


「い、いらない……よ……お、落ちてる……食べ物……な、なんか……わ、渡すな……よ……そ、そもそも……わ、私の……だし……と、という……か……は、話……き、聞けよぉ……」


 困り顔になりながら必死に訴えているが挙動に落ち着きがなくオロオロしているので黒猫に届かない。引き続きスルーする黒猫。


「ところで何故わたしゃを助けてくれるのじゃ?誰かに助ける様に指示されて見張っておるのか?ハムハム……」


 黒猫はパンを優しく頬張りながら棄世に尋ねる。先に潜入している協力者かどうか探る為だ。黒猫にしては機転が利いている。


 もし協力者ならここで名乗り出てもおかしくない。しかし、


「 ? な、なんで……お、お前……な、なんか……み、見張ら……な、なくちゃ……い、いけない……の?」


 切って捨てるような答えが飛んでくる。どうやら助けてくれるのは善意のようだ。


 それに対して黒猫は


()()()とはなんじゃ!」


 キレる。探りを入れた事を秒で忘れてキレていた。やはり黒猫は頭を働かせる事自体ダメなようだ。


「ふひ、ふひひ……」


 しかし棄世はそんな黒猫の言葉に笑を零す。相変わらず粘ついたかの様な表情だが、その笑みの真意は不明だ。


「何笑っとるのじゃ?そうじゃ!パンのお返しにアイテムやるのじゃ。お主レベルは?」


「い、言う訳……な、ないだ……ろ……れ、レベルとか……す、ステータス……か、関連は……も、もっと……し、信頼関係が……な、ないと……ぶ、ブラックギルド……に……し、信頼……な、なんか……そ、そもそも……ない……けど」


「では一方的に渡すのじゃ〜使えんかったら返すのじゃ。のじゃ」


 黒猫は手をグーにして差し出し棄世に向ける。


 棄世は眉間に皺を寄せて懐疑的な表情を浮かべながらも、黒猫から差し出された手からアイテムを受け取る。


「な、何?……こ、これ?……じゅ、数珠?」


 黒く光る数珠。


 しかし、一つ一つの珠が、星空の様な、宇宙の様な、そんな惹き込まれそうな凄味を滲み出していた。


「……む、無駄に……き、綺麗……だ……ね……そ、それに……み、ミサンガ……み、みたい」


「ミサンガ?何じゃそれ?それは鳳影数珠(ほうえんずじゅ)じゃ。お主にピッタリなのじゃ。効果は確か……数珠の数だけ敵の遠距離攻撃を吸収して闇属性の技の威力を上げるのじゃ。わたしゃ闇属性の攻撃は使えぬが不意打ちの狙撃に対して絶対的防御が得られるから昔使っておった。無論1日経てば吸収回数はリセットされる。じゃが今のわたしゃには使えんゴミじゃ。じゃからお主が使うのじゃ。装備するのじゃー!」


「な、何その……と、とんでも効果……そ、それが……ほ、本当……なら……ち、チート……アイテム……じゃん……そ、そもそも……そんな……こ、高レア……アイテム……わ、渡せるの?………ま、まぁ……そ、そこまで……言うなら……み、見て……あげる…………………うぇ?……そ、装備Lv……185?……な、なにこれ?……ば、馬鹿……なの?」


 アイテムの詳細に目をやる棄世。そこには黒猫の言った通りの効果が記されていたが、装備可能Lvが有り得ない位高いので棄世は嘘を付いている黒猫を睨む。


 昔使っていたって言っても、それならまず装備出来んだろ。と、最初にそう思うのも無理はない。事実だから。しかもこの世界で1番高いとされているプレイヤーのLvは113。棄世はおろか、この世界の誰も装備出来ないアイテムだ。そんな物が存在して、それも黒猫なんかが所持している事にも驚きだが、どんなに馬鹿でも騙されない嘘を付く黒猫に棄世は少し苛立ちを覚える。


「わ、私に……う、嘘付く……なんて……こ、殺され……たいの?」


「何故そうなるのじゃ。使えぬのなら返すのじゃ。せっかくわたしゃの無限の一部を手にする3人目なのじゃからもっと喜んで欲しいものじゃ。いらぬのなら!はよっ!返すのじゃあああ!」


 謎にキレながら棄世の持っている数珠を返すように催促する黒猫。渡しておいてなんだコイツ?


「ふぇ?……さ、3人目?……3人……さ、3人……か……ふ、ふひ……ふひひひひ……な、なら……も、貰ったげる……」


 話の大半が意味不明で訳が分からないが、その話の中で数える位しか黒猫が他者にアイテムを渡していない事を知ると、棄世は数珠を大事そうに抱えて返そうとしない。


 特別感を感じたのだろうか。どうやらそんな黒猫のアイテムが気に入ったようで機嫌も良くなったようだ。


「……なんなんじゃお主。まぁ良いのじゃ。大事に使うのじゃ」


「つ、使えないから……そ、それに……つ、使わない……ま、まぁ……だ、大事に……したげ……る……よ……ふひひ」


 そう言うと棄世は自分の部屋へと戻っていった。心做しかスキップしている様にも見える後ろ姿を見送りながら黒猫はある事を思う。


 ……わたしゃの部屋が無いのは何でじゃ?


 頓珍漢な疑問を抱く黒猫は、そんな事を思いながら今や自分の定位置になりつつあるギルドルームの端っこに座って休むのであった。

ちなみに、本編で黒猫が持っているとされるアイテムの一部


【蘇生神札】読み方 そせいしんぷ 蘇生アイテム HP0のプレイヤーの体力を25%回復させる。現在はコノルが所持。


【貳と無】読み方 ふたつとなし。両刀。効果不明。ライコに貸し出した事がある。


【四宝陣】読み方 しほうじん。謎。効果不明。黒猫のステータスでは効果がないとされる。


【不躰宝灯】読み方 ふたいほうとう 謎。効果不明。黒猫のLvでは使えない。


これらが黒猫の言う【無限】の一部。【無限】って何?ってなる人は正常。だって、ある人物が使ってたって事以外情報ないもん。

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