その119 そんな必死にナンパされちゃ仕方ないなぁー
「会えない?なんで?処遇の決定まで拘束って話じゃなかったっけ?」
心底不思議そうな顔をしながら一虎は聞いてた話と違う事に疑問を呈する。
「はぁ……牢屋の中で何か仕出かして面会謝絶の牢に移されたんです」
説明するのも嫌そうな顔でコノルは一虎の疑問に答える。
嫌にもなる。別にこれは一虎が嫌いだから答えるのが嫌だという訳ではない。理由は簡単。身内の恥ずかしい恥を言う羽目になるからだ。しかも他者からしたら笑えるが、まぁ自分からすれば全く笑えないのだからもう、笑える。
「あー……い変わらず斜め上を行くよね君達って」
なるほどね、と言っているかのような顔で納得しながら、彼女ならやりかねないと喉から出かかるのを何とか止めて別の言葉をチョイスしてフォローしようとする一虎。しかし何のフォローにもなっていない。なんならコノルまで巻き込んでのバッドチョイス。
コノルはムスッとした表情で一虎にジト目を向ける。
まるで2人揃って破天荒で奇天烈な事をしていると言われている気がしてならない。原因は全部猫さんで私じゃない。その部分を一緒にされるのは心外である。
「界攻略に誘っておいて放置するという暴挙に出るような一虎さんには言われたくありません。ではさようなら」
機嫌を害したコノルは界攻略時の事をまだ許してない事を引き合いに出すと、一虎を放置し別れの言葉を残して踵を返す。
「あ!ちょっ!ごめんって!待って待ってストップストップ!言葉は間違えたけど他意は無いから!悪気も無いし!そうだ!お詫び!お詫びも込めて!折角会ったんだし!お茶でもしようよ!ねっ!ねっ!……って、あれ?ナンパみたいになってる?」
コノルの後ろに付きまといながら必死に弁解しようとして途中からただの口説き文句みたいになっている事に気が付く一虎。
普通なら顔面パンチコースだが……
「…………ふふ」
そんな一虎のどこか抜けた所が黒猫と似ていると感じ思わず笑みを零して歩みを止めるコノル。
「……もう……はぁー!仕っ方ないなー!そんな必死にナンパされちゃ悪い気はしないしー!少し付き合っちゃおうかな?」
やれやれ仕方ないといったポーズを両手でアピールしながらコノルは歩きながら一虎の元へと戻る。
「コノルちゃーあん。優しい。愛してる」
「あぁ、どさくさ紛れに告白されても答えは変わらずNOなんで。貴方に何の魅力も感じないのでお付き合いとかはお断りします。断固拒否で」
「……ま、まぁお茶に付き合ってくれるだけでも嬉しいんだけど……その否定の仕方割と刺さるから、言葉の刃物は投げてこないで?」
「投げませんよ。刺すために研ぎはしますが」
「鋭利にもしないでくんない?」
一虎は悲壮感漂う顔でコノルに懇願するのだった。