その101 仲間じゃない
怒って当然だ。味方の攻撃で危うく死にかけたのだから。
しかし彼等の認識は違った。
「ちちち、石ばっかぶん回して死のうとしやがって。利用価値はあるがここまでバカだとはな。てめぇの盗む力は使えるがお前自身は使えねぇときた。隠してる力も無さそうだから割り込んだが正解だったな。お前如きを蘇らせるのに蘇生アイテムは勿体ねぇ。ちちち、あとなぁ……」
リョウケンは黒猫の頭を鷲掴む。
「仲間じゃねぇ。てめぇは下僕だ。対等に扱ってもらえると思ってんなよ。ちちち」
下衆な顔をして黒猫を見下す。その目には優しさなど皆無だった。
人を人として扱わない上に不快極まる侮辱の数々に心の底から嫌悪感が、いや吐き気がする。何をどうすればここまで道徳心を失う事が出来るのかと甚だ疑問である。
しかし、そんな男に何も出来ない黒猫。
蘇生アイテムが勿体無いと思うならフレンドリーファイアしようとするななのじゃ。口を開いて説教でもするかの?殴られて終わりじゃな。力で分からすかの?多分返り討ちじゃな。勝率0%なのじゃ。
黒猫は髪を引っ張られた状態でそんな事を考えながらリョウケンの着ている針の付いたマントを見る。
トゲトゲなのじゃ。痛そうじゃ。
そんな考え事をしているからか顔の表情は普通だ。
「ちちち、なんだその顔?」ぐい
だが、リョウケンはそんな黒猫の顔を不快に感じたのか、不快感を顕にしながら黒猫の顔を更に持ち上げる。
「ぬじゃ!?いっったいのじゃ!髪を引っ張るななのじゃ!どんな顔じゃろうとわたしゃの勝手じゃろうがっ!放すのじゃああ!」
「チッ」
リョウケンに投げられ転ぶ黒猫。
「痛いのじゃ!普通に放せぬのか!」
「ピーピー喚き散らすな。耳障りなんだよ。ちちち。利用価値が無かったらここで始末する所だぜ……」
そう言ってリョウケンは黒猫を放ったらかしにしてある場所へと歩き出す。
そこには【大衆レストラン】と書かれた店があった。
「お前の仕事だ。ちちち、役立たずのお前がどこまでやれるか見物だな。上手くやれ」ドン
リョウケンは何の説明もしないままそう言って黒猫の背中を叩いて店の前へと押し出した。