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第93話 異界「???」(上)

  お城の門の前には衛兵さんがいた。ブリキの人形のような衛兵で、何だか可愛らしい。しかし、左右の衛兵はどちらも眠りについていた。



「2人とも寝てるね……。衛兵の意味って何?」


  そう呟くルージュちゃんに完全に同意だ。この2人、何のためにここにいるんだろうね。


「衛兵も寝てるし、さっそく入りましょ」


  マロンちゃんはささっと城に入っていく。え、いいのかな?  これ不法侵入では?  そう思いかけたが、私が城で盗みをしたことを思えば、まあいっかという気になってしまった。


  私達がまず先に向かったのは庭だ。庭は広大で、美しい薔薇の花々が咲き誇っていた。なんだか甘い香りがする。


  この庭にも誰もいないのね。あの衛兵以外ここでは誰も見ていない。



「見てみて!  黒い薔薇だよ!  青い薔薇もある」


  ルージュちゃんが楽しそうに、花を見ながら城へと駆けていく。


「本当だ。黒い薔薇とか青い薔薇とか実際に見たのは初めて」


「黒い薔薇なんて珍しいもの」


「薔薇園が開けそうだねーー。薔薇コレクションがすごいよ」


  確かに。こんなに咲いてたら薔薇専門の植物園を名乗れそうだ。


  そんな話をしているうちに、庭を通り過ぎ、城の入り口に着いた。けど、城は鍵がかかっていて入れそうもない。



「これ、どうする?」


「あの門番が寝てたのは、どうせ侵入者は城に入れないからだったんだね」


「アナちゃん、それは違うと思うよ……」


「他の出入り口を探してみましょうよ。裏口みたいなのがあるかもしれませんし」



  という茶々さんの提案で、私達は裏口を探すことになった。城の周りを1周する。


  裏口……、裏口……。あ、あれは?  裏口ではないけど、あそこの2階の窓開いてるよ。随分不用心なことだ。窓が開き、カーテンが靡いていた。


「ねぇねぇ、3人とも、あそこの窓は?」



「あ!  アナちゃんないす!  あのくらいの高さなら余裕だよ」


  ルージュちゃんは軽々と、2階の窓まで登り、中に入った。茶々さんもそれに続く。私とマロンちゃんはどうやって登ろう?


  精霊を召喚するか、カースちゃんを召喚するか。でもこんなことで召喚するのも……。


  私が迷っていると、上からロープが垂れてきた。


「2人ともそれに捕まって!  私達が引き上げるから」


「うん!  ありがと!」


「助かるわ」


  私達はロープを掴んで、1人ずつルージュと茶々さんに引き上げて貰った。


  私達は部屋への侵入に成功した。


  そこはまるでお姫様が暮らしていそうなお部屋だった。豪華な装飾品のなされた絨毯が敷かれ、豪華な天幕付きのベットや可愛らしいお人形、ドレス等などが置かれていた。




「本当に物語に出てきそうなお姫様の部屋だね」



「それなーー」


  私の言葉にルージュちゃんも同意する。


「それじゃあ、城の探索でもしますか。バレないように静かに慎重に進みましょう」


「「「了解」」」


  私達は小さな声で呟いた。私達は慎重にドアを開け、足音をたてないように城の中を歩く。城の中は豪華絢爛という言葉がぴったりあう内装であった。



  特に廊下に人の気配はない。


「とりあえず、2階から探索しましょうか」


  私達は2階から探索することになった。広い城の中だけど、順番に部屋を覗いていく。ほとんどが誰かの生活部屋っぽい。執務室っぽいところとか厨房っぽいところとかもあったけど。


  人の気配がない。門の前に、衛兵だけいて、中に誰もいないってことはないと思うんだけど。皆どこにいるんだろう。


  まあ見つかったら見つかったでめんどくさいことになりそうなので、考えものだが、人っ子一人いない方が気味悪い。



  私達は2階をひと通り見ようと思ったが、広すぎてとても回りきれない。


  どうするか1度話し合おうと思っていた頃、人の声っぽいのが聞こえてきた。


「うふふ、これはどうかしら?」


「いいわね。これも似合うわよ!」


  耳を澄ますと、楽しそうな話し声が聞こえてくる。間違いない人の声だ。何やら楽しい催しをしている模様。パーティとかお茶会でもしているのだろうか?


  私達は顔を見合わせる。どうする?  と。少しのアイコンタクトを取り、この場を離れることにする。NPCに見つかると面倒くさそうだし。


  まあこの場合、不法侵入している私達が悪いんだけどね……。



  人がいそうな所を離れ、私達が城を探索していた時、また話し声が聞こえてきた。今度は男の人ってぽい声だけど。


  前から来る!  私達は慌てて近くの部屋に隠れる。


「まーったくやってられないよな。あいつらは呑気にパーティなのに、俺らは見張りかよ」


「まあそういうなよ」


「ん?  誰かいるのか?」


「おい、どうしたんだ?」


「一瞬人の気配がしたんだよ」


  やばい、バレたか!?  私達は部屋にあったベッドの後ろやドレスの隙間に隠れつつ、耳を澄ます。



「バカ言うなよ。今はパーティの途中だし、見張りの俺ら以外は誰もいないはずだ」


「侵入者じゃないのか?」


「侵入者なんて来たことあったか?  お前の気にしすぎだろ」


  2人の男が話し合っている。お願い、通り過ぎて。私は祈るような気持ちで、2人の会話を聞いていた。



「一応確かめてみようせ。この辺りの部屋で音がした気がするんだよな」


「しょうがねぇな」


  話し声と足音がこっちに向かってくる。やばい、来る!  私はベッドの後ろに隠れつつ、皆の様子を伺うと、ルージュちゃんが青ざめていた。


  ルージュちゃんが隠れている服の間は入ってきた瞬間バレそうだけど。私は慌てて何かいいものはないかとアイテムボックスを探る。


  が私の願いは虚しく、2人の男が入ってくる気配がした。どうかバレませんように。私はベッドの後ろに隠れつつ、近付いてきたら、ベッドの下に隠れようと思っていた。



「やっぱり誰もいねぇじゃなねぇか」


「俺の思い違いか……?  ん?  あの服の間にいるのは……。侵入者だ!  捕らえろ!」


  ルージュちゃんが見つかってしまった。やばい。ルージュちゃんは服の間を飛び出し、二人の男を押しのけ、部屋の外へと走る。これはまずい。どうしよう、ルージュちゃんの後をおうべき?



  けど、私の場所が1番部屋の外からは遠いし、追いつけない。私が迷っている間に、机の下に隠れていた茶々さんもルージュちゃんと一緒に部屋の外へ出た。


  出るタイミングを逃したし。ここに隠れてやり過ごすしかなさそう。


  マロンちゃんはドアの近くの視覚になりそうなところに隠れていた。いい位置にいるね、マロンちゃん。


  2人の男は茶々さん達を追いかけていった。ある意味、HPというか運動能力の高いあの2人が囮になってくれて助かったかも。



  この異界にいる人同士でチャットは使えるから、後で落ち合えばいいし。


  何はともあれ、私達はこのまま脱出すべきだ。全員顔を覚えられたら色々と不便だ。次に正規に来ようとしたら、変装しないといけなくなる。まあこの城が正規で入れるものなのかは知らないけど。


  私はマロンちゃんと顔を見合せ、打ち合わせる。


「どうする?  アナ」


「とりあえずどこか、窓のありそうな部屋に入って、窓から脱出が1番現実的よね」


  この部屋には残念ながら窓がない。だから早急にこの部屋を離れなくては。侵入者が現れた部屋ってことで、捜査が入るだろうし。


「それなら早く移動しましょ」


「うん」


  私達はパーティをしていた方向から離れつつ、窓のありそうな部屋を探す。けど、こんな時に限って窓のある部屋が見つからない。



  外から見た時はけっこうあったんだけどな。そんなことを思いつつ、人の気配がしない部屋のドアを開けていく。気配がしないって言っても、私は気配とカニ敏感なわけじゃないから、何となくだけど。


  そうしていくつかの部屋を探索していた。人の気配がないのを確認して、大きな扉を開けた。その部屋には窓があった。


「アナ、窓よ」


「うん、ここから出よう」


  私達が窓の方へ近付こうとした時、視覚の隅にベッドで眠る少女の姿が目に入った。


「あなた達、誰?  パーティの参加者なの?」


  少女は不思議そうに首を傾げながらこちらに問いかけた。


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